現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > 野尻智紀が明かす、海外進出に対する複雑で“アンバランス”な感情。現状関心あるカテゴリーはない一方「挑戦したいという気持ちはあります」

ここから本文です

野尻智紀が明かす、海外進出に対する複雑で“アンバランス”な感情。現状関心あるカテゴリーはない一方「挑戦したいという気持ちはあります」

掲載 7
野尻智紀が明かす、海外進出に対する複雑で“アンバランス”な感情。現状関心あるカテゴリーはない一方「挑戦したいという気持ちはあります」

 2023年シーズンのスーパーフォーミュラで宮田莉朋、リアム・ローソンと激闘を繰り広げた末、シリーズ3連覇を逃した野尻智紀。そんな彼が最終戦を終えた後に語った来季以降への展望は非常に興味深いものだった。

「色々なチャレンジをしてみたいです。日本じゃないところでのチャンスもあればいいなと思っています」

■TEAM MUGENとの複数年契約を異例の公表。ドライバー評価の“見える化”に野尻智紀が寄せる期待「トップ選手の姿を知らないと、これからの選手が強い意志を持てないのでは」

 国内トップフォーミュラで2度のチャンピオンという実績を残した野尻が、将来的な海外レースカテゴリーへの挑戦に意欲的なコメントを残したのだ。現在の日本を代表するトップレーサーの“意思表示”は話題となったが、TEAM MUGENと複数年契約を結んで2024年以降もスーパーフォーミュラに参戦することとなった野尻に、この発言の真意について改めて聞いた。

 野尻によると、海外カテゴリーに挑戦したいという意思があるのは確かだという。しかしその一方で、現状野尻にとって特に魅力的に感じるレースカテゴリーが海外にないというのも、彼の心境を複雑なものにしている。

「F1はもちろん、インディカーだったり、WECやIMSA、そういったところに挑戦してほしいという声を、ファンの方からありがたいことにいただいています。ただ、自分の価値観の中ではそこまで魅力を理解できていないところもあります」

 確かに日本人ドライバーの海外カテゴリー挑戦というと、F1の他にインディカー、WEC、IMSAといった名前が挙がりがちだ。F1に関しては、参戦メーカーやチームの育成プログラムに属していないベテランドライバーがシートを得るのは難しい状況にあるが、インディカーにおいては様々なキャリアパスがあるため、国内で実績を残したドライバーの“次なるステップ”として期待されることが多い。

 実際にインディカーへの関心を公言する国内のドライバーも少なくないが、野尻はやや価値観が異なるようだ。それでは、彼がレースカテゴリーを評価する上での“軸”はどこにあるのだろうか?

「自分の中では、速いクルマに乗りたい、というのがあります」

 そう語る野尻。“速い”のものさしは人ぞれぞれだろうが、野尻としては“クイック&ライト”なスーパーフォーミュラのマシンが「すごく楽しいマシン」だと感じるのだという。

「今のスーパーフォーミュラはすごく速いですし、ドライビングしていると、自分自身を興奮させるものがあります。他のカテゴリーのクルマに実際に乗ったわけではありませんが、インディではストリートサーキットだとまた違った技術が求められます」

「陸上競技でも競技ごとにそれぞれ違ったものが求められるように、(レースカテゴリーによっては)全く違う競技に見えちゃうんですよね。ストリートサーキットが好きな人もいると思いますが、僕としては『ただ思い切りいけたやつが速い』みたいな感覚があって、個人的には合わないというか、自分を興奮させるものがあるのだろうか、と思ってしまいます」

「ただ、(海外カテゴリーに)挑戦したいという気持ちはあるんですよね。そこのアンバランスさが自分を迷わせている、というのはあると思います」

■世界で戦う猛者とも「そんなに変わらないんじゃないか」

 このように、複雑な心境について明かした野尻。特段魅力に感じるカテゴリーがない一方で、海外に挑戦したいという意思はある。それはつまり、世界に出て自らの実力を試したいということなのか? そう尋ねると、野尻はおもむろに口を開いた。

「言うほど変わらないんじゃないか、というのは感じたりします」

「(マックス)フェルスタッペンや(ルイス)ハミルトン、F1のトップチームにいる数人はとてつもない速さを持っていると思いますが、それ以外で言うと、そんなに変わらないんじゃないかと思います」

