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新型ポルシェ・カイエン・ターボ試乗記 マカンある今、立ち位置に変化

掲載 更新
新型ポルシェ・カイエン・ターボ試乗記 マカンある今、立ち位置に変化

もくじ

どんなクルマ?
ー マカンある今、カイエンの使命とは
ー 4ℓツインターボV8 数値は強烈
ー 速さだけでなく実用性も保った

『ポルシェ・カイエン・ターボ』すべての画像を見る

どんな感じ?
ー エンジン 先代オーナーには違和感?
ー 4輪それぞれの動きがアクティブに
ー ターボの行き過ぎ感は、問題となるか?

「買い」か?
ー 旧来の「ポルシェ信者」にはウケないが…

スペック
ー ポルシェ・カイエン・ターボのスペック

どんなクルマ?

マカンある今、カイエンの使命とは

通常、モデルチェンジしたクルマをみて、そのメーカーが描く将来の姿を憶測することは難しくない。

「信念をつらぬき、より良いものを」というのが、たいがいのメーカーの考えであろうが、刷新するクルマは、よりスポーティであれとか、より拡大されたキャビンを持つべきであれとか、よりラグジュアリー性に長けるべきであれとか、いろいろな注文が付くものである。

しかし、固有のクルマのモデルチェンジに、そのブランド自身の方向性が示唆されることは、稀なことである。

新型ポルシェ・カイエンとは、そういうクルマであり、最上級車であるターボ以外にそのことを明確に示唆するクルマは存在しない。

カイエンは、他のすべてのポルシェの販売台数を越える数を売り、世界で最も収益性の高い自動車会社へ変え、同時に2002年、ポルシェ信仰者を驚愕させたモデルの3代目である。

しかし、マカン導入以後に初めてモデルチェンジを受けたこのカイエンは、ベスト・セラーとはならない。

なぜなら過去にカイエンでしかできなかった事の多くを、マカンはこなしてしまう。時は流れ、カイエンにも新しい役割が与えることが必要なのである。そのレンジのフラッグシップがこの新型カイエン・ターボである。

このクルマがどうであるかの前に、少し時間を割いて、このクルマがなんであるかを説明したい。

4ℓツインターボV8 数値は強烈

カイエンは、先に導入されたアウディQ7とベントレー・ベンテイガに継ぐ、フォルクスワーゲン・グループのMLBハイブリッド・プラットフォームに展開される3番目のフルサイズSUVとなる。

しかし、他の兄弟車と比べてホイールベースが100mm短い、ショート・ホイールベース・フォームでは初めての登用となる。旧モデルと比べて、新型カイエンは、若干長く、幅広く、車高が低い。各モデルの比較で、旧モデルに比べて平均60kgの軽量化を図ったが、2195kgの重量は制御するに軽くはない。

旧モデルのカイエン・ターボS(現在入手できる唯一の旧モデル)に搭載されていた、旧式の4.8ℓエンジンに換えて、新モデルには、新開発の4ℓツインターボV8エンジンが搭載される。

新型エンジンは、549psのパワーと、78.3kg-mのトルクを有する。旧モデルとはいえ、カイエン・ターボSのそれから、20psと3.0kg-mしか劣らないそのスペックは強烈である。新型Sの出力は、608psの水準まで高められるだろう。

さらに、新型カイエン・ターボは、旧ターボSよりも0.1秒速く100km/hへ到達し、最高速でも旧ターボSを凌駕する。新型カイエン・ターボは、旧ターボSよりも£21,500(322万円)安いのであるから、これは悪くないパフォーマンスである。

速さだけでなく実用性も保った

エンジンは新型パナメーラ・ターボと同じものであるが、しかし、決定的な違いは、デュアル・クラッチ変速機ではなく、新しく導入された8速ZFオートマティック変速機を採用している点である。

つまり、旧モデルがアイシン・ワーナー製変速機で謳った、3500kgの牽引能力は受け継がれることとなった。

出力は、フルタイムで前後に可変割合で振り分けられ、4個すべての駆動輪へ伝えられる。4輪駆動のシステムは、アウディやベントレーが採用するトルセン・デフは採用せず、ポルシェ製のクラッチを使ったシステムを採用する。ポルシェは、このシステムの方がより軽量で速いと主張する。

3つのチャンバーを持つエア・サスペンションは、ポルシェが独自性を示すことが許されたシステムのひとつであり、ターボ・モデルに標準装備される。ポルシェによれば、俊敏な応答性と広域的な制御が可能となっているようだ。

同時に、48Vアクティブ・アンチ・ロールバー・システムを採用する。このシステムは、速いコーナーの進入でロールを抑制し、オフロードにおける過酷な路面状況で効果を発揮するという。

どんな感じ?

エンジン 先代オーナーには違和感?

ドアを開けると、そこには限りなくクリーンな運転環境が用意されている。旧モデルに存在していたほとんどのスイッチ類は、非使用時には姿を隠す、ジェット・ブラックのタッチ・コントロール・パネルに統合されている。それらは、情報を管理する大きなTFTスクリーンに巧みに統合されている。

恐ろしく複雑な仕組みを介して、多彩な情報を提供するクルマにありがちな事であるが、その操作を習得することはおろか、欲しい情報をみつけるまでに大変な時間を要する。頻繁に使う機能は、ボイス・コマンドで操作した方が容易であろう。

インテリアのパッケージは旧モデルと基本的には同じである。リア・エンドに向かって下降するルーフラインは、さらにきつくなっているが、シートのポジションを若干低くして、ヘッドルームへの影響を回避している。

