注目は2リッターから2.4へ排気量アップされたエンジン
初めてのフルモデルチェンジとなる新型スバルBRZと、GRのネーミングがついたGR86が登場し、袖ヶ浦フォレストレースウェイサーキットにおいて試乗テストを行うことができた。
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今回もまたスバルとトヨタGRカンパニーによる共同作業として両車は作り上げられ、主に設計や生産をスバルが行い、企画やマーケッティングなどをトヨタが担当。走りの味付けはそれぞれのテストドライバーが行っているという。
今回のフルモデルチェンジの最大の特徴は、エンジンが従来の2リッター水平対向エンジンから2.4リッターにスープアップされたことだ。これにより、やや不足とされていた動力性能に大幅な改善を見ることができたといわれている。
数値スペックを見てみると、エンジンの最高出力は235馬力を7000rpmで発生、最大トルク250N・mを3700rpmで発生する。エンジンはほとんど新設計と言えるほどの改良が施されたという。また、エンジン単体重量は排気量アップされたにもかかわらずむしろ軽量化されているということで、そうした面も注目に値する部分である。
パワーアップの手段としては、ターボチャージャーを付けるという案もあったようで、スバルにはWRXなどで2リッターターボエンジンについてはかなりの実績があるため、より簡単にハイパワーを授けられるはずであったが、ターボ過給方式にするとインタークーラーや排気系取り回しやラジエター容量など補機類関係で非常にスペースを必要とし、また重量も重くなってしまうため、今回はターボではなく自然吸気の排気量アップで対処したのだという。
これまでどおりシリンダーヘッドにはトヨタの独自技術であるポート噴射と直噴のダブル噴射を搭載するD4システムを採用しており、そのドライバビリティーも楽しみなところだ。
では早速試乗してみることにする。
ライントレース性が素晴らしいBRZ
まずはBRZのマニュアルトランスミッション車に乗ってみた。マニュアルトランスミッションは従来のものを引き継いでいるが、4速にカーボンシンクロを採用するなど強化されている。これは主に動力性能の向上に合わせた面と、従来モデルから弱点として指摘されていたところを補強したいという意味合いを含みもつ。また1速から6速までギヤ歯面をショット加工し強化していることも、強固なトランスミッションとして成立させるための手段として採用している。
ギヤのシフトフィーリングはショートストロークでゲート感がしっかりしており小気味よくシフト操作が可能だ。強化されたクラッチの好作用もあり発進は非常にスムースで半クラッチも行いやすい。このクラッチのペダルフィーリングもしっかりとした踏み心地に改善されている。
エンジンはD4らしく従来以上にシャープかつパワフルに噴き上がる。1速2速とシフトアップして1コーナーを目指すと、すでに車速が100km/hに達している。動力性能の向上は圧倒的といっていいだろう。0-100km/h発進加速タイムは6.3秒と公表され、これまで不足を感じていたが力強さが一気に解消され、胸のすく加速感が得られる。
BRZはさらにエンジン音を作り出していてその音量がかなり大きい。ちなみにサーキット走行に備え、ドライブモードではトラックモードを選択している。トラックモードはトラクションコントロールやVSCの作動介入を大幅に遅らせ、パワースライドやドリフトアングルを維持する走行が可能になるが、最終的にはスピン抑制制御が介入してクルマを安定化させる。一般のドライバーがサーキット走行など楽しむ時にはトラックモードを選択しておけば安心してサーキットを攻めることができるだろう。
そのまま第1コーナーをクリアして加速を続けていくと、第2コーナーまでに速度計は163km/hまで高まることが確認できた。これは従来のモデルが150km/h前後の到達速度だったことを思うと相当な動力性能の向上といっていい。しかも第2コーナーから第3コーナーにかけては上り下り勾配で、かつ緩やかなコーナーが形成されている非常に難しい複合コーナーであるにもかかわらず、新型BRZはスロットル全開のまま安心して加速を続けることができた。
