往年の名車スポーツ800。ヨタハチの愛称で親しまれているクルマだが、その当時のカタログは現代のお笑い芸人もビックリの誇張があるよう感じてしまう。今回はそんなヨタハチの当時のカタログを振り返って、現代のクルマの進化を感じていこう。
文/佐々木 亘、写真:佐々木 亘、ベストカーWeb編集部
え……ヨタハチのパワーってN-BOX並みだったの!? それでも60年前は衝撃のデキだったのよ!! 今と昔のクルマを比べてみた
■ヨタハチの加速性能って今の軽自動車と同じなの?
スポーツカーにしては見た目が余りにも可愛すぎる
トヨタスポーツ800(ヨタハチ)は、「トヨタが自動車技術を結集した高性能スポーツカー」と紹介されている。
ヨタハチが登場したのは1965年、今から59年も前のことだ。
ジェット機を思わせるスタイルは流体力学の結晶と評され、SS1/4マイル(SSはスターティングスタート、1/4マイルは402m)を18.4秒で駆け抜け、最高時速は155キロの目をみはる高速性能と、当時のカタログには書かれている。
この数値は、カタログのいたるところに大きく書かれるほど、当時としては凄いものだった。
最近では、0-100km/hの加速性能が多く取り上げられ、SS1/4マイル(ゼロヨン)のタイムはあまり引き合いに出されなくなっている。
GT-RやNSXは、ゼロヨンを11秒台で走り抜けるし、GR86やロードスターでも15秒前後のタイムが出る。
現代のクルマでゼロヨン18秒台は、エコを売りにした軽自動車でもマークできるタイムだ。
約60年前の最先端スポーツカーの動力に、現代の量産軽自動車が追い付いているということがわかる。
軽自動車がヨタハチと同等の動力性能と想像すると、軽自動車に乗るたびに感慨深いものを感じずにはいられない。
■ボディ剛性や安全性の高さは最も進化を感じる
この当時にモノコックボディを採用したのは凄い
フレーム構造のボディが主流だった1965年当時、オープンボディでモノコック構造を採用したヨタハチの技術力は凄かった。
ただ、モノコックボディが弱いのではないかというユーザーの思いに対し、ヨタハチのカタログでは、次のように語っている。
『トヨタスポーツ800のボデーは、フレーム・レスの一体構造ですが、テッテイ的な軽量化をはかるとともに、曲げやねじれに対する剛性を十分にたかめてあります。(中略)防音、防振、防錆にも手をつくしたため、きしみや雑音もなく、耐久性もずば抜けています。足まわりの強じんさにも折り紙つき。仕上げのよさも、トヨタ車の面目十分です。』(※原文ママ)
令和の今、自動車カタログにこんなことを書いたら、自動車ディーラーへクレームの電話が止まないだろう。
きしみや雑音がないクルマなど、この世には存在しないからだ。
ただ、今のクルマは60年前と比べると、キャビンは丈夫に、車両の端部は柔らかく作ってあり、乗員と歩行者の両方を守る構造になっているのである。
最近ではプリクラッシュブレーキなどの安全装備に目が行くが、そもそも交通事故で車両乗員が死亡するというケースは、大きく減った。
クルマの安全性は日に日に高まるばかりだ。
■技術が進歩したからこそ勝てない部分もある
60年前の自動車はまだまだ発展途上だが、それでも一部現代に劣らないスペックを持ち合わせているヨタハチは正に「トヨタが自動車技術を結集した高性能スポーツカー」だ
60年間、長い時間をかけてクルマは格段に良くなった。
使われている技術も進歩し、今のクルマは60年前よりも製品レベルが高いのは、間違うことのない事実だ。
ただ、ヨタハチが現代車にも負けない、驚異的なスペックを持っていたのもまた事実である。その一つが燃費性能であろう。
今とは計測方法が異なるが、当時の計測方向で燃料消費率(平坦舗装路)は31km/Lとなっている。
この数値は、空冷2気筒水平対向式ツインキャブ800ccのエンジンと、580kgという軽量な車両重量から生み出されていることは間違いない。
大きな力を得るために大きなエンジンを抱え、安全性を高めるために車両重量が大きくなっている現代のクルマでは、成しえない数値だ。
日々進化し、大きな期待がかけられているが故に、勝てない部分もあるということか。
ものづくり大国と言われた日本の技術進化は、すごいスピードで進んできた。
昭和レトロが見直されている今、昔の工業製品のカタログを眺めながら、思い返すのも悪くない。
昭和のカタログは、どこを見まわしても自信に溢れ、ハツラツとした文字が並ぶ。
かつての日本の元気を分けてもらえている感じがするのは、筆者だけではないはずだ。
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みんなのコメント
というけど、ヨタハチの60年前は1900年代初頭、庶民はまだ馬の時代だよ。
60年で1PSが45PSなんだから、ヨタハチとんでもない進化だよね。