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F1やスーパーGTがもっと身近に!?もてぎKART耐久フェスティバル“K-TAI”で味わったモータースポーツの醍醐味とは

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F1やスーパーGTがもっと身近に!?もてぎKART耐久フェスティバル“K-TAI”で味わったモータースポーツの醍醐味とは

レーシングカートで国際格式サーキットを走る稀有な耐久レース"K-TAI"

ありがたい機会を得て今回参戦させていただくことになったレースは、もてぎKART耐久フェスティバル“K-TAI”(以下、K-TAI)。このレースイベントはホンダのグループ会社であるホンダモビリティランドが主催。同社が運営するモビリティリゾートもてぎ(旧:ツインリンクもてぎ)の本コース(1周4.8013km)を舞台に、レーシングカートで最大120台同時に競い合う7時間の耐久レース。
4輪用のコースの一部を用いて行われるカートレースは珍しくないが、国内最高峰のレース「SUPER GT(スーパーGT)」や「SUPER FORMULA(スーパーフォーミュラ)」も行われるFIA公認の国際格式サーキット、それも一部分ではなく本コース全体をつかって行われるカートレースはなかなかに珍しい。

オーナーでなくとも専用サーキットでポルシェに試乗できるブランド体験施設「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京」が10月1日にオープン。

■初心者から経験者までが一緒に楽しめる本格的なレースイベント

K-TAIのコンセプトは「みんなでKARTを楽しもう」と掲げられており、初心者でも手軽に参戦できるように配慮されたレギュレーションとなっている。象徴的なのは参加ドライバーの年齢はなんと10歳から(但し、競技ライセンス所持者)。完全なるカート初心者であっても、満16歳以上で原付以上の免許を保持していれば、レース日以外に行われる3回の公開練習に1度以上参加のうえで講習会を受講することで参加が可能となっており、幅広い方々に気軽に参加してもらいたいとの想いと配慮がうかがえる。

■体感速度は300km/h!マシンもまた本格的なレーシングカート

ドライブするマシンは、本田技術研究所の有志メンバーがサポートするチーム”Club Racing(クラブレーシング)”の95号車。マシンはレンタルカートでも使われる遠心クラッチ付き4ストローク汎用エンジンを搭載したレーシングカート。エンジン排気量は270cc、ホンダ製の空冷4ストローク単気筒OHVガソリンエンジン「GX270」のカタログ上のスペックは最大出力6.3 kW(8.4馬力)、最大トルクは19.1 N·m(1.94 kgf·m)と、普段みている数値からすると可愛くみえてくる。

しかしながら、このコース、このマシンでの最高速度は110km/hを超える。それは、身体がむき出しで地面スレスレの視線となるカートの世界での体感速度は300km/hともいわれている。そう、それはまさに本格的なレースを戦うマシンなのだ。

■耐久レースとはチーム全体が一体となってたたかう団体競技

ちなみに耐久レースとは、決められた時間を走りきった末にどれだけ周回数を重ねられたかを競う競技。今回のレースは7時間となっており、ドライバー人数もチームによって異なるが、3~10名が交代しながら長丁場を走る。当然ながらピットインが複数回発生し、ドライバー交代や給油など、コース上で過ごす以外の時間もレースの一部であり、全体をどのように配分し、どんなタイミングでピットインするかなどのレース戦略が結果を大きく左右する。

マシンを準備するメカニックは「壊れない&速いクルマ(マシン)をつくる」こと、さらにはレース中に起こりうる「不測の事態に備える&対応する」ことを使命とし、ドライバー自身もただただ速く走ることだけでない、燃費や戦略を意識しながらの「効率的に走る」ことを使命とする。複数のチームメンバーが各自の役割を通じて競技に参加する耐久レースは、立派な団体競技なのである。

真夏らしい"暑い"日に行われたレースの内容は"熱い"展開となった

みんなで楽しむこと、が目的であるK-TAIの決勝レースの出走順位は「くじ引き」で行われる。筆者がドライバーを務める95号車は、14番グリッド(前から5列目)を獲得。なんだ後ろのほうじゃないかというのは早計、今回のレースのエントリー台数は103台という規模で行われる中でいえば、立派な先頭グループなのだ。いかにK-TAIが初心者大歓迎のイベントとはいえ、屈強なベテランチームも多数参加するこのレース。パっと出の筆者も参戦できることからみても、総合順位をまともに戦い抜けるほどのレベルではない。チーム全体の目標はノーメディカル(≒怪我をしない)で完走することではあるものの、95号車のチャレンジとしては「レースらしいレースをする」として、事前に入念な打ち合わせを繰り返した上で、自分たちなりのレースをするべく決勝レースはスタートした。

■突如のマシントラブルに見舞われた第1スティント

レースが始まり順調に走行を重ねる95号車。決して上位ではないものの、安定したラップタイムを刻んで、3番目を担当する筆者の1回目のスティントを迎えた。が、いざドライバー交代をしようかと準備していたが、ピットインしてきた際にメカニックがエンジンから発生する駆動力をドライブシャフトに伝えるチェーンの緩みを発見。急遽ピット内にマシンを移動させ調整作業に取り掛かり、試行錯誤の結果、エンジン位置をズラすことで解決。ものの数分の作業ですぐにマシンに乗り込むことが可能となり、適度な緊張を感じつつ慎重にコースイン。

