もくじ
ー BMWからはリタイア 次のステージへ
ー 常に自問自答 現場に真実
ー 社会貢献にも活躍 リスクは恐れず
「自動車産業で最も力のある英国人」 BMW AG上級副社長 引退前のインタビュー
BMWからはリタイア 次のステージへ
BMWにとっての10年で最高のときをセールス&マーケティング担当責任者として過ごし、その前にはロールス・ロイスの会長と、ランドローバーで取締役を務めたイアン・ロバートソンだが、正式にBMWからリタイアした彼は、議会の目と鼻の先に新たなオフィスを構えている。
オフィスを設けた理由について、彼は多くを語ろうとしないが、明らかなのはロバートソンが一般的な意味での引退など考えていないということだ。常に一歩先を行き、ポジティブさに溢れ、用意周到な英国が誇るこの素晴らしい才能は、その能力を然るべきところで発揮しようとしているのだ。
われわれもこの生涯功労賞を贈呈するにあたり、これが彼のキャリアの終わりではなく、単に次のステージへの移行にしか過ぎないことはわかっている。
38年間にわたる自動車業界におけるキャリアを通じて、ロバートソンはあらゆる角度からこの世界を見つめて来た。新卒のトレイニーとして入社したランドローバーでは、昇進に伴い工場や部門の責任者を務め、最後にはトップにまで上り詰めた。この間、ランドローバーのオーナーは次々と変わっていったが、彼は会社を離れることなく、常に顧客のためにより良いクルマを作り出すという、明快なミッションを追い求め続けた。
常に自問自答 現場に真実
「キャリアを通じて、工場からクルマが出荷されているのを見ながら、お客様にとって最高の製品を送り出すために、ベストを尽くしたかどうか、常に自問自答していました」と彼はいう。
オスウェストリーで生まれ、一族で初めて大学で学んだロバートソンだが、その広範な経験と知識が、キャリアにおいて彼の助けとなった。ロールス・ロイス在籍中、同僚が持ち込むどんな問題も即座に解決することで、彼らを憤慨させたことを彼は覚えている。
「彼らが知らなかったのは、わたしが常に工場のなかを歩き廻って、そこで働く様々なひとたちと話をしていたということです」と彼は笑顔で話す。「何が起こっているのかを知りたければ、工場のひとたちに聞けばいいのです。このやり方で、どんな問題も最初にわたしの耳に入ったので、先に解決策を考えることができたのです」
社会貢献にも活躍 リスクは恐れず
彼はまた、一時期政治の世界にも繋がりを持った。この話を聞くにはしつこく頼む必要があるが、最後には、彼が20世紀から21世紀にかけてBMW南アフリカのトップを務めていた当時、ネルソン・マンデラ元大統領との間で結んだ友情について明かしてくれることだろう。
世界基準のBMWの車両生産工場を立上げながら、ロバートソンとBMWは、様々な社会的プロジェクトに参画したが、彼はこのことを誇りに思っている。「職業人としても、一個人としても、あれはわたしの人生でかけがえのない時間でした」と彼は話している。
最近の例で言えば、ミニのラインナップをより大型モデルにまで広げる必要に直面したときや(大型モデルなくして、ミニはブランドにはなれなかっただろう)、i3とi8で始まったiブランド導入を主導したときなど、ロバートソンがリスクを恐れたことは一度としてなかった。販売数も重要だが、強いリーダーシップで冷静に対応すれば、こういったモデルに対する批判にも惑わされることはない。
「iブランドの立上げはすべてがこれまでと違っていました」と彼はいう。「われわれは、全く新しい方法で、クルマの製造と販売を行ったのです。非常に大変でしたが、その価値はありました」
最後の一言に、ロバートソンのキャリアを通じての信条が表れている。彼にとっての引退とは、他のひとにとってのハードワークと同じ意味のようだが、これまで同様、ロバートソンはこれから起きることにワクワクしている。
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