ライントレース性も正確で素晴らしい操縦感覚が得られている。これはシャシー性能の向上も大きいが、タイヤが従来のミシュランのプライマシーからパイロットスポーツ4にグレードアップされたことが大きな効果として認められる。一方で、前後が215の同サイズという同一サイズであることで、走り込みを続けると後半は後輪の熱垂れによるグリップの落ち込みが気になる部分も感じられた。ただ絶対的なグリップの向上はそれを補っても余りあるもので、ハンドリングとしては非常にコントローラブルな特性を見せた。
ためしにドリフトアングルをつけて走らせてみると、テールのリバースは従来モデルのように急激に起こらず、フロントのステアリングの切り込みに応じて立ち上がるヨーモーメントによりリヤが穏やかに流れだすといった掴みやすい特性だ。
BRZではフロントのハウジング(アップライト)をアルミダイキャスト製としており、ここがGR86とはまず違う部分である。GR86は従来のスチール製のものを継承しており、 トヨタのテストドライバーによれば操舵フィーリングの違いからスチール製の物を選んだという。
一方BRZは、アルミによる軽量化で片側1.3kg、左右両側で2.6kgのバネ下重量軽減を選び、アルミ製のハウジングを採用している。アルミダイキャストとしたことでステアリングの応答性が穏やかになり、また舵角を切り込んだ時点での応力の収斂性も穏やかで、ステアリングには常に操舵力や保舵力が適度に感じられる好フィールなものに仕上がっていた。これにより狙ったラインを正確にトレースしていくことが可能で、とくにサーキット走行においては好まれる特性であるといえる。
S字カーブでは、リヤがややナーバスにブレイクする場面も見られる。これはリヤスタビライザーの取り付け位置をBRZはボディ側にピックアップを設けていること、またリヤのスプリングレートを35kgとして、GR86よりもややソフトにセッティングしていることでロール剛性とスタビライザー作動のフリクションロスが発生し、若干の遅れとなってリバース方向に車を移行させていると考えられた。フロントの追従性が良いだけに、よりコーナーの奥深いところでその傾向が顕著に表れるのは惜しいところだ。
BRZよりもリヤの接地性に優れているGR86
次にGR86の6速MT仕様に乗り換えてみよう。エンジンについては同じスペックだが、エンジンサウンドを聴かせる制御がBRZと異なるようで音量がやや抑えられ控えめだ。またアクセルの踏み込みに対するトルクのピックアップは、公表資料によればトヨタのほうがより低速から大きなトルクを立ち上げているとされているが、運転している感覚としてはスバルのほうがよりパワフルでパンチのあるエンジンとして感じ取ることができた。
各コーナーの最高到達速度はほとんどBRZと変化がない。これはほぼ同じ車重と動力性能で考えれば十分納得のいくものだ。
一方、フロントのハウジングをスチールとしたことでGR86のステアフィールは、テストドライバーの説明ほどにはリニアな印象とはならなかった。BRZの粘る感じのロードホールディング感に対し、GR86のほうがむしろ操舵力が軽く、路面の手ごたえを掴みにくい傾向に感じられた。とくに高速コーナーではターンインにおいてアンダーステアを生じやすくなっており、ステアリングの切り込んでいる時間なども多くなっている。
その反面、リヤの接地性は非常に優れていて、ブレーキングのスタビリティーや旋回加速中のトラクションのかかり方などもBRZより優っている。そのことがコーナーの入り口で遅れをとっても立ち上がりの加速でそれを取り戻し、最終的な到達最高速度をほぼ同等に揃えるという両車の特性が違いながらも似たような速さへ仕上げることへの回答となっているようだ。GR86は高速旋回中のリヤの粘りがより安定していて、ドリフトアングルのかなり深いところまでコントローラブルに操っていける。パワードリフトをしてその姿勢を維持しやすい特性になっているわけだ。
2車を比較すると、ラップタイムはBRZのほうがコンマ数秒ほど速かった。ただコースが変わり、また速度領域やコーナーの特徴が変わるとこの速さは揃ったり、また一方が速くなったりし、必ずしも完全一致したものではないことがわかる。最高到達速度が一緒でもコーナーの走りの特性との差でラップタイムが違っているというのは操る者としては面白さが伝わる部分でもあるのだ。
