電動化を急ぐ英国の充電事情
2030年にガソリン・ディーゼル車の新車販売を禁止する英国では、EV(電気自動車)の普及を急いでいる。EVにおける課題の1つが、「どう充電するか」だが、英国のEVオーナーの約9割は、自宅で充電しているという。
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家庭の電気代が安くなるだけでなく、夜寝ているときなど、クルマを動かしていないときに充電できるので効率的と言えるだろう。英国での充電は一見すると、とても簡単に思えるかもしれないが、実態はそうでもないようだ。
自宅で充電するには、車庫か路上駐車場(英国では自宅前の路上駐車も一般的)に充電器が必要だ。しかし、英国の40%以上の家庭には、このような設備がない。そのため、都市部であろうと郊外であろうと、EVを所有したり運転したりすることが難しくなっている。そうした環境に住むオーナーは、どのように充電すればいいのだろうか。
今回は、英国におけるEVの充電事情を紹介したい。
歩道をまたいで充電ケーブルを伸ばす
理論上、最も簡単な充電方法は、自宅の敷地内からケーブルを引き、歩道を横切り、路上駐車したEVに接続することだ。しかし、当然ながら歩行者や自転車がケーブルにつまずく危険があり、法的なリスクもあるため必ずしも推奨はされない。
どうしてもこの方法で充電しなければならない場合、いくつか注意点がある。まず、ケーブルはできるだけ平らに敷くこと、充電が完了したらケーブルをすぐに取り外すことだ。また、電源は1階か地下にあるものに限ること。2階の窓からケーブルをぶら下げるのは、この上なく嫌われる。
道路工事中の舗道でよく使われているような、ケーブルプロテクターの使用も検討できる。滑りにくいプラスチック製で、黄色と黒のような目立つ色で仕上げ、視認性を高めるといいだろう。ただし、充電のたびにプロテクターとケーブルを設置・回収しなければならない。
英国の法律的には、歩道を横切ってケーブルを通すことは違法ではないが、歩行者に危険や迷惑をかけないようにしなければならない。万が一、誰かがつまづいて怪我をした場合は、法的な責任を問われてしまう。そのため、各自治体ではこのような行為に注意を促しているが、完全に禁止している自治体はごく少数にとどまる。
英国企業のGreen Mole社は、歩道の下に専用のトンネルを作る方法を提案している。基本的には、標準的なウォールボックス充電器を自宅の壁に取り付け、歩道に小さな溝を掘り、滑り止めの金属カバーで覆う。充電するときは、車道側のカバーのパネルを外し、充電ケーブルを引っ張るだけだ。まだ開発の初期段階であり、価格も3000ポンド(約50万円)と決して安くはないが、路上充電の問題点の多くを解決している。
公共の充電設備
自宅で充電が難しい場合、おそらく最も簡単な解決策は、公共の充電器を使用することだろう。歩道にケーブルをわたしたり、近所に迷惑をかけたりすることなく、単に公共充電ステーションへ足を運べばよい。もちろん、一番便利な場所はどこか、自宅よりも電気代が高くつくかどうかなど、地域によって事情は異なるが、EVの航続距離がどんどん伸びていることを考えると、ほとんど手間がかからないはずだ。
その他の選択肢は?
