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【ヒットの法則442】プジョー308はプレミアム性を追求した新しいコンセプトのハッチバックだった

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【ヒットの法則442】プジョー308はプレミアム性を追求した新しいコンセプトのハッチバックだった

2008年、プジョーモデルとして初めて8世代目に突入した308が日本に上陸した。従来のCセグメントの枠を超えたボディサイズ、マッシブなデザイン、高い質感が注目を集めたが、その実力はどんなものだったのだろうか。Motor Magazine誌では弟分の207シエロとともに、308シエロのロングツーリングテストを行っているので、その模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年7月号より)

大きくなったボディはプレミアム化のため
プジョーのハッチバックラインナップの頂点であり、最新世代を示す8の文字を初めて末尾に与えられた308の、その立ち位置は改めて説明をするまでもないだろう。

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307に比べると全長は一気に80mm増し、そして60mmも幅広くなった308のボディサイズは今やフォルクスワーゲンゴルフのそれをも大幅に凌ぐもの。中でも、1860mmというLクラスのプレミアムセダンにすら匹敵する全幅には、このモデルで新たなる世界基準を構築したいという、最新プジョーが考える価値観が込められていることを教えてくれる。

かように大きくなった最新プジョー車のパッケージングデザインが、しかしハッチバックパッケージングの最大の価値であると長年に渡って信じられてきた「最小のサイズで最大のユーティリティ」などは、もはや理詰めに追い求めてはいないことも明らかだ。

308のデザインには、前述のように拡大されたサイズを明らかに「スタイリング上のお遊び」として用いているところも散見される。その最たるものはまずやはり、「猫科の動物」というデザインアイデンティティから生み出されたという、何とも独創的で表現豊かな、あのフロントフェイスに代表されると言って良いだろう。

207や407シリーズですでにある程度見慣れた感はあるものの、それでも改めて注視すれば、昨今の「プジョーフェイス」は極めて鮮烈、かつ大胆だ。そうした中にあっても、308の顔付きはさらに複雑なエレメントによって構成されていることに気づく。

またV字型の膨らみを持ちつつスラッと前方に伸びた長いノーズや、両サイドへと回り込んだリアウインドウを含めて開くちょっとギミック的な開口形状を持つテールゲートも、本来ハッチバック車が追い求めていたはずの「質実剛健」というキーワードからは、このクルマが一歩身を引いた存在である事を印象づける。

実際ラゲッジスペースは、後席使用時には348L、後席アレンジ時でも1201Lと、「よりコンパクト」なゴルフ(350/1305L。いずれもVDA測定法)の容量に及んでいない。そう、ハッチバックのパッケージングを採用していながらも、ある面「その特長を捨てた」のが308であるとも解釈できる。

このところ、モデルチェンジのたびにボディ大型化の傾向を示し続けるプジョーは、実は各モデルでそのスタンスが共通する。言うなれば、ハッチバックボディの起源である合理主義に別れを告げ、これまでは(MINIやフィアット500といった例外はあるものの)誰もが手をつけることのなかった「ハッチバックモデルのプレミアム化」に尽力し続けているのがプジョー社の戦略でもあるようにぼくには思える。

そんな同社の戦略を裏付けるかのように、目を惹くルックスが特徴的な308。そんなモデルでまた印象的なのが、各部質感の向上ぶりだ。

ひと昔、といってもそれは「205」や「405」の時代であったから、もうかれこれ軽く20年以上も前のハナシにはなるわけだが、当時のプジョー車は「走りは良いけどクオリティがね」と、およそそのように紹介されるものと相場は決まっていた。

まだ日本のFF車が、フロントヘビーに起因するアンダーステアや、それを打ち消すために硬められた脚がもたらすハードな乗り味に悩んでいた当時、まるでスポーツカーのような回頭性を見せつけ、「ねこ脚」なる例の言葉がズバリ納得できるしなやかなフットワークの仕上がりを実現させていたのがプジョー車の走りの典型であった。

一方で、電気系統を筆頭にその信頼性ときたら、まるで「日本車の7掛け程度」というのがオーナーの実感だっただろう。インテリアのクオリティも低かった。当時のプジョー車のオーナーには、内外のライバルとは一線を画した走りに惹かれた人が多かったに違いない。

が、308を見ると、そんなかつてのフランス車の特徴が 「今は昔」であることは明らかだ。中でも、インテリア各部の念入りなまでの質感の高さには恐れ入る。

一時期は、アウディ車と同等の際立つ上質ぶりを示したフォルクスワーゲン各車の見た目質感が、最近はちょっとばかり「戻した」感があることもあって、もはやゴルフと並べてもそうした部分には何ら遜色を感じない。時代はとことん変わったのだ。なるほど、そうした点では308はまさしく「新しい価値観を最大の売り物とするプジョー車である」と言えそうだ。