 こういった感覚は、10代、20代前半の頃から少なからず野尻が感じていたことだった。トニーカートのワークスチームでカート世界選手権に参戦していた時は、今やWECのフェラーリ使いとして名高いジェームス・カラドがチームメイトで、下位クラスのチームメイトにもフォーミュラE王者のアントニオ・フェリックス・ダ・コスタや元F1ドライバーのウィル・スティーブンスがいた。フォーミュラBMWでマカオを走った時も、カルロス・サインツJr.とトム・ブロンクヴィストの間に割って入り2位になった。「世代を代表する選手がいた中で、速さ自体はそんなに変わらないんじゃないかと思いました」と野尻は振り返る。

 ただそれからの野尻は、劣等感と戦う日々が続いた。スーパーフォーミュラへのステップアップは果たすも、年間チャンピオンにはなかなか手が届かない。2016年には、GP2王者の肩書きを引っ提げて来日し、同じチームで走ったストフェル・バンドーンにリザルトで大きな差をつけられた。昨年のインタビューでは「それまでチームメイトに対して、明確に『これ無理だろ』という差を感じたことはなかった」と当時を想起していた。

 しかし、2021年にはついに悲願のシリーズチャンピオンに。2022年も圧倒的な強さで連覇を果たした。そして今シーズン、7年越しにローソンという“F1候補生”をチームメイトに迎えたが、シーズンを通して得た感覚はバンドーンの時のそれとはかなり異なっていたに違いない。F1という“頂上”が、7年前よりも随分近くに見えているのだろう。

「リアムが今年来てくれて……同じような感じなんですよね」

「当然、リアムと比べると歳はとっていますが、F1とかって今の自分くらいでも大丈夫なのかなって。もっと高いところにあるような気がしていたので。それは自分の技術が上がったということなのかもしれないですが……何と言葉にすれば良いのか分からないですけどね(笑)」

「だから意外とやれるんじゃないかと思います。究極のスペシャルなドライバーというのは、何人かだと思うんですよね。そのスペシャルに届くかどうかは別ですが、あの中に混ざったとしても、普通な感じでレースができるんじゃないかと。もちろん努力は必要ですけどね」

「いずれにしても、挑戦できる機会があったら挑戦したいと思います。自分の技術が高くなってきた今だからこそ、そう思うところはあります。これまでは正直、挑戦しても無駄だと思うくらいの技術だと思っていましたが、今だったら挑戦したら面白いんじゃないかなと思います」

