3時間のレースでセーフティカーが4回出る波乱のレースとなったスーパーGT第7戦オートポリス。特に20台を超えるマシンが争うGT300クラスは、ピット戦略に幅があることもあって、セーフティカーが出るたびに優位なチーム、不利なチームが入れ替わる難しいレースとなった。その中で勝利を飾ったのは、15番手スタートの88号車VENTENY Lamborghini GT3だった。
序盤は中団でレースを戦っていた88号車。しかし中盤のセーフティカー明けで元嶋佑弥が、団子状態となっている集団をかき分けて11番手から4番手までジャンプアップ。一気にトップ集団の一角となった。
■接触のAstemoシビック太田格之進とENEOSスープラ大嶋和也、それぞれの見解。双方に共通するのは「驚き」
さらにターニングポイントとなったのが残り1時間での3度目のセーフティカーだった。
32周目に1回目のピットストップを終えていた88号車は、第2スティントを短く刻み55周目にピットへ。ここで小暮卓史に交代したが、程なくしてGT500クラスの64号車Modulo CIVIC TYPE R-GTがクラッシュし、セーフティカーが出された。当然、各車のギャップは大きく縮まるわけだが、この段階で88号車は2度目のピットを終えている車両の中で事実上のトップ(前には2号車mutaがいたが、ペナルティを抱えていた)。俄然優位な状況となったのだ。
レースペースの良さと展開を味方につける力が相まって勝利を手にした88号車。今季2勝目を挙げたことで、ランキングも3番手に上がってきた。ランキングトップの65号車LEON PYRAMID AMGの蒲生尚弥、篠原拓朗組とは依然として点差(16点)があるが、彼らは残り2戦で射程圏と言える状況に持ち込めたことをかなりポジティブに捉えている様子だった。
「15番グリッドからまさか勝てるとは思っていませんでした。オートポリスではパッケージとして毎年うまく走れず、良い印象がなかったのですが、地元九州の皆さんの前で勝てて嬉しいです」
「今回はタイヤとクルマ、全てがマッチしていました。やっと勝てるチームになったんだなと感じました。ホッとしたことが大きいですね」
そう語ったのは元嶋。今回の勝利でタイトル争いに向けた意識は変化したかと問うと、次のように答えた。
「ここオートポリスはシーズン前から、相当苦しくなるだろうとチームで話していて、そこをどう乗り切るかがチャンピオンシップを左右すると考えていました」
「チームやヨコハマタイヤさんとミーティングをする中で、正直僕は耐えるレースになるかなと思っていたのですが、優勝することができました。ここからはすごく得意としているもてぎがありますし、一気に気持ちが楽になりました」
「チャンピオンに向けて、かなり追い風だと思っています。もてぎは得意ですし、鈴鹿と言えば小暮さんのキレッキレの走りがあるので、何も心配はないですね」
一方相方の小暮も、同じくチームにとって追い風が吹いている状況だと話す。
「今までも、(タイトルは)すごく意識していたんですよ。ただオートポリスだけがどうしてもね……壁になるんじゃないかと思っていました。そこさえ乗り切ればチャンピオンになれるんじゃないかとの意識だったんです」
「それで今回、乗り切るどころか優勝できてしまったので、完全に追い風が吹いたのかなと。点差は開いていますが、この後のもてぎ戦、鈴鹿戦は例年を振り返ると悪い状況にはならないと思うので、すごく期待しています」
また、今回の88号車の劇的勝利には、いくつかのターニングポイントがあった。ひとつは、小暮の助言により、後に決勝で使用したスペックのタイヤをしっかり温存できたという点。そしてもうひとつは新加入の大ベテラン、伊与木仁エンジニアの“第六感”だったという。
元嶋は次のように説明する。
「自分のスティントの最後のピット(88号車にとって2回目のピットストップ)の時、前も開けているし、ペースもすごく速いのであと2、3周走らせてほしいと言ったのですが、伊与木エンジニアから『嫌な予感するから入ろう』と言われました」
「僕、無視しようかなと思ったんですよ(笑)。本当にペースが良かったですから。でも結構キツく(ピットインするよう)言われたので、それに従って入ったら、本当にそのタイミングでセーフティカーが出て、それにかなり助けられました」
「タイヤが良かった、クルマが良かったというのは大前提の上で、小暮選手の一言や、伊与木エンジニアの一言だったり、そういうピースが全部ハマりました」
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