走りの質感も上々、静粛性も高い
そんな308と、弟分たる207を連ねて往復700kmのツーリングに出かけてみた。市街路あり、郊外路あり、高速あり、ワインディングあり、という行程で、日本上陸間もない308の実力と直下に位置する兄弟モデルとのテイストの違いを探ってみようという算段だ。

右ハンドル仕様で導入される日本の308シリーズ。そのドライビングポジションに違和感はない。かつては明らかに「右ハンドル市場はおざなりにされている」感が強く、時に足先がステアリングシャフトと干渉するような事態すら発生したプジョー車だが、もはやそんな心配事をしなくても済むのは、これもまた総合的なクオリティがアップしたことの一環と評価して良いだろう。

走り始めると、ひと昔前までのピンシャンとしたプジョー車の走り味とは異なることがわかる。とことん正確なステアリングの応答性や、追い込み舵に対するアンダーステアの弱さは今でも特筆レベルにあるが、極端と言えるまでの若作りな走りのテイストは、すっかり影を潜めている。

そんな随分と「大人びた走り」となったことを実感させる理由は、静粛性の高さにもある。相対的にはロードノイズが目立つものの、このクルマのクルージング時の静粛性の高さは、数あるハッチバックモデルの中でも、今やトップクラスにランクできるものと言ってよい。

ただし、そんな静粛性に対する好印象が高速道路を下りるとともに減じられたのは、相変わらず低速ギアを引っ張り気味とする傾向の強いプログラミングの4速ATの影響が大きい。

高速時には低いエンジン回転数のままアクセルONでしっかりとした加速トルクを発揮してくれる1.6Lのターボ付き直噴エンジンも、ひとたび市街地となるとこうして低いギアで高いエンジン回転数を選択しがちとなるトランスミッションのせいで、どうもせっかくの低回転トルクの強さを生かしきれない。

また、アクセル操作に対するトルクの現れ方の変化もやはり自然吸気エンジンに比べると全般に大きく、時に吸い込まれるような加速感を覚えるのも一度気になり始めると結構気になるポイントだ。

4速ATのプログラミングとアクセルゲインの変化の大きさという2つは、この先リファインを加えていってもらいたい部分。とくに、燃費面や商品性という点からも、この期に及んでATが4速という点は、やはり問題ナシとはいかないだろう。

フットワークのテイストは決して「ソフト」とは表現できないものの、今回同行の207シエロも含め、全般に「突っ張り気味」な印象が強かった最近のプジョー車としては、久しぶりに「ねこ脚」というフレーズも使う気持ちになれるものだった。

実は快適性に関しては、16インチのシューズを履く「プレミアム」グレードが、よりしなやか感に富んだ味わいの持ち主であることはすでに確認済み。「シエロ」ではわずかに気になるドラミングが、「プレミアム」グレードではスッキリ消えてなくなることも付け加えておきたい。

一方、308から同行の207シエロへと乗り換えるとサスペンションのストローク感が物足りず、フラット感に欠ける乗り味がどうしても気になる。実は207では、同時にステアリング中立付近での正確性も見劣りを感じてしまう。そんなわけで、フットワークの仕上がりで個人的な好みに合致するのは「完全に308」ということになるのであるが。

ところで、同じ308でもグレードによってフットワークの印象が微妙に異なることは述べたが、実はそれは静粛性の点でも同様。今回連れ出した「シエロ」でもクルージング時には満足すべき静粛性の持ち主だが、そんな好印象は「プレミアム」では一層だ。「プレミアム」の方が全般により厚いオブラートで包まれたような印象であったのは、あるいはルーフパネルがガラス製かスチール製かの影響も少なくないのであろうか。

「ハッチバックボディは若いユーザーのためのもの」と、どういうわけかこれまで日本ではそうした刷り込みが行われてきたキライがある。が、そんな概念は過去のものと葬り去り、同時に弟分である207に対してはさらなるプレミアム感の演出を強調した大人のハッチバックが308。そして、ゴルフなどとはまたテイストの異なるスタイリングこそが最大のアイキャッチャーとして生かされる。308は、そんなフレンチハッチバックなのである。(文:河村康彦/Motor Magazine 2008年7月号より)



プジョー 308シエロ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4315×1820×1515mm
●ホイールベース:2610mm
●車両重量:1410kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:140ps/5800rpm
●最大トルク:240Nm/1400-3500rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:4速AT
●車両価格:345万円(2008年)

[ アルバム : プジョー 308 はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

1件
  • 元オーナーです。
    この車の油圧式ステアリングフィールは、本当素晴らしいものでした。
    今のプジョー、デザインやパッケージングはさらに向上したものの、ステアフィールはマイナス傾向で寂しい印象を受けました>現行3008試乗時
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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