「オーラ」今までにない商品コンセプト
text:Kenji Momota(桃田健史)
【画像】ノートよりも「プレミアム」【ノート/ノート・オーラ/ノート・オーテックを比較】 全172枚
photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)
editor:Taro Ueno(上野太朗)
「よくこの企画が日産社内で通ったな?」
日産が導入したノート・オーラについて、そんな感想を持つユーザーは少なくないのではないだろうか?
まるでノートとは別のクルマのような雰囲気がある、日産の新型車だ。
日産が作成した オーラに関するマーケティング戦略の資料を見ると「オーラは今までにない商品コンセプトで、まったく新しいブランドとして新顧客を獲得する」という強気のメッセージが記載されている。
ロゴの表記でも、オーラという大きな文字の上にノートがちょこんと乗っかっているようなイメージであり、「ノートとは別物」という訴求を心掛けている。
そのうえで、ノートは、「コンパクトカーの常識を変える運転の快適さと楽しさが詰まった、先進コンパクト」。
一方、ノート・オーラは、「新時代の電気の走りと上質さを纏った、プレミアムコンパクト」。
ノートでは使っていない、「プレミアム」というキーワードを全面的に出した。
それにしても、なぜ日産はこのタイミングでオーラという発想を市場導入することになったのか?
背景には、コンパクトカーのみならず、自動車のカテゴリー全般が大きな転換期を迎えていることが関係していることは明らかだ。
トヨタSUVで攻勢 対する日産は?
カテゴリーの転換として大きな影響はグローバルでのSUVシフト。
これが巡り巡って、オーラという企画に結び付いたと考えられる。
日本におけるSUVシフトは2010年代に入ってから始まり、2020年代に入りその勢いが加速している印象がある。
中でもトヨタのSUVフルラインナップ化が目立つ。
アメリカで先行発売されたRAV4が日本市場で復活し、カー・オブ・ザ・イヤーを獲得。
RAV4をベースとしたプレミアムSUVとしてハリアーがフルモデルチェンジした。
小型車ではAセグメントよりのBセグメントとして、ダイハツの新プラットフォームDNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を採用したダイハツ・ロッキーの兄弟車としてライズが登場。
さらに、ヤリスのSUVバージョンであるヤリス・クロスが人気を博している状況だ。
それでもトヨタのSUVシフトはまだまだ終わらず、ランドクルーザーが中東のUAEでワールドプレミアされ、東南アジアに次いでアメリカでの発売が始まったカローラ・クロスの日本上陸のうわさも絶えない。
そもそもモデルラインナップが豊富なトヨタが、SUVでモデル拡充を急ぐ中、当然日産も新型SUVを含めた多様な新車開発を急いできた。
その全容は2020年5月に公開された4か年の構造改革プラン「ニッサン・ネクスト」で明らかになったが、そこにオーラはいなかった……。
SUVに力を入れる日産 なぜ「オーラ」?
ニッサン・ネクストでは、2020年5月から18か月間に、キックスeパワー、パスファインダー、エクストレイル、アルマーダ、マグナイトなど新型SUVが続々登場するも、日本市場導入される新型SUVはキックスとエクストレイルに留まる公算が強い。
ノートもニッサン・ネクストにおける新車ラインナップの重要車種の1台だが、オーラという商品企画の発想は示されていない。
むろん、プレミアムという観点からはインフィニティの拡充は図るとしていたが、まさかプレミアムコンパクトに参入するとは驚きだ。
新型ノートについてこれまでの日産の動きを振り返ってみると、横浜の日産スタジアムで行われた事前撮影会や、オンラインで開催されたeパワーに関する技術説明会など、2020年後半からこれまで、ノートに関するメディア向けの様々な機会でオーラ登場に関する前兆を感じ取ることはできなかった。
オーテックバージョンがあるとか、eパワーの発電機用エンジンがこれまでも1.2Lより大型化するバージョンが市場導入される、といった話は各種会合で情報が漏れてきたのだが……。
ノートのデザイン企画について担当者に聞いた際も「ノートについて、キックスをイメージするような腰高のSUVっぽい商品企画はない」と話していたのだが、まさかオーラが出るとは……。
日産の新戦略 どう出るか?
今回、まさにサプライズとして登場したノート・オーラは、前述ように「まったく新しい商品コンセプト、まったく新しいブランド」という、日産として大仕事なのだ。
グローバルでSUVシフトが進む中、日産としてはSUV以外のカテゴリーでも新生日産としての存在価値を強調するモデルが必要だ。
では今後、オーラを皮切りに日系メーカーによるプレミアムコンパクト競争が始まるのだろうか?
可能性としては、新型マツダ2がある。
マツダの場合、レンジエクステンダーEVというプレミアム化が考えられる。
ホンダの場合、フィットはすでに多様なカテゴリーを導入しており、ここにプレミアムブランドを追加するというイメージではないだろう。
ヤリスについては、ヤリス・クロスという派生車や、GRヤリスというスーパースポーツコンパクトがヤリスブランド全体をけん引している現状で、ヤリスのプレミアム化という発想には結び付かないはずだ。
こうしてあらためて日系メーカー各社のコンパクトカーの実情を俯瞰していると、オーラの特殊性が浮き彫りになり、結果的にオーラ独り勝ちという予想も成り立つ。
日産のマーケティング資料には、日産がオーラのライバルとして想定しているのは、「MクラスHEV」(プリウスを想定?)と輸入車である。
果たして日産の新戦略、吉と出るか?
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みんなのコメント
ダッシュボードやドアトリム等のパネル自体を新造して質感を高めなきゃ。
この遣り方はキックスと同じで、元のチープ感を消せてない。
堕ちたなあ!