6月3~7日、イギリス領のマン島でオートバイレースのマン島TTレース決勝が行われ、シニアクラスはディーン・ハリソン(Silicone Engineering)がカワサキを駆り優勝を飾った。TT Zeroクラスはマイケル・ルター(TEAM Batham’s MUGEN)が優勝し無限が6連覇を達成している。
また、日本人ライダーとして唯一のエントラントであった山中正之(Team ILR / Mark Coverdale)は、スーパースポーツクラスのレース2を45位で完走、ライトウェイトクラスを23位で終えている。最多勝利は3クラス制覇したピーター・ヒックマンだった。
マン島TT:日本勢がTT Zeroクラスで表彰台独占の快挙。TEAM MUGENが1-2で6連覇達成
マン島TTは、1907年から同島の一般公道を舞台に行われている世界最古の二輪レース。1周約60.73kmの通称マウンテン・コースをタイムトライアル形式で競い合う。2019年大会も7クラス9レース、フリー走行と予選は5月25日から行われ、6月3~7日に決勝が開催された。
今年は開催期間中に悪天候の日が多くあり、セッションが行われなかったり、別日にレースが開催されたりした。決勝は1日から1日置きに4日かけて開催される予定が、3日間での開催となった。
クラスは気筒数などにより細かく分かれているが、大きく分類すると、最高峰が1000ccのスーパーバイク、1000ccで改造範囲が制限されるスーパーストックの2クラス。中量級は600cc4気筒、675cc3気筒などのスーパースポーツ、2気筒650ccのライトウェイトの2クラスだ。
他に600ccでサイドカー付き、ライダーとパッセンジャーのふたりが1台のマシンを走らせるサイドカー、走行時に二酸化炭素を一切排出しないゼロエミッションカテゴリーで、主に電動バイクが参戦するTT Zero、スーパーバイククラスの予選通過者のみ参加可能な、最終日の大トリ、シニアクラスの計7クラスが存在する。
このうちサイドカークラスとスーパースポーツクラスは2レース制で実施され、合計9レースが行われる。そのため2週間と長期間で開催されるが毎日走行枠が設けられているわけではないため、1周60.73km、200以上のコーナーがあるコースを習熟するのは至難の業だ。
また、ひとりのライダーが複数のカテゴリーからエントリーすることも可能で、排気量やメーカーの枠を越え走行する姿や急きょ代役で参戦する姿が見られるのも特徴のひとつとなっている。
決勝は最初のライダーがスタートしてからインターバルを10秒はさみ、次のライダーがスタートするタイムトライアル形式。しかしわずか10秒のインターバルで次々に走り出すことから単独走行になる場面は少なく、走行中は随所でオーバーテイクも見られる。
1日に6周で行われる予定だったスーパーバイククラスの決勝は、3日に順延し4周に短縮され開催。レースが3周目に入ったところでダレイ・マシソン(SK support)のクラッシュにより赤旗が掲示され、決勝は2周で成立した。
BMWを駆るヒックマン(Smiths Racing BMW)が34分08秒008で今年最初のレースを優勝。レースの平均車速は132.644マイル(時速約213キロ)で、2位がカワサキのハリソン(Silicone Engineering)、3位がホンダのコーナー・カミンズ(Milenco by Padgett's Motorcycles)と表彰台に3メーカーが並んだ。ベストラップはヒックマンが記録した17分01秒673だった。また、3周目にクラッシュを喫したマシソンは、帰らぬ人となり今年唯一の犠牲者となってしまった。
同日に4周で行われる予定だったスーパースポーツクラス決勝レース1は、降雨により2周で成立。リー・ジョンストン(Ashcourt Racing)がヤマハを駆り35分48秒337で優勝。山中はトラブルによりマシンをとめリタイアを喫した。
6日に2周で行われたレース2は、トライアンフに乗り換えたヒックマン(K2 Trooper Beer Triumph by Smith's Racing)が35分27秒780で優勝。山中は39分26秒670をマークし45位で完走している。
6日、3周で争われたスーパーストッククラスはヒックマン(Smiths Racing BMW)が52分02秒761でハットトリックを達成。ベストラップも17分08秒806、平均車速132.025マイル(約212キロ)でヒックマンが獲得。ハリソン(Silicone Engineering)は約26秒の差で2位に甘んじた。
次に、2周で行われたライトウェイトクラスは、昨年3勝を記録したマイケル・ダンロップ(Paton SC-Project Reparto Corse)がイタリアのパトンに乗り37分13秒161で優勝。ベストラップも記録し18分26秒574、平均車速122.746マイル(約197キロ)だった。山中はこのクラスにも出場し、41分05秒297で23位フィニッシュを果たした。
同じく6日には、TT Zeroクラス決勝も行われた。同クラスはバッテリー性能、容量の関係から周回数は1周のみ。このクラスはTEAM Batham’s MUGENのマイケル・ルターが18分34秒172で優勝を果たした。そしてジョン・マクギネス(TEAM Batham’s MUGEN)も2位に入り無限がワン・ツー・フィニッシュで6連覇を達成。平均車速は121.909マイル(約196キロ)で、コースレコードも更新。
また、昨年リタイアに終わったチームミライは、イアン・ロッカー(Team Mirai with ILR)が22分02秒697を記録し3位に入賞。日本チームが表彰台を独占する結果となった。
3日には、3周で行われたサイドカーのレース1、6日に2周でレース2が行われ、今年もベン・バーチャルとトム・バーチャルの兄弟コンビが両レースで優勝。レース1では昨年のタイムを更新する57分24秒005をマークし他を圧倒する走りを見せた。
そして、最終日となった7日に、2019年のマン島TTラストのレースとなるシニアクラスが予定通り6周で行われた。レースは1周目からヒックマン(Smiths Racing BMW)がリードし、4周目の終わりには2番手のハリソン(Silicone Engineering)と約18秒の差、3番手以降に約1分以上の差をつけていた。
しかし、5周目にヒックマンのマシンにトラブルが発生し、ハリソンが逆転し1時間43分49秒521で優勝。ヒックマンが2位でフィニッシュし、3位がカミンズ(Milenco by Padgett's Motorcycles)だった。マン島TTで多数の優勝を誇るマクギネス(Norton Motorcycles)、イアン・ハッチンソン(Honda Racing)は惜しくもリタイアしている。
ベストラップは自身の持つ歴代最速タイムを破ることはなかったが、16分51秒495、平均車速134.284マイル(約216キロ)でヒックマンが記録した。
今年のマン島TTは、天候不順により周回数が減算されたレースもあったが、ヒックマンが3クラスを制し、ハリソンはシニアクラスでカワサキに44年ぶりの優勝をもたらした。TT Zeroクラスでは日本チームが表彰台を独占する嬉しい結果となった。
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