メルセデス製PHEVとして最大のバッテリー
text:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)2代目メルセデス・ベンツGLEに最新グレード、350de 4マティックが加わった。メルセデス・ベンツは2020年までに最大20車種のプラグイン・ハイブリッドを提供すると発表しているが、その1台となる。
ディーゼルエンジンに電気モーターを組み合わせ、大型SUVながら最大で98.9kmの距離をEV状態で走行が可能。二酸化炭素の排出量は29g/kmで、理論上の燃費は90.9km/L。英国での発売は2019年10月からだが、税制面でも有利だから注目も高そうだ。
ドライブトレインの構成は、CクラスやEクラスの300deと共通性が多い。ボンネットには縦置きされる2.0Lの4気筒ターボ・ディーゼルエンジンが納まり、194psと40.7kg-mを発生。9速ATに内蔵された電気モーターが、136psと44.7kg-mと充分なアシストを加える。システム総合では、最高出力319psで最大トルク71.2kg-mとなる。
GLE 400dが搭載する3.0Lの直6ディーゼル・ターボと比べると最高出力は11ps劣るが、トルクはほぼ同値が得られている。メルセデス・ベンツによればGLE 350deの0-100km/h加速は6.8秒で、最高速度は210km/hでリミッターが掛かるそうだ。
搭載するリチウムイオン・バッテリーの容量は31.2kWh。メルセデス・ベンツのプラグイン・ハイブリッドとしては最大の蓄電量を持ち、電気のみで走行可能な距離はWLTP値で89.9km~98.9kmと長い。最高速度は161km/hまで。多くの人の場合、電気だけで日常の通勤や買い物はまかなえるだろう。
ちなみにBMW X5 xドライブ45eのハイブリッドの場合、システム総合で349psと60.9kg-m、バッテリー容量は24kWh。EV状態で走行可能な距離は87kmと公表されている。
電気モーターとエンジンとの見事な融合
電気モーターとエンジンとのシステムは見事に融合し、GLE 350deは多様なドライブモードを楽しむことができる。ここまでの動的質感を得ているPHEVは殆どない。アクセル操作に対する洗練性も高まり、場面によってはエンジンで走っているのか電気モーターなのか、気づかないほど。
バッテリー容量も大きく、EV状態で走行できる距離も充分に余力がある。ハイブリッドモードでは、ディーゼルエンジンの入力の切り替わりもシームレス。先進的な9速ATと4マティックが、前後へのトルク配分を最適に保ってくれる。
ハイブリッドモードでの走行パフォーマンスは堂々としたもの。ふんだんなトルクが力強い加速と、悠々としたクルージングを味わわせてくれる。GLE 350deに新しく搭載されたダイナミックセレクトに任せて走るのが良いだろう。
ただしGLE 350deの車重は2615kgと重く、2つのパワーユニットへの負荷は軽くない。エンジンはフルスロットル時に限らず、力強い加速時には懸命に回転する必要がある。
ブレーキペダルの質感はグッと良くなった。踏み込んでいくと、適切な感触とリニアな制動力が得られ、不安を感じることもない。加えて回生エネルギーとして発電される電気の量も印象的に多い。流石に充電器につなぐ必要は残っているが、4輪すべてを介して減速時のエネルギーが回収されるようになったため、充電器に寄る回数は著しく減るはず。
優れた高級感とPHEVとしての性能
リチウムイオン・バッテリーは、最大で60kWの受電容量を持つ充電器まで対応しており、プラグイン・ハイブリッドのSUVの中では強みといえる。最短で30分でフル充電が可能だと、メルセデス・ベンツは公表している。
ハイブリッド化により増加した重量のおかげで、サスペンションのしなやかさはやや減少。それを補うべくGLE 350deには最新のエアサスペンション技術が搭載され、落ち着いた乗り心地を叶えている。
ダッシュボードを占めるデジタル・インストゥルメントにインフォテイメント用のモニターだけでなく、インテリアの質感はとても高い。ドライビングポジションやシートも素晴らしく、明確にライバルよりも数段優れた高級感を得ている。
SUVの機能として、最大牽引重量は3500kgと大きい。ステアリング角を自動で調整することで走行安定性を高めてくれる、トレーラー操縦アシストシステムも実装できる。
バッテリーの容量が大きい分、体積も大きく、ラゲッジスペースは140Lほど小さくなった。通常のGLEが630Lなのに対し、GLE 350deの場合は490Lだ。リアシートを折り畳めば1915Lにまで広げられるが、ハイブリッドでなければ2055Lある。
非常に力強いモーターとクラス最大容量のバッテリーを搭載し、ライバルのプラグイン・ハイブリッドでは実現が難しい、EV状態での実用的な行動範囲を獲得している。そこへ、ディーゼルエンジン固有の質実な機能性も併せ持っている。
高級SUVを考えているなら検討したい
何より電気モーターとディーゼルエンジンが組み合わされた、ハイブリッドモードの仕事が素晴らしい。それぞれの特徴が生かされ、不満のないパフォーマンスを提供してくれる。
ただし90.9km/LというWLTP値での燃費は、電気走行を中心においた数字で、現実的には少し無理がある。充電を定期的に行わなければ、重たいバッテリーと比較的小さなディーゼルエンジンを組み合わせた大型SUV、となりかねない。
反面、こまめに充電する手間を惜しまなければ、軽油を1滴も使わずに日常的にGLE 350deに乗ることも不可能ではない。非常に優れた質感のインテリアと統合力の高い技術は、無視することができない内容だと思う。29g/kmという二酸化炭素排出量の少なさは、英国では社用車としても強い魅力となるだろう。
GLE 350deは、都市部での利用や通勤でのゼロ・エミッション走行を希望するドライバーだけでなく、自動車旅行を楽しみたい向きにも適している。高級SUVを考えているなら、検討してほしいクルマだ。
メルセデス・ベンツGLE 350de 4マティックのスペック
価格:6万ポンド(798万円・予想)
全長:4924mm
全幅:1947mm
全高:1797mm
最高速度:210km/h(リミッター)
0-100km/h加速:6.8秒
燃費:90.9km/L(WLTP)
CO2排出量:29g/km(WLTP)
乾燥重量:2615kg
パワートレイン:直列4気筒1950ccターボ
使用燃料:軽油
最高出力:319ps(システム総合)
最大トルク:71.2kg-m(システム総合)
ギアボックス:9速オートマティック
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