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加速するルノーの電動化戦略 ハイブリッドとPHEVをラインアップ

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加速するルノーの電動化戦略 ハイブリッドとPHEVをラインアップ

この記事は2020年2月に有料配信したメルマガを無料公開したものです。

2020年1月に開催されたベルギーのブリュッセルモーターショーでは、環境保護団体が会場内で展示車両に血の色のペイントをかけたり、展示車両の前で寝転がって抗議を行なったり、そしてプラカードを掲げるなど、150人余りが逮捕される騒ぎがあった。まさに現在のヨーロッパを象徴するモーターショーだったが、ルノーはこのブリュッセルモーターショーで、新たな電気駆動車のワールドプレミアを行なった。

今後登場する注目の自動運転と技術をピックアップ

ルノーの電気自動車

ルノーは、2012年12月にBセグメントの電気自動車「ゾエ」をいち早く発売するなど、欧州における電気自動車のパイオニアだ。

ゾエに続いて、商用車のカングーZ.E.、シティコミューターのトゥイージー、DセグメントセダンのフルエンスZ.E.と電気自動車を矢継ぎ早に展開した。もちろんこの電気自動車戦略を牽引したのは当時のカルロス・ゴーン会長である。

日産は2010年12月に「リーフ」を発売しており、経済アナリストなどは日産の技術供与によりルノーの電気自動車が開発されたとする説明もしたが、実際にはルノーの独自開発で、搭載するリチウムイオンバッテリーも、充電規格もルノー独自のものだ。またルノーはリチウムイオンバッテリーをリース方式としているのもユニークである。これらの電気自動車は、フランス国内では90万円弱の環境奨励金を得ることもできた。

日産リーフと同様に、ルノーの電気自動車も大ヒットとまではならなかったが、ヨーロッパの電気自動車としてはナンバーワンの実績を積重ねており、ルノーは電気自動車に関してはトップランナーになっている。

クリオ、キャプチャー、メガーヌに2モーター式ハイブリッド

ブリュッセルモーターショーで、ルノーは2019年にフルモデルチェンジした新型クリオ(日本名:ルーテシア)にハイブリッドの「E-TECH」を、B+セグメントのクロスオーバーSUVのキャプチャーにはPHEV「E-TECHプラグイン」を発表した。そして2月3日には新型メガーヌにもPHEV「E-TECHプラグイン」を発表した。

キャプチャー E-TECHプラグイン(左)とクリオE-TECH

ルノーは、従来からの電気自動車のラインアップに加え、主力モデルにフルハイブリッドを展開することを明らかにしたのだ。ルノーは、「E-TECH」、「E-TECHプラグイン」をラインアップしたことで、ユーザーは100%電気自動車からハイブリッドまで、用途に合わせて電気駆動車を選択できるようになったとアピールしている。

メガーヌ E-TECHプラグイン。最初はツアラー(ワゴン)だが、セダンにも追加予定

「E-TECH」のコンセプトは、常時モーターでスタートし、エンジンで発電、ドライビング プレジャーに満ちた走行フィーリング、ユニークなトランスミッションを組み合わせ、高効率な回生ブレーキ、大容量のバッテリーを搭載することで低燃費を実現する。これらのテクノロジーはF1でのハイブリッド技術と10年間の電気自動車の経験とノウハウを組み合わせた結果だ。

クリオE-TECHは、市街地走行の80%は電力のみで走行し、WLTP市街地サイクルでの燃費はガソリン車に比べ40%低減できるという。

また、より大容量のバッテリーを搭載するキャプチャーE-TECHプラグインは、WLTP高速モード時には電力のみで最高速度135km/h、航続距離50km、WLTP市街地モードでは電力のみで65kmの航続距離を実現している。

メガーヌE-TECHプラグイン

クリオ、キャプチャーともに、ルノー・日産・三菱アライアンスで実現したモジュラー プラットフォーム「CMF-B」を採用しており、電気駆動のコンセプトも盛り込み済みのため、問題なく2モーター式ハイブリッドの搭載が可能になった。

ルノーは150件以上の特許を持つオリジナルかつ、巧妙なシリーズ・パラレル式ハイブリッド システムを開発し、大幅なCO2削減、長い航続距離を実現している。なお、モーターはルノー・日産・三菱のアライアンスを活用した成果となっている。

ルノーは今後、電気自動車モデルが8車種、ハイブリッド/PHEVモデルを12車種展開する計画だ。

原点はF1のハイブリッド技術

減速回生と排気熱発電を使用する現在のF1のハイブリッド システムが、市販乗用車の「E-TECH」の原点になっていると説明している。2013年から、F1のエンジニアと乗用車開発のエンジニアは、ハイブリッド システムに関するテクノロジー、特にエネルギーマネージメントの知識を共有し、こうした技術が「E-TECH」として結実したわけだ。

とりわけドライビング プレジャー、減速回生、エネルギーの最適配分に関してはF1のテクノロジーと共通の要素。F1でも乗用車でも、燃焼による出力と必要燃料の関係は同じだ。つまり、内燃エンジンが発生したエネルギー(出力)が、走行に必要なモーター電力を超える場合は、常にエンジンの余剰エネルギーでバッテリーを充電するように設計されている。

F1と同様に、クルマの運動エネルギーは減速時に回生され、その回生エネルギーはバッテリーを充電することができる。高速道路を走行中のエンジン出力余剰分は発電用に使用され、アクセルを大きく踏み込んだ時はエンジンは発電ではなく加速に使用。逆に市街地ではバッテリーに蓄積された電力のみで走行するというエネルギー マネージメントが行なわれる。

