現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【意外と知らない】スポーツカーでよく聞く「LSD」って何?

ここから本文です

【意外と知らない】スポーツカーでよく聞く「LSD」って何?

掲載 更新
【意外と知らない】スポーツカーでよく聞く「LSD」って何?

タイヤの左右回転差を調整する「デフ」の作動を制限する装置

LSDは、非常に強力な幻覚剤=麻薬が有名だが、自動車用語では「リミテッド・スリップ・デフ」の略称のこと。クルマがコーナリングしているとき、外側のタイヤのほうが長い距離を走ることになるので、内側のタイヤと外側のタイヤの旋回半径が違う。

【意外と知らない】クルマのエアロパーツがもつ効果とは?

そこで、コーナリング時に駆動輪の外側のタイヤが内側のタイヤよりも速く回るようにして、無理なく曲がることができるように左右の回転差を調整する装置が付いている。それがデファレンシャルギヤ=略称「デフ」と呼ばれるもので、ファイナルギヤに組み込まれている。

このデフのおかげで、クルマはスムースに曲がることができるのだが、欠点もある。たとえば、滑りやすい路面で、片輪がスリップしてしまった場合、もう片輪には駆動力=トラクションがかからなくなってしまう。

同様に、高い横Gのかかるコーナリング時は、イン側のタイヤがリフト気味になり、しっかり接地しているアウト側の駆動輪にまでトラクションがかからず、クルマが前に進まなくなる。

ラリーやジムカーナ、サーキット走行などのスポーツ走行では、たとえインリフト気味になったとしても、アクセルオン時は常にトラクションがかかるようにしておきたいので、片輪の接地性が下がったときでも、もう片輪に大きな駆動力がかかるよう、デフの作動を制限する装置として開発されたのが、LSDというわけだ。

インリフトしても空転をふせいでくれるデフなので、古い人は「ノンスリ(ノンスリップデフ)」とも言う。

現在のLSDは大きく分けて3種類。ひとつは左右輪の回転差が一定以上になるとクラッチプレートが開いて差動を制限する、いわゆる機械式LSD(回転感応式)。もうひとつがトルク差に感応するもので、純正LSDに多い、トルセン式やヘリカル式がこのタイプ。アフターパーツやオプションでのLSDは、今のところ機械式が主流。

回転感応式なので、右輪で回転差が生じると回転が遅い方のタイヤ(例:インリフトしたときの外輪)に大きな駆動力がかかるようにしてトラクションを稼ぐ仕組みなので、ロール量が多くなったり、縁石に乗ったりすることが多い、モータースポーツには向いている。

4輪がシッカリ接地した状態では曲がりにくいなどのデメリットも

欠点は、一定速度で旋回したり、四輪が接地した状態で旋回制動しているときは内輪の回転のほうが遅いので、LSDにより内輪の駆動力が増えて、旋回と逆方向にヨーモーメントを起こし、曲がる力を阻害しターンインの最初が曲がりづらくなってしまうこと。

また、脱出時も旋回中にアクセルを強く踏むと、内輪の摩擦円はすでに小さくなっているので、内輪が空転気味になるので、外輪に駆動力が大きくなり、旋回方向へのヨーモーメントが大きくなる(プラスのヨーなので、オーバーステア気味)。

一方、トルク感応式は、LSDの効き方がマイルドで、ヘリカル式などは、FF車との相性がいい。

ただし、このタイプは完全にインリフトしてしまうと、LSD効果は失われてしまう。それらの欠点を克服するために開発されたのが、電子制御のアクティブLSDだ。各種センサーからの情報をもとに、コンピュータが差動制限を制御するので、理想的な効き具合を引き出せる。

また、コンピュータのデータを書き換えるだけで、セッティングも自由自在というメリットもある。デフの容量と熱などの耐久性に関しては、改善の余地があるところだが、これからは間違いなく、電子制御LSDの時代。

とくにフロント、センター、リヤの3つのデフをもつ4WD車では、サスペンション以上に電子制御LSDのセッティングが、ハンドリングチューンを大きく左右するはずだ。

ただし、くどいようだが、世間一般ではLSDといえば麻薬のこと。筆者は大学生時代、愛車にLSDを入れて上機嫌でキャンパスに行ったところ、クルマに詳しくない友人からゴキゲンの理由を訊ねられたことがある。そこで、よくぞ聞いてくれたとばかり、自慢げに「ついにLSDを買ったんだよ。アレは効くね~。とってもハッピーだよ」と答えたところ、思いっきり友人たちから引かれてしまい、噂に尾ひれがついて、苦労したことがある(実話)ので、気を付けよう。

(文:藤田竜太)

