この記事をまとめると
■デコトラにまつわる専門用語を紹介する本企画
令和時代にも細々生き残っていた! 一世を風靡した「水中花シフトノブ」のいま
■今回のテーマはフロントバンパーだ
■舟型、キャデラック、ラッセル、ラッセル戻しについて解説
舟型・キャデラック・ラッセル・ラッセル戻しとは!?
本テーマの前回(第1章)では、デコトラの仕上がりを大きく左右するバイザーとシートデッキを解説した。今回は、デコトラにおけるマストアイテムとも言えるフロントバンパーについて、考察してみたい。
デコトラの雰囲気を決定づけるフロントバンパーにおいては、実用性など皆無だと言ってもいい。せいぜいが、フロントガラスを拭くときの足場になるといった程度だろう。つまりは、当初から飾りとして愛されてきたものとなる。そんなフロントバンパーには舟型、キャデラック、ラッセル、ラッセル戻しと呼ばれるデザイン(カスタムスタイル)が存在する。それらの由来と内容について、触れてみよう。
舟型バンパーとは箱型タイプのフロントバンパーであるのだが、正面の中央部分が尖った形状を持ち、コーナー部分を落としたデザインが一般的となっている。船首ほどの鋭い角度ではないのだが、その形状をトラックに採り入れたのだ。荷物を運ぶトラックは、旧くから陸の船と位置づけされている。だからこそデコトラ野郎たちは「○○丸」という愛称(ニックネーム)を相棒に与える風潮があるのだが、飾りにも船がイメージされているのだ。フロントバンパーだけではなく、中央部分を尖らせた「舟型バイザー」が存在すれば、シートデッキの最上部を船首のように尖らせる人も多い。しかし現在では正面部分がフラットな形状であっても、コーナー部分をカットしたもの全般を舟型バンパーと呼ぶ傾向にある。しかしそれでは舟型の意味をなしていないため、誤った見解であると言えるだろう。
キャデラックバンパーとは、アメ車のキャデラックのように、両端と中央部分を突出させたもの。上から見たときに「山」の字のような形状になっているのが特徴だ。その凹凸部分に電飾を組み込んだアンドンやフォグランプなどをレイアウトするのが、定番のスタイルとなっている。そんなキャデラックバンパーを斜めにし、ラッセル状にしたものをラッセルバンパーと呼ぶ。そしてラッセル戻しとは、そんなラッセルバンパーの下部を手前方向へと戻したもの。ラッセルカットとも呼ばれた時期があるのだが、こうすることで地面との干渉を避けることができるのだ。このラッセル戻しは、過激な飾りを好む愛好家たちに好まれている。
突然ラッセル戻しなどと言われても理解不能であるが、こうして3つの車輌(画像)を並べてみるととてもわかり易く単純なネーミングであるということが、おわかりいただけたのではないだろうか。さらには巻き込みを防ぐために取り付けるサイドバンパーや後部を彩るリヤバンパーという飾りも存在するのだが、それらも読んで字のごとくである。
派手な装飾を施すデコトラであるが、シートデッキやバイザーは実用性を考慮して開発されたパーツが進化したもの。しかし、フロントバンパーのみが当初から飾りとして生み出されて発展してきたということが理解できる。それほどまでに、フロントバンパーはデコトラ野郎たちにおけるマストアイテムなのだ。
現在の中型車や大型車では、フロントバンパーにヘッドライトがセットされている。そのためオリジナルのフロントバンパーを製作することが難しくなってきたが、純正バンパーを前方へと大きくせり出させるスタイルも見受けられる。そんなスタイルを前出しバンパーと呼ぶのだが、そもそも仕事をするトラックを派手に飾るという時代ではなくなってきた。巷で「デコトラを見なくなった」という言葉をよく耳にするかもしれないが、それはデコトラ文化が衰退しているということを指し示しているのではなく、デコトラの定義や飾り方そのものに変化が生じてきたからである。
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いまどき仕事車でそんな装飾は流行らないし、バンパーにライトだけではなくレーダー等も組み込まれている最近のトラックでは純正形状のバンパー以外は装着できない。