5月のSATSUKIステージ、11月のKAGURADUKIステージと年2回、茨城県・筑波サーキットを舞台に行われているテイスト・オブ・ツクバ(T.O.T)が11月6日(土)・7日(日)に開催された。いまや日本最大の草レースと言っても過言ではなく、世界からも注目を集めているイベントとなっている。
新型コロナウイルスの影響で2020年のSATSUKIステージが中止となったものの、KAGURADUKIステージを無観客で、2021年のSATSUKIステージを各日1000人に制限して開催。今回は、新型コロナウイルスも落ち着いて来たこともあり、さらに制限を緩和し各日2000人とし、メーカー・ショップブースも数多く出店され、ほぼフルスペック。観客動員は、主催している筑波サーキット発表で土日合計で6600人となっていた。
チームカガヤマの加賀山がスズキ刀でテイスト・オブ・ツクバに初参戦し優勝飾る
開催クラスは、参加型から“鉄フレームでT.O.Tらしいフォルム”という、ほぼ何でもアリのHERCULESクラスまで、12カテゴリーに236台ものエントリーが集まった。カワサキZ1、Z2、Z1R、Z1000、スズキGS1000S、KATANAなど、今や超高級車とも言える旧車が元気よくサーキットを走っている。
こちらも高級車となっているホンダNSR250R、ヤマハRZ250Rなどのレーサーレプリカも2ストロークの甲高いサウンドを奏ながら、懐かしいカラーリングを施したマシンがズラリと並ぶ。参加して楽しみ、バイクを見て楽しむ。さらにブースには、掘り出しものやセール品もあり、バイク好きには、たまらないイベントとして定着している。
最高峰クラスとも言えるHERCULESクラスには、全日本JSB1000クラスで活躍中の加賀山就臣が参戦している。オリジナルのスズキKATANA 1000R 初号機を制作し、2018年のSATSUKIステージに初参戦し優勝。続くKAGURADUKIステージには、プロアーム化させた2号機で参戦し、こちらも優勝とレーシングライダーとしての速さを見せつけていた。
そして2020年のKAGURADUKIステージには、FIからキャブレターに、モノサスからツインショックにと、オートバイ的には、ある意味“退化”させたがTeam KAGAYAMAとしてT.O.Tのテイストを盛り込んだ3号機で登場したが2戦続けて優勝を逃していた。今回は、ハンドルをセパハンからバーハンにし、ポジションを見直し、細かい部分を見直して3号機で3度目の挑戦となっていた。
また、柳川明がRS-ITOHからカワサキH2Rで初参戦。スーパーチャージャー付きのモンスターマシンで、どんな走りを見せてくれるか注目された。
2日間とも晴天に恵まれ、コンディションも上々。公式予選では、加賀山が57秒786をマーク! これまでPOWER-BUILDERの山根光宏が持っていた57秒843のコースレコードをブレイクし、ポールポジションを獲得。2番手にH2Rを駆る光元康次郎が58秒054、3番手に全日本ロードST1000にも参戦している新庄雅浩が58秒379、4番手に岩﨑朗が58秒521と続き、柳川は、セッション後半にトラブルに見舞われながら58秒802まで詰め5番手につけていた。
12周で争われた決勝。ホールショットは加賀山が奪い、新庄が2番手につけ、岩﨑、光元、松田光一、柳川と続いて1コーナーを立ち上がっていく。続く第1ヘアピンのブレーキングでは、新庄が加賀山のインを突きトップに浮上! そのまま気合いの入った走りでトップをキープするが、加賀山も最終コーナーのブレーキングで抜き返す。
後方からは、前回のウイナー光元が3番手に上がると、加賀山が第2ヘアピン立ち上がりでリヤが振られたところを見逃さず、一気に2台をパスしてトップに浮上。ここからペースが上がり、トップ争いは光元と加賀山の一騎打ちになる。加賀山は、ファステストラップをマークし、光元をマークすると8周目に入るホームストレートで再びトップに立つ。前戦では、加賀山を抑え初優勝を飾った光元だったが、今回は第2ヘアピン立ち上がりでの加賀山の速さが際立ち、バックストレートでかわすことができない。そのまま加賀山がトップをキープしゴール。2018年KAGURADUKIステージ以来、3回目の優勝を飾った。
「前回、前々回とH2Rに負け越していたので、何とか勝とうと挑戦しました。コースレコードは、初出場のときから狙っていましたが、T.O.Tのレベルが高く手が届きませんでしたが、今回ようやく3年目にしてレコードを出すことができて素直にうれしいです。ウチのメカが作ったオリジナルKATANAのポテンシャルを証明できてよかったですね」と加賀山。
加賀山は、今回、KATANAミーティングを企画。約100台ものカタナ乗りが集まり、初めてサーキットを訪れた人もいたそうだ。
「T.O.Tをより盛り上げたいとKATANAミーティングを企画しました。ひとりでも多くレースに興味を持っていただき、サーキットへの来客につながれば、いいと思いましたし、実際に楽しんでもらえたようで、よかったです。何よりKATANAで勝つ姿をお見せできたことが、うれしいですね」(加賀山)
気合いの入った走りを見せた新庄は、マン島で2013年に亡くなった松下ヨシナリの意志を継ぎ、松下が乗っていたマシンで参戦を続けている。当時からマシンはアップデートして来ているが、基本的に市販されているパーツのみの構成で、ベースもZRX1200Sとカスタムの領域で仕上げられている。
「とにかく前に出ないと勝機はないと思っていましたが、全力は尽くしました。マシンは、市販されているパーツのみで制作しているなかでは、すごくいい仕上がりになっていると思います。実は今回はアメリカからパーツを取り寄せたのですが、それが不良品で使えなかったんですよ。なので次回に楽しみは持ち越しです」と新庄。
そしてT.O.T初出場の柳川は5位でゴール。何と溝付きのスポーツタイヤでのレースは、1990年のSP250時代以来だったと言うから、それも驚きだ。
「パッと来て勝てるようなレースではないことが分かりました(笑)。マシンのセットアップも時間がなかったですね。溝付きタイヤは経験がないので、どこまで攻めていいか分かりませんでしたし、パーツもないので絶対転倒できない状況でもありました。初めてT.O.Tに参加させてもらいましたが、マシンを降りてバイクを見るのもおもしろいですし、すごく盛り上がっていて、おもしろいイベントだと思いました」と柳川。
1993年ロードレース世界選手権250ccチャンピオンの原田哲也氏の姿もあった。自身も2年前にエントリーしていたが、マシントラブルで思うように走れずに終わっていた。そのときにお世話になったマジカルレーシング蛭田貢代表の応援に駆けつけていたのだが“このスタンドはオレのだから。持ってみなよ”と渡してくれたのだが、フルカーボンでホントに軽かった。
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