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「最新モデル試乗」ポルシェ未来形、スポーツEVの代表タイカン・ターボの衝撃パフォーマンスとその課題

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「最新モデル試乗」ポルシェ未来形、スポーツEVの代表タイカン・ターボの衝撃パフォーマンスとその課題

鮮烈なロー&ワイドフォルム。ターボは高性能を示す「記号」として活用

 日本でも正式デリバリーがスタートしたタイカンに試乗した。タイカンはポルシェ初の量産BEVである。試乗グレードは、ターボ。シリーズ頂点に立つターボSに次ぐパフォーマンスの持ち主である。もちろん、エンジンを持たないタイカンにターボチャージャーの装備はない。ポルシェにとって「ターボ」のネーミングは、高性能モデルを意味する。

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 タイカンが発するオーラは、とんでもなく強烈だ。標準の20インチに対して1インチ大径のミッションEホイールをオプション装着していた関係もあり、精悍な印象にあふれていた。一見すると、「EVには見えない」。全長×全幅×全高は4963×1966×1381 mm。2mに迫ろうという全幅に対して全高は1.4m未満。4ドアセダンの常識を打ち破る、典型的なワイド&ローのフォルムだ。

 駆動用バッテリーを床下に敷き詰めるピュアEVの場合、高床構造が必然。そのため「ずんぐりプロポーション」になりがちだ。そうした弱点をカバーするため、SUVカテゴリーを選択するモデルは少なくない。そんな中であえてセダンに仕上げたタイカンは、後席足元部分にバッテリーを置かないスペースを設定。フル4シーターパッケージングと、911由来の「フライライン」と呼ぶ後ろ下がりのルーフラインを両立した。誰もが〝ポルシェ〟とわかるシルエットだ。

重さをいっさい感じさせない走り。魅惑のエレクトリックサウンド

 車検証表記の車重は2340kg。大柄なサイズに加え、大容量バッテリーや4WDシステム、3チャンバー式の凝ったエアサスペンションを搭載したため重量級になっている。ところが驚くことに、走り始めるとそうしたスペックを意識させない。軽快、そして敏捷な動きを示す。この点がタイカンならではの特徴だ。アクセルの微細な操作にリニアに反応し「911よりも低い」という重心高がもたらすロールを感じさせないボディの動き、コーナーのターンインではコンパクトなスポーツカーのような身のこなしが楽しめる。このドライビング感覚は絶妙である。

 テスト車には、オプションのエレクトリック・スポーツサウンドが装着されていた。スピーカーを通じフェイクサウンドを流すシステムだ。それはエンジン音を模したものではない。「モーター音をモチーフに吟味を重ねた」という未来的で躍動感あふれる音色は好印象だった。もしタイカンを手に入れたら、スイッチを常時ONにして乗ることになるだろう。

 0~100km/h加速タイムの公表値は、3.2秒。スーパースポーツカーに匹敵するデータを確認するまでもなく、全力加速時の速さは圧倒的だ。高まるエンジンノイズと無縁なので、心理的な抵抗なく強力加速を堪能できる。これはBEVならでは。そして、穏やかに走ろうと思えば、「それも自在」という2面性を持ち合わせる。右足に加える力加減だけで、加速ポテンシャルを思いのままにコントロールできる。

卓越のボディコントロール。頭痛の種はやはり充電問題

 タイカンで動力性能以上に感動的だったのは、巧みなボディコントロール能力だった。
 走り始めの瞬間から、高速道路上のクルージングまで、フットワークのテイストは「かつてこれ以上のフラット感に出会った経験がない」といいたくなるレベル。フロントが265/35、リアが305/30の21インチというタイヤサイズが信じられないほど、穏やかで軽やかな乗り味に舌を巻いた。
 無駄なボディの動きが見事に封じ込められているので、長時間のドライビングでも疲労感は最小限。「これほど優れたボディコントロール性を示すセダンは他にない」と言い切れる。

 一方、バッテリー残量が低下して充電のことを考え始めると、気持ちはどうしても憂鬱になる。1充電当たりの走行可能距離は450km(WLTPモード)。BEVとしては十分とも思えるレベルだが、それは大容量バッテリー(83.7kW)の賜物。普通充電ではフル充電まで30時間以上という気が遠くなるほどの時間がかかる。高速道路上やロードサイドでの急速充電では「30分まで」と制限される場合が多く、時間内で補充できる電力量はわずかにすぎない。
 タイカンに限らず、大容量バッテリーを備えたEVの場合、「大出力充電器」とのセットでないと使い勝手は著しく悪くなってしまう。夢と課題を同時に突き付けられた試乗だった。

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