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地元の英雄コペツキーの連覇記録途絶える。国内選手権でも立ちはだかる24歳の新鋭が初制覇/ERC第6戦

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地元の英雄コペツキーの連覇記録途絶える。国内選手権でも立ちはだかる24歳の新鋭が初制覇/ERC第6戦

 2024年で53回の開催を数える伝統のフルターマック戦『バウム・チェコ・ラリー・ズリン』が、今季もERCヨーロッパ・ラリー選手権第6戦として8月16~18日に開催され、前人未到の大会9連覇、イベント通算12勝目に挑んだ盟主ヤン・コペツキー(シュコダ・ファビアRSラリー2)の記録がついに途絶えることに。

 地元チェコの国内選手権でもコペツキーの対抗馬としてシリーズ首位を行く新鋭ドミニク・ストリーテスキー(シュコダ・ファビアRSラリー2)が、オーストリア選手権4冠のサイモン・ワグナー(シュコダ・ファビアRSラリー2)や、同じく地元チェコ出身エリック・カイス(シュコダ・ファビアRSラリー2)らを退け、価値あるERC初優勝を成し遂げた。

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 イベントの‘主(ぬし)”として君臨してきた2013年ERCチャンピオンのコペツキーが、地元での連覇記録を更新するかに注目が集まったラリーウイークだが、開催都市ズリンの街路を周回するSSSを前に「12回目の勝利は12回目の勝利、それだけだ」と、同一大会の連勝記録を“9”へと更新することも含め「それらは単なる数字に過ぎない」ことを強調した。

「改めて、ラリーではどんなことでも起こりうる。本当に厳しいものになるし、週末は天候が大きく変わる可能性もあって、どうなるか見極める必要があるからね」と続けたコペツキー。

 その対抗馬と目された地元出身のカイスは、英雄と同じシュコダ、同じミシュランを履く環境を整え2.77kmの予選ステージ最速発進を決め、立ちはだかる偉大な先人を乗り越えてのERC初優勝への挑戦をスタートさせた。

「雨のせいで(最適なスタート位置が)完全には分からない。確かに道路がキレイだった方が良い部分はあるが、距離の長さも考慮する必要があるからね。でも出だしの結果には満足だよ」と、地元ズリン出身で元マウンテンバイクライダーでもある25歳。

 その晩に実施された市街中心部でのスーパースペシャルには数万人ものファンが詰めかけるなか、同じくチェコ出身のアダム・ブジェジーク(シュコダ・ファビアRSラリー2)やコペツキーらを抑え、こちらもシュコダ&ミシュランを操るワグナーが最速タイムを記録し、まずはラリーリーダーに躍り出た。

「信じられない。観客がこんなにたくさんいるなんて、本当に夢のようだ。マズいことにいくつかミスを犯したが、それでもトップタイムで最高だ。これからの数日間は大変なことになるだろうね」と、バスターミナルと踏切を横切るセクションを含む、高難易度のレイアウトを制したワグナー。

 明けた土曜の本格レグ1は、引き続き高速かつ難しいステージ設定に加え天候要素が各ドライバーを翻弄する展開となり、その最初の犠牲者となったのがコペツキーに。

 首位から0.7秒遅れでSS5をスタートした盟主のシュコダは、左フロントタイヤの空気が抜け総合15番手にまで後退。さらにSS8ではロスを取り返そうと、ハイスピードコーナーで“らしくない”コースオフも演じてしまう。

「ライン上に何かがあって、それにぶつかったようだ。すぐパンクしたから交換しなければならなかったが、その作業にもかなり手間取ったよ」と意気消沈のコペツキー。

 一方、SS2でブレーキトラブルを抱えながら、続くSS4で総合首位に躍り出たストリーテスキーも、左フロントのスローパンクチャーに見舞われつつリーダーの座を死守。また、前日のSSSで20秒加算のペナルティを課されていたカイスは、この日に入って猛追を見せ5ステージ連続でベストを奪取すると、一時はトップまで4.2秒差に迫っていく。

 しかしSS8の中盤で激しい雨に見舞われた際、ハードコンパウンド装着のカイスは大幅なタイムロスを防ぐことができず、このステージだけで41.9秒も遅れて総合4番手に後退した。

「まるでサマータイヤで雪道を走っているようだった」と、こちらも乱高下のラリーが続くカイス。

 その後のSS9が天候による安全上の理由でキャンセルされたため、同じミシュランながらウエットとドライのクロスパターンを装着していたワグナーが総合2番手に浮上し、ドライ用のハンコックで優れた走りを見せたストリーテスキーの背後へと迫る。

「エリック(・カイス)は猛烈なスピードで走っていたが、僕らにはこれ以上何もできなかった。でもラリーの道のりはまだ長いからね」と首位のストリーテスキー。




■立て続けにおきたパンクチャーに「生きた心地がしなかった」

 その言葉どおり、日曜を前に21.1秒のリードで最終レグに挑んだストリーテスキーだったが、いきなり右リヤタイヤの空気が抜け14.5秒までギャップを削られる展開に。さらに続くステージでは左フロントも同じ症状に見舞われ、絶対絶命の窮地に追い込まれる。

 しかし背後のワグナーもマディなセクションでタイムを落とし、午後のループでも追撃は届かず。最終パワーステージを10番手でフィニッシュした24歳が、19.2秒差で自身初のERC優勝を果たした。

「素晴らしい! 僕らをここまでサポートしてくれている皆さんに心から感謝したい。このERC勝利は、それほどまでにとても重要なことなんだ」と、喜びを爆発させたストリーテスキー。

「今朝は最初のステージでパンクして少し怖かった。かなりタイムをロスしたが、続くステージで良いタイムを出せたと思ったら、またパンクした。サービス前の最後のステージでは生きた心地がしなかったが、午後は問題なかったよ」

 自身のERCキャリア最高となる2位に続いたワグナーと、20秒加算から見事な逆転で3位にカムバックしたカイスの続く表彰台となった一方、周囲の期待と注目を一身に背負ったコペツキーのラリーは9位で幕を閉じた。

「いつもと違うラリーだったが、いつかはこういうことが起こるし、起こらなければならない」と語った元ERCチャンピオン。

「確かに言えるのは、ドミニク(・ストリーテスキー)がトップに立って本当にうれしいということ。才能あるチェコ人ドライバーは数多く居るが、なかでもドミニクが最高だと思っているよ」

 ディフェンディング・チャンピオンのヘイデン・パッドン(ヒョンデi20 Nラリー2)はSS8で損傷したタイヤを交換し、トップ10圏外から最終パワーステージの3番手タイムでポイントを加算し、残り2ラウンドで14ポイント差とした。2024年のERCシーズン、続く第7戦はウェールズの初開催地に向かい、8月30~9月1日の週末にターマック戦となる『Rali Ceredigion(ラリー・ケレディジョン)』が予定されている。

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