「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、アバルト プント エヴォだ。
アバルト プント エヴォ(2010年)
2007年に正式復活して以来、フィアット車のスペシャルバージョンとして続々とホットモデルを生み出し続けている「アバルト(ABARTH)」。そのアバルトが送り出す最新モデルが、このアバルト プント エヴォだ。そう、もはやメーカー名は「フィアット」ではなく「アバルト」なのだ。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
プント エヴォは、今年(編集部註:2010年)グランデプントをビッグマイナーチェンジして、車名まで変更したCセグメントのハッチバックだ。先代のグランデプントにもアバルトが手がけたモデルはあった。だが、今回の「エヴォ(当然、エヴォリューションの略だ)」になって外観も中身もアグレッシブになった。
ボディサイドの真っ赤なストライプと同色にペイントされたドアミラー、前後のオーバーフェンダーにリアのルーフスポイラーなど、見るからに「やる気」まんまん。17インチのアルミホイールは、サソリのハサミをイメージしたデザインなのだという。
インテリアも、ヘッドレスト一体型の専用スポーツシートに本革ステアリングホイール&シフトノブ、アルミペダルにイエーガー製メーターなど、スポーツムードは満点。そして、ボディ内外のいたるところにサソリのエンブレムが付けられている。
パワーユニットは、以前に紹介したアルファロメオ ミトと基本的には同じ1.4Lのマルチエア+ターボだが、最高出力は163ps/最大トルクは230Nmにまでチューンされている。さらにSモードでは最大トルクは250Nmにまでアップする。組み合わされるトランスミッションは、6速MTのみとなっている。
現代のサソリは速いだけのクルマではなかった
ブラック基調のスパルタンなコクピットに乗り込み、ワインディングロードを目指す。クラッチの踏力は重くなく、ストップ&ゴーが続いても苦にはならない。最近流行のダウンサイジングターボとなるエンジンは、ノーマル時はアバルトを意識させない「普通」のユニットだが、シフト奥のスイッチでSモードに入れると性格は一変する。
ECUの設定変更で低速域からトルクが盛り上がり、0→100km/h加速が7.9秒という、けっこうな加速感を味わえる。電動パワーステアリングはアシスト量を軽減したハンドリングとなり、TTC(トルク トランスファー コントロール)は自動的にONとなってハードなコーナリングでも適切な駆動力を路面に伝える。
乗り味は現代のクルマとしてはかなりスパルタンだが、けっして不快なレベルではない。はやる気持ちを抑えて、オートエアコンの効いた室内でHi‐Fiオーディオのサウンドを楽しみながらのハイウエイ クルージングを満喫することも可能なくらいだ。
1980年代に「フィアット リトモ アバルト」というゴルフGTIイーターのホットハッチが存在したが、このクルマは、まさにその再来だ。ワインディングを駆けまわるのが実に楽しい。だが、現代のサソリは速いだけではない。アイドリングストップ機能も備えた、環境にも優しいクルマだったのだ。
■アバルト プント エヴォ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4080×1720×1490mm
●ホイールベース:2510mm
●車両重量:1260kg
●エンジン種類:直4 DOHCターボ
●排気量:1368cc
●最高出力:120kW<163ps>/5500rpm
●最大トルク:230Nm<23.5kgm>/2250rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:横置きFF
●10・15モード燃費:未発表
●タイヤ:215/45R17
●当時の車両価格(税込):289万円
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