顔面はミラ、ボディはパネルバンの変わり種
全国の軽自動車(以下Kカー)ファンが「これだけは毎年参加する」と声を上げるオンリーKなイベントが岡山国際サーキットで開催される「KING OF K-CAR(9月26日開催予定)」と、今回潜入した「KING OF K-CAR Meeting」だ。前者はドレスアップコンテスト形式のハイエンドだが、後者はオフ会で何でもありのユル系。300台オーバーのバラエティ豊かなカスタマイズカーが揃う会場でダイハツ・ミラの顔に特装車であるパネルバンのボディをドッキングした何とも変わり種な1台を発見! 果たしてこのクルマの正体は?
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集配業務の効率化を突き詰めた特装車。その歴史は古く、1984年の初代ミラで登場
日本独自の規格である軽自動車。現在は衝突安全を含む法基準によってボディ形状のバリエーションは少なくなっているが、ひと昔前は個性的で、特殊なスタイルを持つクルマが数多く誕生した。中でもフェローバギーやバモスホンダと並ぶサブカルKとして挙げられるのが、今回紹介するダイハツ・ミラウォークスルーバンだ。
ウォークスルーバンはその名前のとおり、運転席と荷室の間をクルマから降りることなく行き来でき、荷室で立ったたまま作業できる構造を持つ集配業務向けのクルマ。もともと普通車でラインアップされていたが、日本の地方にいまだ多い道幅の狭いエリアで活躍できるクルマとしてウォークスルーバンのパッケージを1984年、ミラに取り込んだのがその始まり。ただし、軽自動車の全高は2m以下と決まっているため、室内高は1495mm止まり。荷室で立ったまま作業するまでには至らなかったが、それでも使い勝手は飛躍的に高まった。
特殊な製造工程を経るため、新車販売時から車検証には「改」のマークが入る
運転席のドアは通常のミラと同じヒンジ式(ドアのないモデルも存在)だが、助手席は荷物の出し入れを考えてバスなどと同じ内開きの折戸式を採用。リヤハッチは一般的な跳ね上げ式の他に助手席ドアと同じ内開きの折戸式+外開きドアも設定されていた。荷室のは積載性を考えたバリアフリー感覚のフラットフロアで、シートは補助の折り畳み式シートはあるものの、事実上1シーターとなるなど、かなり特化した作りとなっていた。
ちなみに手作業を含めて特殊な製造工程が必要であるためライン生産ができず、荒川車体工業(現・トヨタ車体。ランドクルーザー40のボディ製造と車体組み立てを担当したことで有名)が生産を請け負い、改造申請の届け出をした上で納車となったため、車検証は新車からマル改扱いだ。また、軽史上もっともハイトなクルマ(1940mm)でもある。
丸みのあるミラ・クラシックの顔面総移植でさらに個性が際立つルックスに!
前置きが長くなったが、会場で見つけたウォークスルーバンである。広島県のTさんが所有するのは3代目のL200型で、カスタムの主流である顔面整形仕様。L200系とL500系(4代目)の相互移植はもちろん、派生車(オプティ、クラシック、TR-XXなど)の移植が定番で、クラシックミニのフェイスをスワップするキットなど多彩な中からミラ・クラシックフェイスを選択。 大きな箱の前面に丸みが強い顔がちょこんと付いた姿は甲羅から頭を出す亀のようでじつに愛らしい。純正ウィンカーの位置にフォグをON、ウィンカーはヘッドライト下に内臓し、純正とは異なるなんともとぼけた表情を見せる。
ボディはリペアを兼ねて落ち着きのあるベージュに全塗装。レオンの車高調でローダウンし、ヤングタイマーに人気のSSR Mk1をセット。乗り味を損なわずに低く見せるようにゴムのフロントアンダーと塩ビパイプをアイアン塗装したサイドバーを追加し、地上クリアランスをミニマム化。 デザインセンスのかけらもない実用一辺倒なサイドミラーは輸出用のジムニー用をブラックアウトして装着。アームも切断や溶接してワンオフ製作するなど、雰囲気を損なわず、ひと味加えるなどカスタムの見せ技を心得ている。
楽にスワップ可能な同世代ではなく、新しい2代目ムーヴのパワートレインを選択
オリジナルのエンジンはNAのみで、ミッションも4速MT/3速ATの設定。ただし、車重に対して非力なので同型式のターボ仕様&5速MT/4速ATのスワップが一般的だが、Tさんはエンジンマウントもドライブシャフトの長さも異なる世代の新しいL900型ムーヴのターボエンジンとコラムATのドッキングにチャレンジ。 各部を正しく動かすためにメーターやコラム、エアバックユニットなど(センターコンソールはタント用)も移植。まだ仕上げ前だというが、各部が違和感なくフィット。知らない人に「これがオリジナルだよ」と説明すれば信じてしまうくらいの出来映えだ。 マフラーは空冷ビートル用の加工で、リヤの左右幅ギリギリにレイアウト。太目のテールエンド径がさりげなくリヤビューの存在感を主張。ヒッチメンバーはミラのボディサイズに合わせたオリジナル品で、牽引するトレーラーはラジオフライヤーを加工して製作した。 公道をこのままの状態で走ることはできないが、魅せる演出として周辺の小道具までこだわるなど遊び心タップリ。カスタムライフをとことん満喫しているのが伝わってくる。
ドレスアップカーとして第一線のレベルを保ち続けるのはオーナーの愛情の賜物
「とにかく変わったクルマが好きで、ウォークスルーバン歴は22~23年。以前は配達やクルマの引き取りに使っていましたが、今はイベント専用車として楽しんでいます。この車高でしっかり走れることもこだわりのポイントですね。やりたいことは今なお盛りだくさんで、何から手を付けようか、常にワクワクしています」とTさん。 最終型の生産終了から20年以上が経過し、イベントで見かける機会も減ってきたミラ・ウォークスルーバンに最新のカスタムを施し、ドレスアップカーとして一線級のレベルを保つのはオーナーの愛情以外何物でもない。稀代の個性派ハイトバンの存在を末永く繋いでいってほしい。
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みんなのコメント
室内が鉄剥き出しだから配達とキャンプで何度火傷したか‥