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エンジン版と共有部品ナシ! ポルシェ・マカン・エレクトリックへ試乗 ちゃんと「らしい」 航続500km以上

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エンジン版と共有部品ナシ! ポルシェ・マカン・エレクトリックへ試乗 ちゃんと「らしい」 航続500km以上

アウディとプラットフォームを共同開発

このSUVへ求められる当面の使命は、電気で動く「ポルシェ」の「マカン」であること。実際のところ、簡単ではない。

【画像】怒エンジン版と共有部品ナシ! ポルシェ・マカン・エレクトリック サイズが近いSUVと写真で比較 全173枚

内燃エンジンで走るマカンには、クラス最高の動力性能に、家族が快適な車内空間、長距離旅行との親和性、718ケイマンを過度に羨ましがらずに済む運転の楽しさという、多能性が求められてきた。目立った弱点はないといえた。

しかし、バッテリーEVでは条件が違う。航続距離、価格、車重という避けがたい課題がある。2026年に引退予定の、エンジン版へ匹敵する訴求力は備わるだろうか。一般道での試乗で確かめてみよう。

ポルシェは、理想とする電動マカンを創出するうえで、新しいプラットフォームが必要だと判断した。それが、プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック(PPE)と呼ばれるもの。見た目は似ていても、既存モデルとは技術的に完全な別物といっていい。

同社の技術者、ヨルグ・ケルナー氏によれば、部品は1つも共有していないとか。ボンネットに添えられる盾型のエンブレムですら、異なるらしい。

PPEはアウディと共同開発され、同社のQ6 e-トロンの基礎骨格にもなっている。2026年に発売予定の、電動カイエンにも登用されている。2030年までに販売の8割をバッテリーEVにするという目標へ、ポルシェは着実に歩みを進めている。

同社の総売上の半分以上を、現在はマカンとカイエンが稼ぎ出している。極めて重要な縁の下の力持ちとして、PPEは機能する。

バッテリーは95.0kWh 航続距離は500km以上

正式名称は、マカン・エレクトリック。当初設定されるグレードは、「4」と「ターボ」の2種類だ。

前後に駆動用モーターが載るが、4のユニットはボッシュ社製で、システム総合405ps。ターボは、リミテッドスリップ・デフ内蔵のポルシェ独自ユニットで、総合639psを発揮する。

搭載位置は、各アクスルの後ろ側。Q6 e-トロンと技術的に異なる部分の1つで、ポルシェ911の伝統を汲んだもの。情感豊かな、操縦性を得るカギとなる。ちなみに、シングルモーターの後輪駆動仕様も開発途上にあるそうだ。

駆動用バッテリーは角柱状のセルで、容量は95.0kWh。航続距離は、ターボが518-590km、4では516-613kmがうたわれる。制御電圧は800Vで、急速充電能力は270kWに対応し、理想条件なら10-80%補充を最短21分でこなせる。

急速充電器の電圧が400Vの場合、駆動用バッテリーを2分割で管理。それぞれ135kWで充電するという、バンクチャージ機能も備わる。

ポルシェのインテグレーテッド・パワー ボックスも新しい。AC充電器とヒーター、12Vのコンバーターが統合された機器で、リアシートの下へ載っている。これにより、ボンネット下へ84Lの収納空間を設けることが可能になった。

車重は、マカン Sとの比で400kg重い。そのかわり、重心は140mm低い。サスペンションは、4ではスチールコイルが標準になり、ターボではエアスプリングが標準。後輪操舵システムが、オプションで設定される。

日常的な扱いやすさはクラストップ

インテリアはとても上質。運転席側に据えられる、12.6インチのメーター用モニターには大きなカウルがない。ダッシュボード中央のタッチモニターは、10.9インチ。助手席側にも、オプションでモニターを追加できる。

ドライビングポジションは低く理想的。シートは座り心地が良い。18ウェイのスポーツシート・プラスも、追加費用で選べる。911 GT3のアイテムのようにスポーティで、サポート性が高く疲れにくい。

ホイールベースは、エンジン版マカンより96mm長い。これにより、後席側の足元空間にはゆとりが生まれた。

インフォテインメント・システムは、新世代のポルシェ・コミュニケーション・マネジメント(PCM)。アップル・カープレイとアンドロイド・オートへ対応し、音声アシスタントも実装する。USB-Cポートは、合計4つある。

ドライバーの正面には、10m先へ投影されたように見える、拡張現実表示のヘッドアップ・ディスプレイを追加可能。ただし、実際の景色と重なるグラフィックは、少しうるさく感じるかも。

