現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > フレキシブルフロア禁止! ベルギーGPからの新レギュレーションで躍進のはずが思惑が外れたメルセデス

ここから本文です

フレキシブルフロア禁止! ベルギーGPからの新レギュレーションで躍進のはずが思惑が外れたメルセデス

掲載 17
フレキシブルフロア禁止! ベルギーGPからの新レギュレーションで躍進のはずが思惑が外れたメルセデス

 次戦ベルギーGPから新たなレギュレーションになる。これまで極低ライドハイトで大きなダウンフォースを得て、路面との接触で削れるはずのスキッドブロックをフレキシブルマウントで逃げていたチームは、これに対処しなければならない。さて、その新規制の詳細とフェラーリ、レッドブル、メルセデスの対応はどうなのか。元F1メカ津川哲夫氏が解説する。

文/津川哲夫
写真/Ferrari,Mercedes,Redbull

フレキシブルフロア禁止! ベルギーGPからの新レギュレーションで躍進のはずが思惑が外れたメルセデス

ポーポシングの規制でフレキシブルなマウントが禁止になった

 FIAの世界評議会はベルギーグランプリに向けての新たなレギュレーションの変更を認め、加えて来年23年の変更と26年以降のPUの規則の概要も認めた。

 新たな規則変更とは、今シーズン開幕から大きな問題になってきたポーポシングの規制だ。厳密に言うとポーポシング(エアロによる上下振動)とバウンシング(サスペンションによる振動)そしてフロアの底突き等による衝撃などを規制するという。どう規制するかと言うと、振動と衝撃をセンサーによって記録し、その強さの上限を数値化してそこに制限を設け、超えると規則違反となるのだ。

 それと、スキッドブロックの厚さだ。レース後1mm以上減ると規則違反になる。いくつかのチームはこれまで、このスキッドブロックの搭載部分にフレキシブルなマウントを使い、路面接触時にスキッドブロック自体が僅かに上方に持ち上がり、路面との接触衝撃を弱めてスキッドブロックが大きく削れることを回避していた。しかし、このフレキシブルなマウントが禁止になった。

フェラーリやアルファロメオはフレキシブルなマウントを使っていた

フレキシブルフロアからソリッドなフロアへ

 ベルギーグランプリでは今まで規制されていなかった前後方向の柔軟性の部分も規制をすることになり、新たな検査方式を導入した。規則の縛りでよりソリッドなフロアへ近づけることになったのだ。

 今まではフロアエアロの効率を上げるために必要以上に車高を低めたり、路面に接触してもスキッドブロックが削れなかったりする逃げを、この規則で封じ込めたのだ。検査をより厳格化するためにFIAはスキッドブロックの“削れ減り”を計る為の検査位置をこれまでのように一部ではなく、穴の縁全域で検査することになった。

 これは今回のベルギーから施工されるのだが、これに加えて来年23年からはフロアーエッジの高さを15mm上昇させ、かつエッジの柔軟性を減らしベンチュリーフロアの最も低い部分を持ち上げるという。フロアエッジの柔軟性がフロアのシール性を上げ、より効率の良いダウンフォース獲得につかわれた。このフロアエッジの柔軟性を防ぐためにフロアエッジをつり下げるFIA公認ロッドの使用を許している。

 メルセデスは英国で、このFIA公認ロッドの追加のテストをしていた。つまりメルセデスW13はフロア・エッジに柔軟性があったということだろう。また、ディフューザーの両サイドもよりソリッド化されて、今シーズンFIAチェックのない部分での柔軟性が問題となった。それらを来期から強硬に封じ込めようとしている。

 そして最終的に上下振動に特化したFIAの振動・衝撃・加速センサーの搭載が義務づけられ、走行中のデータ全てがFIAでチェックされることになるのだ。

本来なら車高の問題を取り上げて欲しかったメルセデス。思惑どおり行かなかったようだ

フェラーリF1-75はそんなに影響はないという

特に影響があるだろうとされていたフェラーリは問題なさそうだ

 さてベルギーから施行される新規則、これまで極低ライドハイトでフロアから大きなダウンフォースを得て、路面との接触で削れるはずのスキッドブロックをフレキシブルマウントで逃げていたチームは、もちろん何とかこれに対処しなければ成らない。フェラーリはこの方式を使っていたため、影響は大きいと言われているが、実はハンガリーでフレキシブルなマウントを使ってはいなかった。それでもパフォーマンスに大きな差はなかったフェラーリF1-75はそんなに影響はないだろう。またレッドブルは最初からこの規則変更になんら問題はないし、改造の必要もないと言いきっている。

レッドブルは元々フレキシブルフロアを使っていないので問題はないという

ライバルに近づけると思っていたが、思惑が外れたメルセデス

 そうポーポシングの問題を大げさに騒いでいたチーム……。ドライバーへの危険性を訴え続け、FIAを動かしてレギュレーション化に導いたメルセデスは、これで思い通りライバルに近づける……と思われた。なぜなら、メルセデスはライドハイトの上昇がポーポシング対策には必須だったからだ。ところがライドハイトを上げなくともポーポシング対策ができていて、ダウンフォースも失わないチームがいると勝負にはならない。それで、何とか規則によってライドハイトを上げさせるのが目的だった。

