この記事をまとめると
■GMのブランドのひとつでもある「ビュイック」の立ち位置はかなり微妙
全部知ってたら「車神」レベル!? 日本人のとっての「どマイナー」自動車メーカー8選
■中国では人気がありラインアップも豊富だ
■近年はアメリカ国内でも見かけるようになった
シボレー以上キャデラック未満という微妙なブランド
GM(ゼネラルモーターズ)には現状、シボレー、キャデラック、GMC、ビュイックの4ブランドが存在する。シボレーがコンパクトモデルからフルサイズピックアップトラックまで広くカバーする総合ブランド、キャデラックが高級ブランド、GMCがトラック&SUVに特化したブランドとなっている。しかし、残されたビュイックブランドの立ち位置はかなり微妙ともいえよう。調べてみると「シボレー以上キャデラック未満」という立ち位置ということになるようだ。
GMのなかでキャデラックとほかのブランドの格差というのは、日本におけるトヨタとレクサスの関係以上に決定的なものとなっている。20代のころ(1990年代後半)、南カリフォルニアでキャデラックのレンタカーが安く借りられるということで日本から予約したことがある。車種はコンコースでFFだが昔ながらのキャデラックスタイルをもつ大型セダンであった。
友人と借りたのだが、ふたりともTシャツにGパン姿であり、レンタカー会社で手続きをしていると、まず担当の女性に「マジで借りるの?」的な言葉をかけられた。その後、フリーウェイを流していると、渋滞などでノロノロ運転をしているとき、筆者の乗っているキャデラックのそばを通り抜けた白人のアメリカ人が、アジア人がキャデラックの運転をしていることに驚いた顔をしていた。それだけ、アジア人の若い男(当時)がアメリカでキャデラックの新車を運転することは「場違い」だったのである(自動車窃盗団かと思われたようである)。
そう考えるとビュイックは、キャデラックには乗ることがはばかれる一般大衆のなかで、「ラグジュアリーなクルマに乗りたいなぁ」という人に向けたブランドなのかもしれない。ただ、近年ではセダンはおろかハッチバック車やクーペのラインアップはなく、SUVがラインアップされているのみだ。
2008年にかなりミニバン色の強い3列シートをもつ大型クロスオーバーSUVとなる「アンクレイブ」が登場すると、それが看板車種となった(いまアメリカのファミリーカーで主流となっている、3列シートをもつ大型クロスオーバーSUVの元祖ともいえる)。
アンクレイブは2025年モデルとしてデビューした最新型で3代目となるが、モデルチェンジを繰り返すたびにSUV色を強めていき、3代目ではベタベタなクロスオーバーSUVデザインのモデルとなった。
中国ではプレミアムブランドとして大成功
2000年代前半あたりからビュイックブランドはアメリカ市場よりも、中国市場のほうでより高い人気を博すようになった。2000年には、ほぼ中国専売といっていい形でフルサイズミニバンとなる「ビュイックGL8」の初代がデビュー。以降、現行モデルで4代目となるが、ラグジュアリーミニバンの先駆車としていまもなお中国におけるビュイックの看板車種となっている。
ビュイックブランド車はアメリカでは4車種のみのラインアップとなっているが、中国ではモデルラインアップが細かく同条件でカウントできないが、12車種ほどラインアップされ、アメリカ市場では存在しないPHEV(プラグインハイブリッド車)やBEV(バッテリー電気自動車)も豊富に取り揃えている。
このような状況なので、いつしかアメリカでも「ビュイック=中国向けブランド」のような印象をもつようになった。南カリフォルニアではせいぜいアンクレイブをパラパラ見かける程度だったが、2024年秋に南カリフォルニアを訪れると、ビュイック車を2023年と比べても結構な頻度で見かけることができた。
街なかでよく見かけるのは、トヨタRAV4クラスのサイズとなるクーペSUVスタイルを採用する「エンビスタ」と、コンパクトクロスオーバーSUVとなる「アンコール」の2台。ビュイックは2024年モデル(2023年秋より発売)にて、アンコールとエンビスタの上級車となる「エンビジョン」をビッグマイナーチェンジし、エンビスタと共通イメージの顔つきに変更しているので、それもあってビュイック車が目立つように見えたのかもしれないが、この顔つきになってから、アメリカ人消費者のなかでも好んで乗る人が出てきているように見えた。
ただし、GMのなかのビュイックというアメリカンブランド車となるが、生産はアメリカやカナダ、メキシコでもない。アンコールとエンビスタは「GMコリア製」、つまり韓国製となっている。エンビジョンについては実車で原産国表示を探したのだが見つけることができず、調べてみると「上海通用(上海GM)製」つまり中国製となっているようである。エンビスタの兄弟車ともいえる「シボレー・トラックス」、アンコールの兄弟車「シボレー・トレイルブレイザー」もアメリカではGMコリア製が販売されている。
筆者は2024年秋に南カリフォルニアを訪れてレンタカーを借りるときに、「あっ シボレーのクルマがある」としてセレクトしようとしたのだが、それがシボレー・トラックスだと気がついてすぐやめた(アメリカ生産のアメリカ車に乗りたかった)。
GMでは、アメリカ国内工場で生産した車種については、運転席ドアのラッチ部分にそれぞれの工場で異なったデザインのシールが貼ってあるので、同じGM車でもアメリカ国内製か否かをすぐに判別することができる。それだけGM車を買う人は自国生産か否かにこだわるのかもしれない。
そう考えると、いまどきビュイック車に乗るユーザーというのは、アメリカンモデルに乗っているというよりは、海外ブランドモデルに乗る感覚でいるのかもしれない。
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みんなのコメント
過去にアメリカは大統領選挙の度、「BUY AMERICAN!=アメリカ製品を買おう!」と言ってましたよね(笑)
トランプと習近平が会談した際には、習近平は「中国人はアメリカ車好きでよく買ってますよ」ってリップサービスするんだろうか? 日本人は欧州車にしろアメ車にしろ製造国が何処かに拘る、せっかく高い金出して買った「外車」が…C国やK国製では納得出来んだろー(笑)
特に外車を買う購買層は欧米コンプレックスが強いから、CとK国製では絶対に納得しないです。自分も第三国製の欧米外車買うくらいなら、ジャパンファーストで国産車買いますよ。(笑)
ボディが大きい割に価格がそこそこで、それなりに快適という実用性のクルマだったのだろう。
国民のカネで買うのにキャデラックでは贅沢すぎるという、革命家らしい感覚だったのだろう。