筆者は6月におこなわれた第2回公開練習の日に初参加し、マシンの感覚をつかみつつ走行データ(ログ)をもとにエースドライバーとのギャップ(課題)を把握。レースまでに脳内シミュレーションを行いながら、前日の練習走行で確認するなど可能なだけの準備をしてきた。その甲斐あってか、圧倒的に速い他車のさばきや遅いクルマの追い抜きもかけるなど着実にラップを重ねながら、あらためて国際格式のサーキットで本格的なレーシングカートを走らせることを楽しんだ。戦略で定められた短めのスティントが終わろうかとピットインに向けて心の準備をしていた矢先にそれは起こった。

「バン!!」

大きな爆発音とともに、真後ろから聞こえる排気音が一気に大きくなった。「もしやマフラーが抜けた?」と勘ぐりつつも、振り返って見えるわけでもない。幸い走行自体は可能な状態だったため、そのままピットへと向かった。マシンを降りて状態を確認すると、エグゾーストの付け根付近のパイプが割れたのか折れたのか、完全に外れている状態。再びマシンはピット内に押し戻され、メカニックが緊急作業に取り掛かった。ところがものの10分もかからず無事修復完了させた敏腕作業の末、4番目のドライバーが無事送り出すことができた。

■セーフティーカーが出動する事態となった第2スティント

その後レースは順調そのもの。誰もスピンやアクシデントに巻き込まれず、5人のドライバーのタイムもほぼ揃っていて、当初のテーマである「レースらしいレースをする」ことが出来ている。そうして、筆者の2回目となるスティントを迎え、今度はスムーズに交代して走り出す。

再び順調にラップを重ねていた矢先、他車同士のアクシデントによりコースの一部でダブルイエロー(追い越し禁止かつ十分に減速すするためのサイン)が出ていたと思ったら、「SC」と書かれたボードが掲げられた。アクシデントの処理を行うべく、セーフティーカー(Safty Car)が入ったのだ。チームとしては判断に迫られる事態。ピットインさせてドライバーを交代するかどうか、ただこの場合他の車も一斉にピットインしてくるため、ピットロード内はもちろん、給油所が混み合うことも大きなタイムロスのリスクになりえる。

95号車の判断としてはステイアウト(ピットインせず、コースにとどまって走行を続けること)。(結果としてかなりコース復旧に時間がかかったことから、レース戦略としてはもしかすると失敗だったかもしれない。)SC下での走行は全体を低速かつ追い抜き禁止のため、約3分弱で周回していたラップタイムも4~5分程度と、かなりゆっくりと走行することになる。このときに筆者の頭では、F1中継の様子で再スタートに向けて実況アナウンサーと解説者同士が各チームの戦略を語り合っているシーンを思い浮かべながら「ああ、ドライバーはこんな時間を過ごしているのだな…」と勝手ながらに当事者感覚を味わっていた。

話を戻そう。耐久レースの最中にセーフティーが入ったこの状況下において、ドライバーとしては前のクルマとの間隔を適切に保ちながらも、いかに燃料をセーブできるかが重要な役割となる。なるべくアクセルを開けず、ブレーキをかけることも極力しない、つまりは速度の増減を最小限にした走りを意識する。(※)これは日常での高速道路でのドライブでもほぼ同じことがいえる。そんな状態が約25分間ほど続いたが、セーフティーカーが外れてレース再開。3周ほどラップした後にピットインとなった。
※言わずもがなだが、F1やスーパーGTなどトップカテゴリーのレーシングカーにおいては、タイヤやブレーキなどの温度管理があるため「やるべきこと」は全く異なる

その後は順調にと言いたいところだが、次のドライバー走行中に、チェーンの回転をドライブシャフトに伝えるスプロケット(歯車)の歯がなくなり交換するというビッグトラブルが発生してしまい、95号車のレース展開は波乱万丈なものとなった。

モータースポーツはクルマ好きに限らず誰もが楽しめるアクティビティ

こうして、長いようであっという間に過ぎ去った7時間で107周を走った我が95号車のレース結果は103台中の76番目。K-TAIでは「同一周回は同一順位」となるため、正式結果としては24位(完走41位中)となった。褒められた順位ではないかもしれないが、トラブルが続出したこともありつつ、チームメンバーの誰一人としてスピンやコースアウトがなかったことを考えれば、上出来と言える結果だったかもしれない。

ただ、やはりレースはレース。トップを目指してこそ結果がついてくるものでもあり、チーム内でその意識が共有されているからこそ切磋琢磨するものであって、決して満足できるものではない。ただ、とにもかくにもレースは楽しい、それだけは間違いなく言い切れる。なぜ楽しいのか、それは自分ひとりが走ることそのものだけでなく、チームみんなで取り組んで、当事者やその家族・友人、あるいはファンと共に、苦労や喜びをともなう時間を共有することができるからだ。

モータースポーツは、もともとクルマ好きの方はもちろん、クルマ好きの人と共にいる方、あるいはクルマにそこまで興味がない方でも、それぞれ違った角度で楽しむことができるアクティビティあるいは趣味だといえる。

これまであまり馴染みがなかった方も、もし少しでも興味が湧いたのであれば、「まずは観に行ってみる」だけでもいいので、ぜひ一度はドライブがてらにサーキットに足を運んでみてほしい。そしてさらに興味が湧いたなら、次はレンタルカートに乗ってみよう。
そんなちょっとしたチャレンジを重ねていくことで、いまよりもっと充実した「クルマのある人生」を過ごせるかもしれない。

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