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新世代の市民のクルマを長期テスト フォルクスワーゲンID.4 GTX(1) 強みの航続484km

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新世代の市民のクルマを長期テスト フォルクスワーゲンID.4 GTX(1) 強みの航続484km

初回 グランドツアラー寄りのGTX

新しいフォルクスワーゲンID.4は、バッテリーEV(BEV)のクロスオーバーへ求めるすべてを備えているように思う。不足ない航続距離に、先進的で広々としたインテリア、たくましいパワートレインなど。

【画像】最新EV フォルクスワーゲンID.4 GTX ボディ違いのID.3とID.5 最新のゴルフ GTIも 全95枚

長期テストへやってきたID.4は、GTX。通常のID.4とは一味違う動力性能が与えられている。内燃エンジン・モデルへ設定されるGTIで定評を築いてきたブランドなだけに、期待は自ずと高まる。

ただし、GTXは従来のGTIに相当するものではないと、フォルクスワーゲンは説明する。通常モデルより充実した装備が与えられ、四輪駆動であることを示す3文字なのだという。

GTIは、積極的に運転を楽しみたいドライバーのためのグレードといえた。一方のGTXは余裕を持って長距離をこなせる、グランドツアラー寄りといえそうだ。

ID.4 GTXのパワートレインは不足なくパワフルで、通常のID.4とは異なり、フロント側に2基目の駆動用モーターを備える。システム総合で299psの最高出力と48.0kg-mの最大トルクを発揮し、0-100km/h加速を6.2秒でこなす瞬発力を持つ。

ちなみに、競合モデルに当たるテスラ・モデルYは5.0秒、キアEV6 GTは3.5秒で到達する。ID.4 GTXが遅いわけではないものの、BEVとして際立つほど速いわけでもない。

最新のシャシー技術など装備は充実

外観的な部分で、GTXとしての差別化は限定的。ルーフがブラックのツートーンになり、専用のリアスポイラーを備え、ルーフレールなどがブラックアウトされる。大きなXのシルエットで灯るテールライトも専用設定だが、その程度だ。

テールゲートに貼られたGTXのロゴを見るまで、路上で違いに気付ける人は少ないだろう。長期テスト車のボディーカラーは、通常のID.4では選べないグレイシャー・ホワイト。これは、英国では685ポンド(約11万円)のオプションになる。

シャシー側では車高が15mm落ち、XDSと呼ばれる電子制御リミテッドスリップ・デフと、最新の車両ダイナミクス・マネージャー、VDMを搭載。マックス・グレードで、ダイナミック・シャシー・コントロール(DCC)ダンパーなど、追加装備も得ている。

知的なLEDマトリクスヘッドライトや、駐車アシスト機能付きのリアカメラ、キーレスエントリー、ワイヤレス・スマートフォン充電、アップル・カープレイなどは標準で備える。不足はない。

インフォテインメント・システムは最新版。長期テスト車には12.0インチと通常より1サイズ大きいタッチモニターが据えられるが、表示は鮮明なものの、使い勝手が良いとはいえないようだ。

車載機能の殆どは、タッチモニターかタッチセンサーを介して操作する。実際に押せるハードボタンはほぼなく、タッチセンサーにはイルミネーションが内蔵されないため、夜間は操作しにくかったりする。

ソフトウエアはアップデートされたバージョン3.0。この手の技術を余り得意としない筆者は、使いこなせるだろうか。

484kmの航続距離と実用性は強み

パワートレインの方へ目を移すと、駆動用バッテリーは実容量で77kWhと、フォルクスワーゲンのBEVとしては最大。シングルモーターの穏やかなID.4の場合、航続距離は最長518kmがうたわれるが、ツインモーターのGTXでは484kmへ短くなる。

とはいえ、長距離通勤にも不足ない距離といえ、強みの1つに数えられる。既に数回、自宅と会社との往復を試しているが、温かい季節なら数日は1度の充電で走れるようだ。

大きな駆動用バッテリーは、充電に時間がかかる。自宅の7kWの家庭用充電器では、ほぼ空の状態から満充電までに12時間40分も必要だった。ID.4 GTX側は最大125kWまで許容してくれるから、急速充電器へ走った方が早いだろう。

ID.4で、もう1つの強みといえるのが実用性。多くのBEVのユーザーにとって、重視する部分といえる。リアシートは60:40の分割で倒せ、荷室容量は543Lと大型犬も余裕で乗せられる。フォード・マスタング・マッハEは、402Lだ。

車重は2149kgと軽くはないが、航続距離や動的能力に不満はなさそうだ。車内空間にもゆとりがある。既知の弱みといえる、インフォテインメント・システムが長期テストの体験にどの程度影響を与えるだろう。数か月をかけて、じっくり検証したい。

セカンドオピニオン

運転の楽しい、車重2t超えのクロスオーバーBEVを開発することは、簡単ではないはず。しかし、韓国のキアはそれを達成した。フォードやジャガーも、既にその糸口は見つけ出している。

スポーティなイメージを狙っているGTXとしては、操縦性にはもう少し磨ける余地が残っている。しかしリラックスして長距離走行できるマナーは素晴らしい。航続距離に不足もなく、乗りやすいBEVといえそうだ。 Felix Page(フェリックス・ペイジ)

テストデータ

価格

モデル名:フォルクスワーゲンID.4 GTX マックス(英国仕様)
新車価格:5万540ポンド(約834万円)
テスト車の価格:5万1225ポンド(約845万円)

オプション装備

グレイシャー・ホワイト塗装:685ポンド(約11万円)

テストの記録

電費:5.4km/kWh
航続距離:484km
故障:なし
出費:なし

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