コンパクトボディにパワフルなエンジンで走り屋を魅了
1989~1996年に生産されたEP82型トヨタ・スターレット。最高峰グレードのGTは800kgを切るボディに1300ccながら135psのエンジンを搭載し、排気量では格上になるシビックなどテンロク勢と互角に渡り合える逸材として人気だった。峠やサーキットで見る機会はめっきり少なくなったが、当時の走り屋とチューニング業界を大いに賑わせ、今もなお記憶が色褪せない名車を、チューニング誌「ヤングバージョン」の記事を交えて振り返ってみたい。
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先代から進化しチューニングベースとして魅力アップ
先代のEP71も『かっとび』や『韋駄天』といった異名を持ち、NAのワンメイクレースを含めモータースポーツで人気を博していた。それがEP82になり車重は少し増えたものの、パワーは従来の105psから135psへと向上。ボディ剛性アップやブレーキの4輪ディスク化もあり、チューニングのベースとしての魅力がさらに高まったのだ。
当時のライトウエイトは絶対王者のシビックを筆頭に、レビン/トレノにミラージュなどまさに群雄割拠。しかしスターレットは排気量こそ300ccのハンディキャップを持ちながら、それを補って余りある『ターボ』に『軽さ』という武器が与えられていた。
王道のチューニングとしてはやはり軽量化。リヤシートや不要な内装を取り払いFRPボンネットに交換、本気組はパワステやエアコンなど快適装備を外すのも躊躇せず。サーキットでは600kgに迫るレベルまで削ぎ落とした車両も珍しくなく、ブーストアップでも1600ccクラスと互角かそれ以上の戦闘力を誇った。
さらに上を目指すならタービン交換だ。1300ccという小さめな排気量にはTD05やK24がよくマッチし、ECUを書き換えパワーは180~200psが目安と言われた。こうなると1600ccどころかシルビア/180SXといった、2000ccターボのライトチューン勢にも引けを取らない。峠やミニサーキットで若干の扱いにくさは顔を出すものの、強烈なトルクステアをねじ伏せつつ自在に操るのが、EP82乗りの醍醐味でありウデの見せどころでもあった。
カローラIIのエンジンスワップでパワフルに
そして究極といえるのがターセルやカローラIIの5Eエンジンを使い、排気量を1500ccに上げてタービンのサイズも大きくした仕様だ。TD06やK26を使いインジェクターや燃料ポンプも大容量化し、ノウハウのあるプロショプがECUを現車セッティングすれば、230~250psまでパワーを引き上げることが可能だった。排気量が増えたおかげで低回転域のトルク不足もだいぶ解消、プロフィールが違うサイノスβの純正カムを流用するのもお約束。
ココまでくると軽さが牙を剥くときもあるが、ハマったときの速さは強烈のひと言だった。足まわりは各メーカーから車高調が販売されていたし、TRDのワンメイクレース用もサーキット派には大人気。ただしホイールベースが短いため上手にターンインさせるのは難しく、ブレーキを残さないとノーズが入らずアンダーステアが出まくり、残しすぎるとリヤが唐突にスライドしスピン状態に陥ってしまう。
またパワーを上げるほどピーキーな特性、いわゆる『どっかんターボ』へと変化する。ただし荷重移動やアクセルワークの練習にはピッタリで、文字どおりドライバーを育ててくれるクルマだったのだ。
NAでも運転する楽しさが存分に味わえた
廉価グレードのNAも素材としては魅力的で、バランスのよさならターボより上との声も。コチラの教科書はモータースポーツの登竜門といわれたワンメイクレース車両で、部品取り車を買い車高調やロールケージを移植したナンバー付き車両も多かった。
若者でも手が届くリーズナブルさとチューニング手段の豊富さ、格上のマシンを食う下剋上と暴れ馬を乗りこなす醍醐味。多くの走り屋が夢中になり専門店も多くあったEP82スターレット、1990年代のチューニング界を牽引する名車であったことは確実だ。
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みんなのコメント
確かにサーキットでチューニングしたEP82なら、上のクラスのノーマル車とそこそこ走れたかもしれないが、峠じゃ上のクラスもイジってるので勝負にならなかった。
当時はガチ勢たくさんいたし、峠でもサーキットでも速いクルマ作るのにカネ掛けてたからね