2023年に22戦中21勝を記録し、圧倒的な強さでダブルタイトルを獲得したレッドブル。そんなレッドブルが、ニューマシンRB20に大きな変更を施してきたことが、大きな注目を集めている。
昨年ほどの強さと安定性があれば、大きな変更を行なわず、キープコンセプトで行こうとするのが、人の常のようにも思える。しかしレッドブルはアグレッシブな開発を行ない、サイドポンツーンやエンジンカウルのデザイン、冷却用の開口部のレイアウトなど、独創的なアイデアでライバルのさらに一歩先を行った感がある。
■レッドブルRB20の”超攻めた”デザインに、ホンダ/HRCが果たした役割。角田哲史LPL「エンジンの熱限界を上げることで、間接的に貢献できているはず」
マシンの外見が注目されがちではあるものの、このデザイン変更を可能とするためには、マシン内部を大きく変更しなければならない。今回施された変更は、実に魅力的であると言える。ボディワーク下に普段は隠されている冷却用のレイアウトを変えなければ、いくらデザイナーがマシンの形状を変更しようとしたとしても、その実現は不可能だったはずだ。
昨年型RB19と比較すると、RB20はラジエーターやクーラーのレイアウトに、大きな変化が起きていることがわかる。これはサイドポンツーンだけでなく、エンジンカバー内も含めてである。
その変化をご理解いただくため、まずはRB19のボディカウル下のレイアウトを説明しよう。
RB19はどうなっていたか?
ここ数年、レッドブルは冷却に関する機器を、車体の中心線付近に集約しようとしてきた。特にサイドポンツーンの肩にあたる部分を小型化するために、ホンダ製のパワーユニット(PU)の上に、サドルスタイルのクーラーを置く形が主流となっている。
ただこれは決して新しい考え方というわけではなく、他の多くのチームも、長年にわたってこの方向性を模索してきた。
しかし実際にこの方式を取り入れたチームは、大多数というわけでもない。PUの上は、クーラーを配置する上では賢明な場所と言うこともできるが、重心のことを考えれば、必ずしも最適ではないかもしれない……そんな可能性もある。
とはいえレッドブルは、エンジンカウルとサイドポンツーンの間で、収納する機器を移動させることを考慮してきた。PUの上にサドルスタイルのクーラーを置くという手法を採ったのも、その考慮の一部である可能性がある。
このことは空力面の目標を達成するだけでなく、冷却性能に必要なニーズを満たし、マシン全体における重量配分を改善するためでもあったはずだ。
RB20のボディカウル下は激変
さて今年のRB20を見てみよう。PUの上に置かれたクーラー(白い矢印)のサイズは、RB19に対して縮小。サイドポンツーン内部に置かれたラジエーターとクーラーのレイアウトにも大きな変更がある。
RB20のレイアウトでは、チャージクーラー(赤い矢印)とラジエーター(青い矢印)が、V字型になって重なるように配置されている。これにより、サイドポンツーンの下に深いアンダーカット(抉れた部分)を生み出すのを可能としているわけだ。
ただラジエターとクーラーをV字型に配置する方法は、新しいことではない。最近ではハースの2017年型マシンVF-17でこれを採用。また2004年のザウバーC23でも、似たような手法が採られた。
さてRB20が特異な目で見られているのは、ヘイローの付け根部分にも開口部があるためだ。この開口部も気流を取り入れるための存在しているのは間違いなく、RB20の冷却には別の武器がある可能性がある。
このヘイロー付け根部分の開口部から取り入れた気流は、ダクトを通ってエンジンカウル側面のルーバー(緑の矢印)に接続されている。しかしそのダクトは、ハウジングのようなモノを経ており、そのハウジングの内部に小型のクーラーが存在する可能性もあるように思われる。
またリヤエンドに目を向けると、エンジンカウルの砲塔のような肩口の段差後端に開けられた開口部から、熱を排出している。しかし、排熱用の箇所はこれだけではない。
エンジンカウルの後方、リヤサスペンションの前に開けられている小さな開口部も、排熱に関して補助的な役割を担っている。また、ヘイロー付け根の外側には、交換可能なパネルがあるように見える。ここも、暑い時期などにはルーバースタイルのパネルに交換され、排熱用の開口部になるはずだ(テストでは閉じられていた)。
また、サイドポンツーン上面に存在する溝の中に、開口部を設けるオプションも存在している模様だ。
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