 しかし、FIAはライドハイトそのものに関しては何も制限を付けず、スキッドブロックの削れとフレキシブルフロアだけに言及し、ライドハイトの高さに規則を設けなかった。つまりメルセデスの思惑通りには行かなかったわけだ。

 結果はベルギーグランプリを見てみないとわからないが、俯瞰してみれば規則変更をしてポーポシングが収まっても、今シーズンの勢力図に大きな変化はないのでは? と考えられる。実際夏休み前のハンガリーもフランスでも各チームでポーポシング対策はできていたのだから。

 それでもスパ・フランコルシャンはハイスピードながら、テクニカルな下りコーナーが多く、ドラッグを減らしながらもダウンフォースも欲しい。さらに舗装の基本は悪くはないが、アップダウンが多く水平面と下りコーナーの組み合わせはその合流点でうねりを造る。高速からのハードブレーキングとこのうねり、さらにはオールージュの縦のGフォース。ポーポシングにもバウンシングにも底突きにも、えらくタフなサーキットだ。

 チームのモディファイとFIAの思惑はいかなる結果をスパ・フランコルシャンでみせてくれるのだろうか?

津川哲夫
 1949年生まれ、東京都出身。1976年に日本初開催となった富士スピードウェイでのF1を観戦。そして、F1メカニックを志し、単身渡英。
 1978年にはサーティスのメカニックとなり、以後数々のチームを渡り歩いた。ベネトン在籍時代の1990年をもってF1メカニックを引退。日本人F1メカニックのパイオニアとして道を切り開いた。
 F1メカニック引退後は、F1ジャーナリストに転身。各種メディアを通じてF1の魅力を発信している。ブログ「哲じいの車輪くらぶ」、 YouTubeチャンネル「津川哲夫のF1グランプリボーイズ」などがある。
・ブログ「哲じいの車輪くらぶ」はこちら
・YouTubeチャンネル「津川哲夫のF1グランプリボーイズ」はこちら

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

[BEV]計画着々と進行中!? トヨタが福岡県に[BEV]電池工場を新設
[BEV]計画着々と進行中!? トヨタが福岡県に[BEV]電池工場を新設
ベストカーWeb
モリゾウがトヨタを激励。豊田スタジアム新コースでの“人力パワー”に観客から拍手/WRC写真日記
モリゾウがトヨタを激励。豊田スタジアム新コースでの“人力パワー”に観客から拍手/WRC写真日記
AUTOSPORT web
アストンマーティン・ヴァルキリーのデビュー戦とふたりのドライバーが決定。IMSAはデイトナを欠場へ
アストンマーティン・ヴァルキリーのデビュー戦とふたりのドライバーが決定。IMSAはデイトナを欠場へ
AUTOSPORT web
「エニカ(Anyca)」サービス終了…カーシェアはどこへ向かうのか?
「エニカ(Anyca)」サービス終了…カーシェアはどこへ向かうのか?
ベストカーWeb
オジエが豊田スタジアムステージの苦手意識を明かす「僕たちはいつも遅い」/ラリージャパン デイ1コメント
オジエが豊田スタジアムステージの苦手意識を明かす「僕たちはいつも遅い」/ラリージャパン デイ1コメント
AUTOSPORT web
オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
ベストカーWeb
ラリージャパン2024が開幕。勝田貴元が新レイアウトのスタジアムステージで3番手発進/WRC日本
ラリージャパン2024が開幕。勝田貴元が新レイアウトのスタジアムステージで3番手発進/WRC日本
AUTOSPORT web
N-VANより安い200万円以下!? スズキ新型[エブリイ]は配達業を助ける!! 航続距離200kmのBEVに生まれ変わる
N-VANより安い200万円以下!? スズキ新型[エブリイ]は配達業を助ける!! 航続距離200kmのBEVに生まれ変わる
ベストカーWeb
実録・BYDの新型EV「シール」で1000キロ走破チャレンジ…RWDの走行距離はカタログ値の87.9%という好成績を達成しました!
実録・BYDの新型EV「シール」で1000キロ走破チャレンジ…RWDの走行距離はカタログ値の87.9%という好成績を達成しました!
Auto Messe Web
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
AUTOCAR JAPAN
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
AUTOSPORT web
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
乗りものニュース
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
AUTOSPORT web
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
AUTOSPORT web
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
くるまのニュース
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
AUTOCAR JAPAN
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
AUTOCAR JAPAN
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
AUTOSPORT web

みんなのコメント

17件
  • スキッドブロックの摩耗量を規制すると言う。サスペンションを固くせざるを得ないと思うが、そちらも規制すると言う。各チームは相次ぐレギュレーション変更にうんざりでしょう。

    グランドエフェクトカーの問題は過去に学んでいるのに何なんでしょう。
    グランドエフェクトカー自体を止めてしまえばいいように思いますが。

    1970年代後半~1980年代前半に学んだ事が全く忘れ去られている。
  • ルールを決めると、その「穴」を見つけてくるチームも凄いと思う。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村