まったく新しいドライビング体験
text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
遂にマクラーレン・スピードテールへ試乗する時がやってきた。210万ポンド(2億8140万円)と聞いて、一体どんなモデルなのか、想像は止まらなかった。
筆者のイメージと違っていても問題ない。予期せぬ素晴らしい結果に出会うことは、悪い体験ではない。
ロードカーとして前例がないほど速いことは、乗る前から想像がついた。技術やデザイン、ブランドにおける意味も、今までになく特別なはず。
スピードテールを1日かけてドライブし、気付かされた。筆者の想像は浅いものだった。これまで30年ほどクルマの試乗評価をしてきたが、まったく新しい体験だった。それなりの経験と知見を積んでいるが、予想をはるかに超えていた。
26年前の、マクラーレンF1とも違う。F1にも、従来存在しなかったようなボディデザインが与えられていた。パフォーマンスも同様。ほかのクルマと共通する部分は、ほとんどなかった。スピードテールは、それとも違う。
スピードテールは、カーボンファイバー製のタブシャシーを備えるミドシップ。エンジンはツインターボの4.0L V8で、7速デュアルクラッチATを介して後輪を駆動する。ここだけを見れば、直近10年ほどのマクラーレン製モデルと大きな違いはない。
2013年に登場した、マクラーレンP1とも遠くはない。向こうもハイブリッドだった。
スピードテールとF1を比べてみよう。ドライバーが少し前に位置する、横に3名が並ぶキャビンを備える。生産台数は106台の限定。F1とのつながりを持たせたいのだろう。
惹き込まれるフォルムとベストなインテリア
F1に対しては、マクラーレンも扱いは慎重。路上だけでなく、サーキットでも強さを証明したレジェンドだ。ル・マン24時間レースでは、かつてのフェラーリと同様に、初参戦・初勝利を収めた。マクラーレンというブランドを押し上げた。
一方のスピードテールは、サーキット・マシンではない。マクラーレンのスタッフによれば、ハイパーGTなのだという。
筆者は普段、あまりボディの見た目には触れない。好みは様々だし、読者の方が目は肥えていると思うから。しかし、スピードテールの見た目には、触れない方が難しい。
見惚れる美しさ以上のデザインだと思う。1960年代後半のスポーツ・レーサーのように、キャビンが前方に位置し、優雅にテールが長く伸びる。なんと惹き込まれるフォルムなのだろう。
流れるような現代的曲面で構成され、既視感もなく、レトロでもない。まさに、孤高。
インテリアは、現代的なスーパーカーとしてのベスト。中央に位置するドライバーズシートも驚くほど自然。ドライビングポジションも完璧で、どんなクルマより心地良い。
かつてのマクラーレンF1は、中央のシートへの乗り降りに苦労した。しかしスピードテールは、信じられないほど容易だ。
デジタルモニターが3面、運転席から見える。正面がドライビング・システム用。片側がタッチモニター式のナビで、反対側がエンターテインメント・システム用となる。
10年ほど前にマクラーレンが採用していたIRISインフォテイメント・システムと比べると、隔世の差を感じるほど使いやすい。感動するほど。
ドライバー左右の席はF1よりタイト
運転席頭上のヘッドライニングには、頻繁に使用する機能のボタンが並ぶ。エンジンのスタート/ストップや窓の開閉など。それ以外のボタン類は、運転席前方の視界には存在しない。
とても爽やかで、クリーンな美しさを持つインテリアだ。同等のデザインを、手頃なモデルへ与えることができれば、マクラーレンはさらに多くのユーザーを獲得できると思う。
意外にも、左右のパッセンジャーシートは、一般的なスーパーカーより居心地が悪い。意外なことに、マクラーレンF1よりも。
身長の低いドライバーで、運転席が前にスライドしていれば、さほど問題はないだろう。しかし背の高いドライバーが座ると、左右の席は、肩周りの空間が足りなくなる。小柄な大人や子供なら問題ないと思うが。
でも、スピードテールはハイパーGT。週末のドライブ旅行を計画するオーナーもいるはず。予め確かめておかないと、同乗者からは不満が出てしまいそうだ。
対象的に、荷室の広さには驚かされる。フロントノーズに大きな空間があり、テール部分にはそれ以上の容量の荷室がある。2人でのドライブなら、片方の助手席も使える。
一方で車内にはほとんど小物入れがない。左右の助手席下の、小さな空間くらい。
マクラーレン・スピードテールには、トリムグレードやオプションパッケージといったものはない。オーナーはマクラーレンのデザイナーと一緒に、自分好みのインテリアをオーダーできる。
もし自身が選んだ内装を、ほかのスピードテールに選ばれたくなければ、制限もできるそうだ。1台限りのスピードテールになるわけ。
ほかのマクラーレンと同じV8サウンド
1台1台がオーナーに合わせた仕様で作られるため、最終的な金額には幅がある。ベースの車両価格は210万ポンド(2億8140万円)だが、特別な塗装で仕上げるだけでも10万ポンド(1340万円)ほどは必要だという。
露出した部分のカーボンファイバーは、ほかのマクラーレンで用いられている繊維の3分の1という細さ。もし希望すれば、純金を織り交ぜて編み上げ、成形することもできる。
内装に用いられるレザーは、標準のマクラーレンより30%軽量だが、薄いわけでも耐久性で劣るわけでもない。塗装の一部は手で仕上げられる。フロントにあしらわれるエンブレムは、純金やプラチナでの制作も可能。マクラーレンの刻印が施される。
ざっくり、平均で300万ポンド(4億200万円)以上は支払われるのではないだろうか。
そんな特別なスピードテールだが、エンジンの始動方法はほかのマクラーレンと同様。放たれるサウンドも同じで、少し拍子抜けしてしまった。
エンジンはマクラーレンで共通の、フラットプレーン・クランクを持つ4.0L V型8気筒。同じ音なのは当然ではある。たとえマクラーレンが気筒数を増やしたとしても、製造台数は106台だから、恐ろしく高価なユニットになってしまう。
でも、F1はV型12気筒だった。もしハイパーGTというなら、V12の方が良い。
スピードテールを郊外の道路の流れに乗せる。最高出力は1070psもあるが、現実的な交通環境にも楽に合わせて運転できることに唸らされる。ちなみにエンジンは757ps、電気モーターは313psを発生する。
この続きは後編にて。
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