一方、レッグ・ルームに関しては、マカンと比べて驚くほど広いわけではない。十分なトランク・スペースは、旧モデルよりも広くなった。

さて、旧モデルのカイエン・ターボのオーナーなら、4.8ℓエンジンは、市販車の過給エンジンで最もキャラクターのあるエンジンのひとつであることを知っているはずである。

しかし新型エンジンは、そうではない。

明らかに静かであり、それは鞭を入れた時でも同じである。エンジン・サウンドは、静かで躾が行き通っている。そうした躾の行き届いたマナーを好むドライバーもいると思うが、旧モデルの派手なサウンドを惜しむ声も聞かれるだろう。

しかし、パフォーマンスに関して意見が分れることはないはずだ。

4輪それぞれの動きがアクティブに

このクルマは猛然と速く、そのことが今まで以上にこのクルマのキャラクターを位置づけている。個人的な経験からいうと、重量級のクルマを途方もない速度で加速する際に、これほどまでに身体的試練を求められるクルマは、ベンテイガ以外にない。

デュアル・クラッチ変速機が不在でも、それは変わらない。新しいZF製の出来はとても良く、停止の状態から、あなたが解釈する法定速度に達するまで、全くもってスムーズでショックのない変速を実現している。

直線だけで速いのではない。重量級の高出力SUVの問題点は、直線でのパフォーマンスと、コーナリングにおけるそれとが、他のクルマと比べた時、その差が大きいということである。

つまり、ドライバーは、常に格闘を強いられ、スピードの起伏が顕著である。これは、パッセンジャーにとっても気持ちのいいものではない。

しかし、ライバル達と比べて、カイエンはこの傾向が希薄である。なぜなら、経験上からそうではないと思っても、このクルマは巧みにグリップの居所を認識することができるからである。通常、そのスタビリティは、車体コントロールによってもたらされ、このクルマ以上に優れたクルマに乗った経験はない。

3つのチャンバーを持つエア・スプリングとアクティブ・アンチ・ロールバーの組み合わせは、このクルマの質量をばかげたほどに上手く制御している。ハードなモードに切り替えれば、4輪が今まで以上に働いていることを感じるだろう。

それは、無謀にスピードを加え、アンダーステアや危険な状態を察知し、スタビリティ・コントロールの介入を誘発する乱暴なものではなく、有り余るほどのトルクを各駆動輪に適切に配分することで、コーナリング性能を高めることに成功しているのである。

ただ、2トン以上もあるカイエンを、すべての使用環境で、驚くほど速く走らせることを担保するために、副作用も誘発している。

ターボの行き過ぎ感は、問題となるか?

このクルマのドライバーは、自身のドライビングへの介入によるもの以上の結果を突きつけられ、驚きを隠せないはずである。

旧モデルを知っているドライバーであれば、このクルマのように背が高く重いクルマのステアリングが持ち合わせる操舵感への先入観を持っているはずであるが、それを捨てる必要があるだろう。

旧モデルのカイエンでは、いつでもドライバーの存在が意識されてきたが、新型になって新たに加わった能力の代償として、それを定量化することは簡単ではない。切り捨てることができない何か重要なことが失われてしまった。大雑把にいうと、新型カイエンは、以前よりもポルシェっぽくないのである。

おもしろいことに、金属スプリングを備える、3ℓガソリン・エンジン搭載の標準モデルの試作車のほうが段違いにもっとドライバーの介入が感じられ、クルマとの対話が存在した。

さて、新型ターボの行き過ぎ感は、問題となるか?

ほとんどのドライバーにとってそれはないだろう。多くのドライバーにとって、そんなことよりも重要なことは、機能の拡大、質感の向上したインテリア、傑出した洗練性であり、実際、ポルシェにみえるし、ポルシェのような乗り味であることには変わりない。

ポルシェっぽくないとはいえ、多くのドライバーがそれを意識することはないだろう。

価格は相当引き上げられるだろうが、旧モデルのターボSと同等のパフォーマンスを備え(局地的には凌駕しているだろう)、スタイルと機能を刷新し向上させたとなれば、その正当性にもうなずける。

「買い」か?

旧来の「ポルシェ信者」にはウケないが…

この新型モデルが示唆する、ポルシェ・ブランドとは何かという点であるが、わたしは、新型パナメーラが示した路線をさらに促進していると考えている。

つまりそれは、ポルシェは同社の5ドア車に関して、スポーティさに加えて、ラグジュアリーな雰囲気を持ったクルマとして認識させたいということである。

カイエンに関しては、マカンの存在を考えると、必然的に上級車種への移行とも重なる。今まで以上に、カイエンというクルマ、特にターボ・モデルは、ポルシェというブランドを意識した購買層を意識して造られている。

しかし、その意識とは、伝統的なそれとは異なるものである。それらの顧客はポルシェに乗っているという認識を欲しているが、そのクルマは必ずしもポルシェのような走りをしなくてもよいということである。

であるから、エンジンは比較に成らないほど静かであり、乗り心地に配慮し、ハンドリングは向上しているものの、そこにはドライバーの介入はない。

これはデリケートなトレード・オフである。

わたしは、新型が若干ソフトになってしまった事を嘆き悲しむかもしれない。しかし、SUVという世界を考えた時、ドライビングの楽しさよりも、その能力がより注視されるべきであろう。

個々のポイントをみてみれば、このカイエン・ターボは、わたしが過去に乗ったクルマの中で、最も能力の高いフルサイズSUVなのである。

これらのクルマが収益に貢献し続ける限り、ポルシェは、それを世界レベルのドライビング・マシンの開発つぎ込むことができるのであるから、わたし的には文句のひとつもない。

ポルシェ・カイエン・ターボのスペック

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