スズキの1991年東京モーターショー出展モデルに改めて注目
1991年に開催された第29回東京モーターショー。
ル・マン優勝車「初代GSX-R750」の系譜を継ぐナゾのカタナ「スズキGSX-F」シリーズとは?
スズキは油冷エンジンから水冷エンジンへと切り替えたGSX-R750や、フルカバードされたレトロなデザインで話題を呼んだSW-1を披露。四輪では、軽オープンスポーツカー・カプチーノの市販版を公開した。
それら市販予定モデルに対し、二輪のコンセプトモデルは特異なテーマで統一されていた。
前後両輪の全輪駆動……クルマの四駆ならぬ「二駆オフロードバイク」押しだったのである。
キャンプを始めとするアウトドアレジャーが人気の今、クルマではSUVやキャンピングカー、バイクでも各メーカーが力を入れる「アドベンチャー」カテゴリーやホンダのCT125・ハンターカブなど、オフロードテイストの乗り物が注目を集めている。
そんな現代ならば、第29回東京モーターショーでスズキが発表した「二駆オフロードバイク」コンセプトはかなりアリな気がするのだ。
(ただし、デザインは別として……)
スズキ XF4「釣りにも使える125cc 2WDのレジャーバイク」
第29回東京モーターショーで3台発表されたスズキの「二駆オフロードバイク」コンセプトだが、その1台、125ccのレジャーバイク「XF4」は過去にモーサイwebでも紹介した。
強制空冷2サイクル125cc単気筒エンジンを搭載し、無段変速トランスミッションを組み合わせ、フルタイム2WDで前後輪ともに駆動する。
釣り竿ホルダーも装備し「どこにでも遊びに行ける125ccスーパーレジャーバイク」というコンセプトは凄く今風だ。
巨大なヘッドライトがギョロッとふたつ並んだアイアイあるいは出目金みたいなデザインは「お、おぅ……」と言葉が出なくなるが。
スズキ XF425「男と女がビーチで楽しむ125cc 2WDのレジャーバイク」
2台目はビーチサイドでの使用を想定したという「XF425」。
「XF4」同様にデザインも攻め攻めだが、マシン自体のコンセプト(キャッチコピー?)も超攻め攻めだ。「男と女のレジャーバイク」なんだもの。
ちなみにデザインのコンセプトは「アグリーダック──華やかなビーチで一際目立つ、アヒルをモチーフにした可愛らしさを表現した」とスズキは説明するのだが、直訳すればアグリーダック=醜いアヒルの子ってことになるけど、それでいいのか。まあ、いいんだろうな。何となく言わんとしていることはわかる気がする。
ファンキーなデザインに反して使い勝手はかなり考えられていて、誰にでも扱いやすいようにシート高は低めに抑えられているほか、ステップはスクーター的なボード形状に。極太のタイヤはビーチの砂浜を走るためのものだ。
あくまでコンセプトモデルということで、メカニズムに関する情報は少ないが、エンジンは強制空冷2サイクル125cc単気筒で、一軸バランサーを採用し快適な走行性を重視したという。なんたって「男と女のレジャーバイク」ですもの、無粋な振動はいりませんってことなんだろう。
フロントフォークはアルミ製ということらしいが、フロントフォークというよりビモータでおなじみの「ハブステア」のような構造なので、具体的にどこがアルミ製なのかは謎だ。
スクーター然とした格好ながら、リヤサスペンションはスイングアーム式で、写真を見る限り後輪の駆動はチェーンなんだけど、トランスミッションはオートマチック無段変速。一体どうなっているんだ……というのは野暮だ。「華やかなビーチで一際目立つ」のが一番大事なんですもの!?
スズキ XF5「パートタイム2WDの2ストスプリントレーサー」
3台目は意外とマトモで(おっと失礼……)、いわゆる普通のオフロードバイク的な外観。「XF5」と名付けられたこのモデルのコンセプトは「スプリントレーサー」となっている。
水冷2サイクルケースリードバルブの200ccエンジンを搭載し、前輪はシャフトドライブで動力を伝え(極太になっている左側フロントフォークにシャフトが添えられている)、後輪はチェーンで駆動するパートタイム2WDという構造。トランスミッションは6速となっている。
スズキの資料によれば「既存の概念ではスプリントレーサーに2WDを採用するのは困難とするのが一般的ですが……」と前置きをしたうえで、それを解決するために前後輪回転差吸収装置を採用。
車体はなるべく軽量コンパクトに仕上げ「従来の後輪駆動ではロスの多かった路面への追従性を、高トラクションの2WDによって大幅に向上させた」という。
軽量コンパクトを追求した車体は「DC-ALBOXフレーム」と呼ばれる軽量高剛性のアルミフレームを採用って「アルボックスフレーム」……懐かしい響きですね。
2WDによって走破性が高まった結果、タイヤもオフロードモデル定番サイズに捉われる必要ないということなのだろうか、タイヤは前後とも18インチで、フロントタイヤは110/100-18というちょっと変わったサイズになっている(リヤタイヤは120/90-18)。
もちろんこれら3台はあくまでコンセプトモデル……言ってしまえば「未来の乗り物の提案」。
現代に至っても前後両輪駆動が実用化されないのは技術的ハードルやコストなど大きな壁があるからだと思うが、XF425やXF4の「使い方」や「遊び心」は今の時代にもマッチするのではないだろうか。2WDではなく後輪駆動であっても。
それに「125cc」というカテゴリーが人気を集めている今だからこそ、極太タイヤのレジャーバイク「バンバン」を生み出したスズキだからこそ、ぜひ一発カマしてほしい気がするのだ。
まとめ●モーサイ編集部・上野 写真●八重洲出版
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