関連タグ

こんな記事も読まれています

ベッテルの名前はなし。ル・マン24時間、全車のエントリー固まる。FIA F2王者ドルゴヴィッチ初参戦へ
ベッテルの名前はなし。ル・マン24時間、全車のエントリー固まる。FIA F2王者ドルゴヴィッチ初参戦へ
AUTOSPORT web
ピアストリ「チームにとって素晴らしい1日だが、僕にとっては残念なレースだった」:マクラーレン F1第6戦決勝
ピアストリ「チームにとって素晴らしい1日だが、僕にとっては残念なレースだった」:マクラーレン F1第6戦決勝
AUTOSPORT web
ガスリー「入賞には手が届かなかったがいいレースができた。やるべきことはすべてやった」:アルピーヌ F1第6戦決勝
ガスリー「入賞には手が届かなかったがいいレースができた。やるべきことはすべてやった」:アルピーヌ F1第6戦決勝
AUTOSPORT web
ペンスキー、プッシュ・トゥ・パスのスキャンダルめぐり”過ち”を謝罪。チームの幹部4人が謹慎処分に
ペンスキー、プッシュ・トゥ・パスのスキャンダルめぐり”過ち”を謝罪。チームの幹部4人が謹慎処分に
motorsport.com 日本版
「高速道路‐港」ついに直結! 40km無料の「都城志布志道路」2024年度全通へ 2県にまたがる“南北新ルート”
「高速道路‐港」ついに直結! 40km無料の「都城志布志道路」2024年度全通へ 2県にまたがる“南北新ルート”
乗りものニュース
日産「新型エルグランド」まもなく登場? 15年ぶり“全面刷新”で「アルファード対抗馬」なるか!? 待望の「次期モデル」どうなるのか
日産「新型エルグランド」まもなく登場? 15年ぶり“全面刷新”で「アルファード対抗馬」なるか!? 待望の「次期モデル」どうなるのか
くるまのニュース
ヒュルケンベルグ「レース前半はグリップ不足に苦しみ、ペースが遅すぎた」:ハース F1第6戦決勝
ヒュルケンベルグ「レース前半はグリップ不足に苦しみ、ペースが遅すぎた」:ハース F1第6戦決勝
AUTOSPORT web
20代いすゞ「ピアッツァ」オーナーらの呼びかけで「U35」オーナーの愛車105台が集合!「YOKOHAMA CAR SESSION~若者たちのカーライフ~」とは
20代いすゞ「ピアッツァ」オーナーらの呼びかけで「U35」オーナーの愛車105台が集合!「YOKOHAMA CAR SESSION~若者たちのカーライフ~」とは
Auto Messe Web
トヨタ ランドクルーザー 70【1分で読める国産車解説/2024年最新版】
トヨタ ランドクルーザー 70【1分で読める国産車解説/2024年最新版】
Webモーターマガジン
二輪車の祭典「World Bike Festa -2024 大展示試乗商談会 in アズテックミュージアム-」が仙台で5/25・26に開催!
二輪車の祭典「World Bike Festa -2024 大展示試乗商談会 in アズテックミュージアム-」が仙台で5/25・26に開催!
バイクブロス
【ひねもすのたりワゴン生活】滋賀から城崎、そして神戸 5日間1500kmのクルマ旅 その7
【ひねもすのたりワゴン生活】滋賀から城崎、そして神戸 5日間1500kmのクルマ旅 その7
AutoBild Japan
『ル・ボラン カーズ・ミート2024 横浜』出展社情報を更新しました!
『ル・ボラン カーズ・ミート2024 横浜』出展社情報を更新しました!
LE VOLANT CARSMEET WEB
マルーカスの後任になるのか? プルシェール、アロー・マクラーレンでオーバルコースを初体験「精神的にかなり疲れた」
マルーカスの後任になるのか? プルシェール、アロー・マクラーレンでオーバルコースを初体験「精神的にかなり疲れた」
motorsport.com 日本版
ハコスカ実車も展示して大注目のアオシマ楽プラ、1/32新作予定も発表!【第62回 静岡ホビーショー2024速報】
ハコスカ実車も展示して大注目のアオシマ楽プラ、1/32新作予定も発表!【第62回 静岡ホビーショー2024速報】
LE VOLANT CARSMEET WEB
『トヨタ・スープラ(1995年編)』ユーザーの努力で戦闘力を上げた“Cカー譲り”のGTスープラ【忘れがたき銘車たち】
『トヨタ・スープラ(1995年編)』ユーザーの努力で戦闘力を上げた“Cカー譲り”のGTスープラ【忘れがたき銘車たち】
AUTOSPORT web
WRC第5戦、グラベルを得意とするドライバーが集結、伝統のラリーは大混戦!?【ラリー・ポルトガル プレビュー】
WRC第5戦、グラベルを得意とするドライバーが集結、伝統のラリーは大混戦!?【ラリー・ポルトガル プレビュー】
Webモーターマガジン
【インディアン】公式イベント「INDIAN RIDERS DAY JAPAN in FSW」が富士スピードウェイで7/28開催!
【インディアン】公式イベント「INDIAN RIDERS DAY JAPAN in FSW」が富士スピードウェイで7/28開催!
バイクブロス
テーマは原点回帰! トヨタが「ランクル」に"250"シリーズと特別仕様車を追加
テーマは原点回帰! トヨタが「ランクル」に"250"シリーズと特別仕様車を追加
バイクのニュース

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村