メカニカルな部分でつながりの濃いAクラス
text:Lawrence Allan(ローレンス・アラン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
2014年に販売が始まった、初代メルセデス・ベンツGLA。本格的なSUVを展開するメルセデス・ベンツの中でも、Aクラスとは違うモデルとしての変化は得ていた。
しかし実際は、ホイールアーチなどにワイルドなスタイリング要素を追加した、わずかに車内の広いAクラスだった。マーケティング要素が強かったものの、比較的穏やかなプレミアム・ブランドのモデルレンジの中では、充分な注目を集めていた。
ジャガーやレクサス、ボルボからの、コンパクト・クロスオーバー市場への参入はまだ。アウディQ3とBMW X1は、発表から時間が少し過ぎていた。
2代目へと生まれ変わったメルセデス・ベンツGLAは、もはやAクラスのお化粧直し的なモデルではない。プレミアム・ブランド各社からライバルモデルがリリースされる中で、より本格的なSUVへと生まれ変わった。
コンパクトSUVとしてメルセデス・ベンツは、GLAのほかにボクシーでややレトロなスタイリングをまとう、GLBも投入している。市場の人気をうかがわせる流れだ。
初代と同様に、GLAは基本的にメカニカルな部分でAクラスとのつながりが濃い。プラットフォームだけでなく、エンジンや技術面も共有している。英国ではトップグレードとなる、今回のディーゼルエンジン版、GLA 220dでも同様だ。
初代より広さを増したインテリア
デザインへの力の入れ具合は、明らかに初代以上。全高は初代GLAより104mmも高く、全幅も広げられている。全長は15mm短く、ホイールベースは30mm長い。
シルエットはAクラスとの近さを感じさせるが、ファミリーカーとしての実力は高められている。特にリアシートの広さは、先代の弱点だった。2代目GLAでは、190cm近い身長のドライバーが座っても、リアシートにも同じ身長の大人が座れる空間がある。
荷室の容量は435Lで、コンパクトSUVの中では小さい方。しかし、リアシートは左右個別に前へスライドできる。これ以上大きい荷室がほしいなら、GLBということになる。
車内に乗り込むと、Aクラスと関係が近いことが良くわかるが、デザインは高級感がある。タッチモニターや音声認識で操作できる、MBUXと呼ばれるインフォテインメント・システムも搭載される。
インフォテインメント・システム用とメーターパネル用に、光沢の強い10.2インチのモニターが2面並ぶが、筆者には少し安っぽく見える。より高級感を味わいたいのなら、インテリアトリムは上級のものを選んだ方が良い。
Aクラスと同様に、少し詰めが甘い部分もある。音声やモニター、タッチセンサーでの操作が可能なインフォテインメント・システムは、ロータリー・コントローラーの付くBMW iドライブより移動中の操作がしにくい。
プラスティック製パネルの一部は傷が付きやすいし、ドアパネルは中の空洞を感じてしまう。試乗車では、インテリアのどこからか部品が揺れる音も聞こえてきた。4万ポンド(528万円)もするクルマなのに。
乗り心地も操縦性も大幅に向上
車内空間は、Aクラスよりはるかに高いルーフラインのおかげで、まったく別の印象。広さも増しているだけでなく、グラスエリアが大きくなったことで、全方向で視界が向上している。
着座位置も高い。初代GLAでは、その低さがマイナスポイントだった。シートの位置が高く、調整代も充分に大きい。広くなったリアシートは、足先を伸ばせる前席下の空間にも余裕が増えた。
確認はこれくらいにして、一般道へ出てみよう。
2代目メルセデス-ベンツGLAは、乗り心地が良くなり、より直感的な操縦性を獲得したことは明らか。リラックスして運転できる。路上での能力を、大きく拡張した。
特に初代と比較すると、乗り心地は大幅に改善。19インチのホイールと、15mm車高が下がるAMGラインのサスペンションの組み合わせは、快適性でプラスに働きにくい。
しかし、速度を落としたくなる大きなくぼみ以外、車内を充分に落ち着きのある空間に保ってくれる。タイヤの扁平率が50と肉厚なことも助けているはず。
スプリングレートはAクラスより柔らかいようだし、車高も高い。それでもコーナーでの身のこなしは評価できる。ボディーロールは充分に抑制され、フロントタイヤのグリップ力も不足はない。増えた車重を感じさせない。
英国仕様の220dは、4マティックと呼ばれる四輪駆動のみの設定。乾燥路面では、リアタイヤへどれだけのトルクが伝えられているのか、感じ取ることは難しい。
GLAのステアリングフィールは、Aクラスと同じくらい正確で軽快。それでも多くのライバル・クロスオーバーと同様に、ドライバーとの一体感は得にくい。
コンパクトSUVの中で優れた競争力
220dに搭載されるディーゼルエンジンは、力強くリニア。ノイズや振動は見事に抑え込まれている。ここでも初代GLAとの差は明らか。期待以上のスピードを簡単に引き出せるから、それほど熱くならないドライバーなら、安価な200dを検討しても良いと思う。
組み合わされるトランスミッションは8速AT。変速が時折もたつく場面があるものの、エンジンとの相性は悪くない。
もし初代GLAからの買い替えを検討しているなら、2代目は迷う必要はないだろう。快適性や洗練性、スピード、技術に品質など、幅広い面でクルマとして優れた進化を獲得している。
そのかわり、価格も全体的に上昇している。Aクラスとの親近性を考えると、引っかかる部分でもある。残価設定による月額の支払料金なら、悪くない条件にはなりそうだ。
BMW X1やレンジローバー・イヴォーク、ボルボXC40といったライバルと並べれば、価格も違った見方ができるはず。ただし、英国やスウェーデン生まれのライバルの方が、同価格帯では注目度も特別さも強いとは思う。
コンパクトSUVという分野を広く見れば、メルセデス・ベンツGLAは優れた競争力を備えている。プレミアム・ブランドを考えているなら、検討する価値は間違いなくある。
メルセデス-ベンツGLA 220d AMGライン(英国仕様)のスペック
価格:4万1430ポンド(546万円)
全長:4410mm
全幅:1834mm
全高:1616mm
最高速度:218km/h
0-100km/h加速:7.3秒
燃費:17.6km/L
CO2排出量:130g/km
乾燥重量:1670kg
パワートレイン:直列4気筒1950ccターボチャージャー
使用燃料:軽油
最高出力:189ps/3800rpm
最大トルク:40.7kg-m/1600-2600rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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