こんな記事も読まれています

7度のF1王者ハミルトン、母国優勝! 2年半ぶりの劇的Vに涙を禁じ得ず。RB角田裕毅は10位入賞|イギリスGP決勝
7度のF1王者ハミルトン、母国優勝! 2年半ぶりの劇的Vに涙を禁じ得ず。RB角田裕毅は10位入賞|イギリスGP決勝
motorsport.com 日本版
EV600kmドライブで見えた!! 日本でEVが普及しない、魅力的に感じられない最大の理由
EV600kmドライブで見えた!! 日本でEVが普及しない、魅力的に感じられない最大の理由
ベストカーWeb
F1イギリス決勝速報|ハミルトン、母国で2021年以来の優勝! フェルスタッペン&ノリス下す。角田裕毅10位でポイント獲得
F1イギリス決勝速報|ハミルトン、母国で2021年以来の優勝! フェルスタッペン&ノリス下す。角田裕毅10位でポイント獲得
motorsport.com 日本版
松下信治の交代経緯をTGM Grand Prix池田和広代表が説明。第4戦に向け「外国人ドライバーと交渉中」
松下信治の交代経緯をTGM Grand Prix池田和広代表が説明。第4戦に向け「外国人ドライバーと交渉中」
AUTOSPORT web
ルノー・セニック 詳細データテスト 及第点の走り 長い航続距離 乗り心地や質感は今後の向上に期待
ルノー・セニック 詳細データテスト 及第点の走り 長い航続距離 乗り心地や質感は今後の向上に期待
AUTOCAR JAPAN
英国の自動車博物館ハシゴ旅! 空港でのトラブルを乗り越えて、ジム・クラークが乗った「BRM P83」を見ることができました
英国の自動車博物館ハシゴ旅! 空港でのトラブルを乗り越えて、ジム・クラークが乗った「BRM P83」を見ることができました
Auto Messe Web
色々許せちゃう多能ぶり! スズキ・イグニスへ英国試乗 オフロードタイヤなら悪路も得意
色々許せちゃう多能ぶり! スズキ・イグニスへ英国試乗 オフロードタイヤなら悪路も得意
AUTOCAR JAPAN
【MotoGP】今季初表彰台と好調オリベイラ、その要因はよく分からない? 「バイクは前戦オランダと似たようなものなんだ」
【MotoGP】今季初表彰台と好調オリベイラ、その要因はよく分からない? 「バイクは前戦オランダと似たようなものなんだ」
motorsport.com 日本版
マルティン痛恨の転倒0ポイント! バニャイヤ4連勝でランキング首位浮上&マルケス兄弟が表彰台|MotoGPドイツ
マルティン痛恨の転倒0ポイント! バニャイヤ4連勝でランキング首位浮上&マルケス兄弟が表彰台|MotoGPドイツ
motorsport.com 日本版
SUVでも参加OK! コスパ最高の”価値あり”イベント「マツダ スピリットレーシング ジムカーナ エクスペリエンス」を体験
SUVでも参加OK! コスパ最高の”価値あり”イベント「マツダ スピリットレーシング ジムカーナ エクスペリエンス」を体験
くるまのニュース
プリウスに嫉妬した男 「ボブ・ルッツ」が携わった名車・迷車 25選 BMW、GMで活躍
プリウスに嫉妬した男 「ボブ・ルッツ」が携わった名車・迷車 25選 BMW、GMで活躍
AUTOCAR JAPAN
「現状EVスーパーカーの需要は極めて低い」とマクラーレン。10年先まで販売されるHVスーパーカーの未来も含めて英国政府に要望したこととは
「現状EVスーパーカーの需要は極めて低い」とマクラーレン。10年先まで販売されるHVスーパーカーの未来も含めて英国政府に要望したこととは
Auto Messe Web
生産を継いだのはリッチな「日本人」 ミドルブリッジ・シミターGTE(1) 王女ご愛用スポーツワゴン
生産を継いだのはリッチな「日本人」 ミドルブリッジ・シミターGTE(1) 王女ご愛用スポーツワゴン
AUTOCAR JAPAN
1日にスピード違反2回! ミドルブリッジ・シミターGTE(2) 王室へピッタリのグランドツアラー
1日にスピード違反2回! ミドルブリッジ・シミターGTE(2) 王室へピッタリのグランドツアラー
AUTOCAR JAPAN
史上最強330馬力! 国産スポーツカーの代表格 ホンダ新型「シビック タイプR」は年収いくらなら買えますか? 60回払いのローンならどうでしょう?
史上最強330馬力! 国産スポーツカーの代表格 ホンダ新型「シビック タイプR」は年収いくらなら買えますか? 60回払いのローンならどうでしょう?
VAGUE
あおり運転 コロナ禍後に遭遇率が「大幅上昇!」依然として深刻だが期待される“装備”の存在も
あおり運転 コロナ禍後に遭遇率が「大幅上昇!」依然として深刻だが期待される“装備”の存在も
乗りものニュース
ハミルトン初日6番手「マシンは改善しつつあるが、マクラーレンほど速くない」メルセデス/F1第12戦
ハミルトン初日6番手「マシンは改善しつつあるが、マクラーレンほど速くない」メルセデス/F1第12戦
AUTOSPORT web
500馬力超え! 日本専用の「新型スーパーカー」発表! 鮮烈レッドの「V8エンジン」をミッドシップ搭載! 情熱の“炎” モチーフの「レッドフレイム」とは
500馬力超え! 日本専用の「新型スーパーカー」発表! 鮮烈レッドの「V8エンジン」をミッドシップ搭載! 情熱の“炎” モチーフの「レッドフレイム」とは
くるまのニュース

みんなのコメント

7件
  • bab********
    速さではあまり変わらないと言えるのはF1にいってそれなりの結果を残した者だけ。昔は同じでも相手は成長している。
  • ven********
    記事を読むだけだと結局はホンダからサラリーを貰ってドライブしているだけの選手にしか見えないけどね。
    F1でやれるかどうかは、チームメイトだったローソンと、そのチームメイトの角田選手との力関係で理解出来そうだけどね。
    FIA-F2からSFに参戦して初コースでいきなり勝つローソン。そのローソンに予選でも決勝でもほぼ勝っていた角田選手。その角田選手もマシンやチームの能力差があるとは言え、まだまだトップでは争えない。

    年齢とか言い訳にせずに、F2でも良いから挑戦させてくれ!と言えない?言わない。ホンダから飛び出なくても良いとは思うけど、松下選手のように、自分でスポンサー見つけて挑戦する気構えがなければ通用しないでしょう。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村