ほかにもスタビライザーを中空にしたり、中実にしたり、またその太さもバランスを変えるなど、BRZとGR86は同じクルマなのに異なったチューニングアイテムが所々に施されていて、その結果走りの特徴や個性に分かれているは面白いと感じるところだ。
ATモデルも十分にスポーティな走りが楽しめる
最後にATモデルについて紹介しよう。86とBRZのAT車は従来モデルもサーキットでMT車と遜色ない速さを引き出すことができるATとして認識されていた。今回試乗したモデルではパワーアップよってATを保護するためにロックアップの領域を広め、またトルコンへの負荷を減らすような制御の工夫が施されていたように思う。
たとえば加速時にはエンジンの最高回転の手前でシフトアップし、ブレーキングするときもスポーツモードを選べば踏力に応じてシフトダウンが行われるが、最大Gを一気に引き出し強力な減速をしている時などは、ややシフトダウンが遅れがちになる。また、マニュアルのパドルシフトで操作してもエンジンの保護領域では変速することができなかった。引っ張り側では1速でも2速でもレブリミットを当てたまま自動にシフトアップせずに加速していくが、シフトダウンに関してはより慎重に制御を行っているようだ。
この結果、各コーナーの到達スピードはマニュアルトランスミッション車よりも7km/h弱及ばなかったが、ラップタイムは1.5秒も差がつかない速さで走ることができた。また、トラックモードあるいはトラクションコントロールオフを選択してドリフトに持ち込む場合もギヤ比が合えば充分可能だが、袖ヶ浦フォレストレースウェイのドリフトポイントとなるパドック裏のS字コーナーではAT車のギヤ比が合わず、ドリフト姿勢を維持しながらの旋回はし辛かった。
2速と3速ギヤ比がやや離れているのとATはファイナルギア比が3.99とハイギヤードで、ちょうどS字の速度域でパワーを上手く引き出せないという難点が感じられたのだ。ただ日常的な使用での使い勝手においては2ペダルに勝るものはなく、また状況が整えばドリフト走行も可能である事から、2ペダルのユーザーも大いに楽しみにしていてもらいたいと思う。
総評として、新型BRZとGR86はそれぞれ似て非なるものといえる。雪道や悪路でのトラクションまでを検証したBRZはスバルらしい乗り味と言えるし、よりハイスピードでオンロードのトラック性能をドライバー中心に煮詰めたというGR86は現在のGRブランドの方向性を示していたと言えるだろう。
どちらのクルマも従来モデルを大きく上まわる速さを手にしており、86/BRZのワンメイクレースのようなカテゴリーで従来モデルを使っていたユーザーは、今後の行く先を心配しているに違いない。GRカンパニーとスバルは86/BRZレースについて今後も継続すると断言しているが、新型との入れ替え、あるいは混走などを含めてさまざまな展開を現在協議しているということだ。おそらくは2022年度になってその運営の行く末先が明確化されるだろうとの事なので、関係者は今しばらく見守っていく必要がある。
なお、今回のGR86/BRZは外観的にも大きな変更を受けているが、従来のイメージを損なわずに細かな作り込みによって新しい形を作り上げたところは着目すべきポイントである。
ルーフはアルミ製で軽量化し、ボンネットフードやフェンダーもアルミ化して軽量化するなど、クルマトータルの重量は従来よりも75kg軽量化されているという。排気量アップをしたにもかかわらず軽量化されたことは技術の進歩の証である。
一方、運転支援機能や衝突安全性など先進の安全装備などで重量が増加する部分もあり、軽量化した部分がちょうど相殺されるような形で車両総重量としては従来モデルとほぼ同等に仕上がっているということだ。同じ重量でパワーが高まっているのだからパワーウエイトレシオ、トルクウエイトレシオはその分向上するのは必然であり、新しいFRスポーツの走りの領域を切り開き、またスポーツカー好きへの魅力的な提案となっている。
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