E-TECHプラグインの場合は、スポーツモードを選択し、加速する場合はエンジン出力とモーター出力の両方が使用され、爽快な加速が生み出される。さらに急加速の場合は、通常は発電用のモーターも駆動用に使用され、エンジンに加え2モーターの駆動アシストが行なわれる。こうした制御はF1の予選用の走行モードと同じである。

こうしたハイブリッドの作動は、革新的なトランスミッションにより実現されている。トランスミッションは通常の摩擦クラッチは装備されず、常時噛み合い式のドグ トランスミッションが採用されている。発進は常にモーターで行なわれ、またギヤチェンジする時のトルクの断続もモーターによるトルクでカバーし、スムーズに、しかも常時噛み合い式のため瞬時に行なわれている。

E-TECHのシステム

このE-TECHシステムに使用される1.6Lエンジンは、アライアンスを活用し日産新世代エンジンをベースに専用設計している。

ルノーのE-TECH、E-TECHプラグインは共通のハイブリッド システムを採用していることも画期的だ。2モーターの1個は駆動用、もう1個は高電圧スターター/ジェネレーター(HSG)で、このHSGはエンジン始動と発電用で、全開加速時には駆動アシストも行なう。そして革新的なクラッチレスのマルチモード ギヤボックスで構成されている。



リチウムイオンバッテリーの容量は、E-TECH用は1.2kWhのバッテリー(230V)容量で、市街地では運転時間の80%が電気駆動モードとなる。PHEVのE-TECHプラグインは9.8kWhのバッテリー(400V)が搭載され、都市部では電気駆動モードで65km走行することが可能だ。

2個のモーター、ガソリン エンジン、そしてマルチモード トランスミッションを組み合わせることで次のような運転モードを生み出す。

まず発進では、エンジンは使用せず、駆動用モーターで動き出す。モーターのため、発進から最大トルクを使用できる。

ハイブリッド システムは「シリーズ・パラレル式」で、走行状態に合わせて最適で、高効率な走行モードを自動選択するようになっている。エンジンは発電用に稼働し、また状況によってはトランスミッションに直結され駆動を行なう。

言い換えると、モーターのみによるEV走行と、エンジンで発電し、その電力を使用してモーターで走行するシリーズ ハイブリッド走行、そしてエンジンの駆動力を利用するパラレル ハイブリッド走行、さらにエンジンと2個のモーターを駆動に使用するシリーズ・パラレル併用走行の組み合わせは、走行に必要なエネルギーをベースにバッテリーの電力容量、減速による回生量、モーター/エンジンの駆動力を総合的に演算して決定している。そのためマルチモード トランスミッションは15通りの作動を行なっているのだ。

もちろん運転モードの切り替えではショックはなく、最も効率的なモードが自動選択される。

減速回生は「D」レンジの場合、ドライバーがアクセルペダルから足を離すと、駆動モーターは回生ジェネレーターとして作動し、バッテリーを充電。「B」レンジにするとより強力な回生電力と回生ブレーキ力が得られる。

また回生ブレーキと油圧ブレーキの協調は電子制御式で、回生ブレーキ力に加え油圧ブレーキが併用される。この2種類のブレーキ力のバランスも自動制御され、回生ブレーキ力で発生する電力はバッテリーに送られている。

新型クリオE-TECHは、140psのエンジンを搭載し、傑出した動力性能と低燃費を両立。Bセグメントのクリオは、同クラスのライバルより遥かに洗練され、高効率なハイブリッド システムを搭載し、CO2排出量は100g以下/km(WLTP値)で、CO2排出量の少なさと電気駆動によるドライビング プレジャーを両立させている。

一方、キャプチャーE-TECHプラグインは、フランスはもちろんヨーロッパでもB+セグメント クロスオーバーSUVでベストセラーであり、中国市場でもシェア拡大を目指しており、160psのエンジンを搭載、9.8kWh/400Vのバッテリーを搭載するPHEVとして存在感を強めている。EV走行距離が50km、EVでの最高速度は135km/hと上級クラスのPHEVモデルに匹敵する性能を備えている。

走行モードは「ピュア(EV)」、「スポーツ」、「E-セーブ(充電重視)」を選択することができる。燃費性能は1.5L/100km,CO2排出量は32g/km。

もちろん新型キャプチャーもレベル2の運転支援システム、最新のコネクテッド機能とインフォテイメントを備え、セグメントのリーダーとなるにふさわしい装備を充実させている。

なお、近い将来にはルノーのE-TECH用、電気自動車用のリチウムイオン バッテリーと、日産、三菱の電気駆動モデルのバッテリーを共通規格化し、共同購入することでよりコストを低減できるはずで、ルノーは共通規格化を急いでいるが、日産が経営的な問題で対応が遅れていると推測できる。

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みんなのコメント

2件
  • ルノー系列でのEVリーダーは日産、PHEVリーダーは三菱だったのでは?
  • ルノー製EVであるZOEがリーフと違い独自開発(バッテリもLG製、いまはリースだけでなく購入も可能)である…というのがの日本では正しく理解されてないなか、そこを指摘して書かれているのは好感です。
    ただ、現行メガーヌがCMF-Bというのはちょっと違い、正しくはCMF-C/Dなのでそこだけ惜しいです。

    BEVもそうですが、RNMがE-techとe-Powerの両HEVシステムをアライアンス内でどう帳尻あわせていくのかは、ちょっと見ものかと思います。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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