パートナー関係だったシトロエンとフィアット
ランチア・ガンマとシトロエンCXを目前にすると、1970年代の自動車はより自由で、デザイナーの個性を存分に発揮できたのだと再確認できる。受け止める方も寛大だった。CX 2000と2200は、1975年の欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞している。
【画像】同じ出発点 異なる到達点 CXとガンマ・ベルリーナ 同時期のランチア シトロエンDSも 全113枚
流麗なデザインで多くの注目を集めたDSの後継に当たり、シトロエンの基準からすれば普通さを強めていた。4ドアサルーンだけでなく、リムジンやステーションワゴンへ派生し、1974年から18年間のモデルライフで100万台以上のCXがラインオフした。
他方のランチア・ガンマは、フィアット傘下に収まりつつ、ブランドらしさを強く残したモデル。フルビアと、その派生版の2000の次世代として、1976年に発売されている。ところが信頼性が影響し、生産数は1万5000台にも満たない。
営業成績的には真反対にある2台だが、実は部分的な繋がりを持っている。1970年12月から1973年6月までの約2年半、タイヤメーカーのミシュランの主導で設立された持ち株会社を通じ、シトロエンとフィアットはパートナー関係にあったのだ。
1934年からミシュラン傘下にあったシトロエンは、新型サルーンの開発へ必要な資金を求めていた。ランチアを傘下にするフィアットは、相手の高度な技術へ強い関心を寄せていた。むしろ、買収の意向もあったようだ。
しかし、事前に噂を聞きつけたフランス政府は、イタリアの自動車メーカーの動きに懸念を抱いていた。ひと足先の1968年に、当時の大統領、シャルル・ド・ゴール氏は株式の取り引きへ制限をかけている。
横から見たシルエットが似ている2台
そもそもミシュランも、フランスの誇り高き自動車メーカーを国外の大手へ売り渡すつもりはなかった。フィアットを所有するアニェッリ家は、その事実を理解していなかったようだ。
それでも、CXとガンマは協力関係のなか1970年に開発がスタート。ランチアはY2のコードネームで呼び、シトロエンはプロジェットLと呼んだ。
どちらもパッケージングは良く練られており、車内空間は外寸からすれば広い。2.0Lを超える大きい4気筒エンジンを積み、前輪が駆動されるという共通点を発見できる。
横から見たシルエットが似ているものの、これは偶然だった可能性もある。CXのスタイリングを担当したのは、カーデザイナーのロベール・オプロン氏。ガンマを手掛けたのは、イタリアのレオナルド・フィオラヴァンティ氏だ。
1967年に発表されたコンセプトカー、BMC 1800 ピニンファリーナ・エアロダイナミカもフィオラヴァンティによるものだが、CXと似ていることは否定できない。何らかの影響を受けていたと考えても、不思議ではない。
パートナー関係により、プロジェットLはランチアの水平対向4気筒エンジンを積む計画になった。Y2はハイドロニューマチック・サスペンションをリアに実装し、高圧システムでブレーキを動作させることが検討された。
シャシーを構成するフロアパンも、共有が前提。フランス・パリとイタリア・トリノの技術者は、今のような通信手段がないなか、協働で複数の試作車を製作した。
3年でシャシーを再設計したランチア
新モデルの開発が進む一方、フィアットの上層部はシトロエンとの協力関係が自分たちへ不利になりそうだと気付き始めていた。当時のフィアット会長、ジャンニ・アニェッリ氏は、1972年のトリノ自動車ショーで不満へ言及。関係悪化は割けられなかった。
ミシュランは、1973年6月にフィアット株の一部を購入。ランチアとの協力関係は破談となり、結果的に1975年からプジョーがシトロエンの親会社になっている。
最終的に、シトロエンはCXへ設計の古い直列4気筒エンジンを選んでいる。ランチアの水平対向4気筒エンジンは、以前から信頼性の評判が良くなかった。ロータリーエンジンも想定され、エンジンルームは必要以上に大きくしたくない考えもあった。
ランチアの技術者も、重く複雑なハイドロ・サスペンションの採用が見送られたことへ安堵したことだろう。彼らは3年でシャシーを再設計。ベータ譲りとなる、フロントがマクファーソンストラット式、リアがストラット式のコイルスプリングへ改めた。
開発チームを率いたセルジオ・カムッフォ氏は、過去にベータを2年で仕上げていた。短期間での進行には慣れていたのかもしれない。シトロエンとのパートナー関係が、両社の足を引っ張ったことは間違いない。
水平対向4気筒エンジンの設計を担当したのは、エットーレ・ザッコーネ・ミナ氏。1969年にフィアットへ買収されたランチアは、それまで新エンジンの開発計画を持っていなかった。
信頼性に課題があった水平対向ユニット
コンパクトな4気筒ユニットは新設計ながら、先代のフルビアに搭載されていたのも水平対向ユニットで、自然な展開といえた。フロントアクスルより前方に搭載するという、レイアウトを想定した決定でもあった。
タイミングチェーンを採用し、ヘッドはシングル・オーバーヘッド・カム。カムシャフト駆動のパワーステアリング・ポンプが組まれ、ステアリングへ強い負荷が掛かるとカムタイミングが狂い、エンジンを駄目にする可能性をはらんでいたが。
シリンダーはオーバースクエアで、排気量は2484cc。当時は世界最大の4気筒ユニットでありながら、水平対向のおかげで高さを抑えられた。フロントノーズは滑らかに傾斜し、空気抵抗を示すCd値は0.37と優秀といえた。CXより0.01高いだけだった。
ガンマ・ベルリーナの車重は1320kgと比較的軽く、操縦性にも優れていた。エンジンの信頼性が高ければ、多くの支持を集めた可能性はある。同クラスに位置するCXは1974年に発表されていたが、1976年までに10万台以上が売れている。
ただし、当初はターゲット層が異なっていた。当初のCXは、DSと同じキャブレター・エンジンしか選べなかった。ガンマに並ぶ動力性能を持つ、最高出力130psを誇るGTiが登場するまで、3年を待つ必要があった。
この続きは後編にて。
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