まず、短時間で充電を済ませることができるのが、急速充電ステーションだ。英国では多くの場合、互換性のあるモデルであれば1時間以内に満タン近くまで充電できる。短距離移動が多い人なら、1~2週間に1度程度の充電でいいだろう。
しかし、急速充電ステーションは都市部よりも郊外に多く、充電のためにわざわざドライブが必要となる。また、急速充電を頻繁に行うとバッテリーの劣化が早まってしまう。そして当然ながら、急速充電にはお金がかかる。欧州の充電インフラ企業Ionity社などは、1kWhあたり69ペンス(約116円)と、従来のガソリン・軽油に遠く及ばない価格設定としている。
もう1つの選択肢として、パーキングメーターのような路上充電器が挙げられる。スマートフォン向けのEV充電アプリ「Zap Map」などを使えば、充電器の場所だけでなく、充電器の稼働状態もわかるようになっている。
ただし、充電速度は遅い。英国の家庭で一般的な3ピンタイプの3kW充電器が多く、例えばテスラ・モデル3の充電には24時間かかることになる。また、充電の時間制限はないようだが、エチケットとしてせいぜい数時間までとされているので、夜間や日中の仕事中に充電しっぱなしにすることはできないそうだ。
路上充電器には、街灯設置型のタイプもあり、簡単に言えば、ソケットと制御ユニットを備えた変圧器が街灯に取り付けられたものである。アプリを使ってアクセスし、通常3kWの低速充電が可能で、設置にかかるコストは低い。
イングランド南部のブライトン・アンド・ホーヴ市は、最近、住宅街に街灯充電器を200台設置した。しかし、必ずしもEV専用駐車場は併設されているわけではないので、当該スペースにエンジン車が駐車している場合もある。
料金については、プロバイダーによって異なるが、1kWhあたり26ペンス(約44円)程度が一般的である。また、月極めや年極めの契約が可能なところもあり、使用した電力量に応じて料金が安くなるシステムも導入されている。スマートフォンのアプリで利用できるケースがほとんどだが、RFID(Radio Frequency IDentifcation:充電器のロックを解除するためのカードやフォブ)を必要とするものも少数ながら存在する。
もう1つの充電方法として、商業施設の充電器を利用するというものがある。英国のスーパーマーケットでは、駐車場に充電器を設置している店舗が多く、無料で利用できるのが嬉しいところ。例えば、英国最大の小売店であるテスコはフォルクスワーゲンと提携し、店舗ベースで独自の充電インフラを構築している。
こうした施設では無料で使える7kW充電器が一般的だが、中には50kWと22kWの急速充電器が設置されているところもある。前者は1kWhあたり28ペンス(約47円)、後者は無料となっている。
自宅近くに公共充電器がない場合は?
先述の通り、路上や商業施設の充電インフラは日々改善されているが、公共の充電サービスが行き届いていない地域はまだたくさんある。どうしてもEVに乗りたいのであれば引っ越しを検討してもいいが、大変だしお金もかかる。EVのために住所を移せる人は多くないだろう。
そこで、地元の自治体に連絡して、充電器の設置を依頼するという方法がある。英国政府は、地方自治体向けに路上充電器の設置を支援する「路上住宅充電ポイント・スキーム(ORCS)」を実施している。自治体に問い合わせれば、予算があるかどうか、充電器を設置できるかどうかを教えてくれる。
実際に設置されるまでには時間がかかるが、それまでの間は充電器のシェアリングサービスを利用することもできる。英国には約25万台の家庭用充電ポイントがあるとされているが、それらがすべて同時に使用されているわけではない。自宅のウォールボックス充電器を他人に有料で使ってもらってもいいという人(ホスト)は、「Co-Charger」や「Plug-Share」といったスマートフォンアプリに登録すると、シェアすることができるのだ。
カーシェアリングや駐車場シェアリングと同じような仕組みだ。ホストは1kWhあたりの最低価格を設定できるため、価格はまちまちだが、公共の充電器よりも安いことが多く、アプリ上で価格の比較もできる。
最後に、上記のどの方法も使えない場合、モバイル充電サービスが残されている。例えば、Charge Fairy社では日産e-NV200を改造した特別車両を自宅まで手配し、EVの路上充電を行っている。この車両には大型の蓄電システムが搭載されており、素早く電気を送ることができる。
また、Charge Fairy社はスマートフォンアプリを通じて、ユーザーの利用状況をチェックして充電が必要になるタイミングを予測してくれる。充電不足になると充電チームが駆けつけ、充電を行うのだ。非常に長いケーブルを携帯しており、乗用車3台分離れた場所からも充電が可能だという。料金は週5.99ポンド(約1015円)で、最初の10kWh分は無料、その後は1kWhあたり63ペンス(約106円)となる。ただし、同社のサービスは現在、オックスフォード周辺エリアに限定されている。
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みんなのコメント
それでもマンションやアパートでは無理がある。
よって、日本ではまだまだ普及しない。