さて、確認はこのくらいにして一般道へ出てみよう。日常的な扱いやすさは、間違いなくクラストップ。ステアリングホイールとアクセルペダルの反応や重さ、正確性、直感性に、限定的なボディロールといった要素が融合し、一貫した体験が醸成されている。

ボディサイズは、エンジン版マカンより103mm長く、15mm広い。それでも、車線の中央を辿りやすいと感じた。

BMW M5に匹敵する感覚の掴みやすさ

ターボ・エレクトリックの最大トルクは、121.8kg-m。本気を出すと、すこぶる速い。0-100km/h加速は3.3秒でこなす。

ホイールスピンやトルクステアは、ほぼ生じない。新しい電子制御システムによって、前後アクスルへ伝わるトルクは、10ミリ秒という極短時間で調整される。ここに先述の一貫性の高い操縦性が融合し、公道最速のSUVの1台が完成している。

ワインディングを駆ける場面では、ターボに組まれるリミテッドスリップ・デフも望ましい。アクセルペダルの加減次第で、コーナリングラインを調整できる。感覚の掴みやすさは、BMW M5に匹敵するだろう。

4 エレクトリックは、そこまでドラマチックではないが、殆どの人は充分以上に速いと感じるはず。試乗車にはオプションのエアサスが組まれ、標準の20インチ・ホイールを履いていたが、ベストバランスに思えた。

ターボほどシリアスではなく、平滑な路面では流れるような乗り心地を披露。リア主体のトルク分配が生む操縦性を、明確に味わえるようでもあった。約2.3tある車重も、管理下に収めていた。

405psと不足なくパワフルで、峠道を刺激的に楽しめる。アウディRS3の体験と、重なるようだった。

動的特性の幅広さも、輝く部分。ポルシェらしさを生むべく、多くの努力が投じられたと同社の技術者は説明する。バッテリーEVの基準でも走りは滑らかで、素早い回頭性を与えたという。

試乗車はオールテレーン・タイヤを履いていたが、グリップ力は感動的。重めのステアリングの反応は、終始正確だった。

乗り心地は硬め 内燃エンジン版の訴求力へ迫る

ブレーキも称賛モノ。回生と摩擦が見事に調和し、バッテリーEVとしてはペダルへ伝わるフィーリングも濃い。

回生ブレーキの強さは、パドルなどで調整できない。だが、デフォルトで惰性走行し、ブレーキペダルを踏むと回生が始まる制御を、筆者は好ましく感じた。これも一貫性が高いからだ。

ターボでは標準装備の、エアスプリングとツインバルブ・ダンパーによるアクティブ・サスペンションは、秀抜な姿勢制御を実現。乗り心地は硬めだが、路面の不整を巧妙にいなし、強い衝撃も1発でなだめていた。

唯一、筆者が弱点だと感じたのが、市街地での乗り心地。高速域ではしなやかながら、特にターボは、つぎはぎの多い路面の影響を受けやすい様子。英国や日本の一般道では、不快に思えるかもしれない。ロードノイズも大きい。

英国価格は、マカン 4 エレクトリックで6万9800ポンド(約1340万円)から。ターボ・エレクトリックでは、9万5000ポンド(約1824万円)へ跳ね上がる。

総合的な能力の高さで、4の魅力が際立つ。オプションを組んでも、8万ポンド(約1536万円)以内に収まるだろう。

マカン・エレクトリックが抱える当面の課題の1つが、内燃エンジンのマカンの訴求力へ匹敵するかどうか。これに関しては、ほぼ達成されたと思う。

バッテリーEVとしての完成度は高い。タイカンと同様に、しっかりポルシェらしい雰囲気も宿す。ブランドの電動化は、順調なようだ。

◯:快活で素晴らしい操縦性 洗練され好ましいインテリアの品質 急速充電能力
△:僅かに運転の自信を損なう重めの車重 低速域での乗り心地

ポルシェ・マカン 4 エレクトリック(欧州仕様)のスペック

英国価格:6万9800ポンド(約1340万円)
全長:4784mm
全幅:1938mm
全高:1622mm
最高速度:220km/h
0-100km/h加速:5.2秒
航続距離:516-613km
電費:4.6-5.4km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2330kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:95.0kWh (実容量)
急速充電能力:270kW
最高出力:405ps(システム総合)
最大トルク:66.1kg-m(システム総合)
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)

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みんなのコメント

4件
  • コンバット越前
    共有パーツが全くないんじゃ
    別の車種ですな
  • **********
    ポルシェといえどもタイカン系を見てるとコレもリセールは絶望的だろうな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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