FIAでは最近、要職の離脱が相次いでいる。先日、F1レーススチュワードを解任されたティム・メイヤーは、FIA会長のモハメド・ベン・スレイエムが「自らの意見を直接的に表明した」と非難した。
F1では各レースごとに審査委員会が組織され、独立した立場でレースを監督しているが、メイヤー曰くベン・スレイエム会長は「審査委員に直接ではなく、自身のスタッフを介して」意見を伝えていたという。
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またメイヤーは、レッドブルのマックス・フェルスタッペンやフェラーリのシャルル・ルクレールらF1ドライバーが公の場で暴言を吐いた際に罰則を科すという物議を醸した決定についても、ベン・スレイエム会長が主導したものだったと明かした。
メイヤーはBBC Sportに対してこう語った。
「暴言を吐いたドライバーにペナルティを科すというのは彼(ベン・スレイエム会長)の見解であり、その見解が反映された形だ」
「彼が自分の意見を明確にするために直接関与したことも何度かある。審査委員に直接ではなく、スタッフを介してだ」
「審査委員の仕事の一部は、FIAの規則に関する方針に基づいて執行することだ。暴言に関しては規則で禁止されているので、それを処罰すること自体が不公平というわけではない。ただし、比較的軽い暴言を理由にドライバーを追及するのが賢明かどうかは別問題だ」
「ほとんどのドライバーにとって、英語は第2、第3、第4の言語だ。カートを始めたばかりの少年たちにとって、英語で最初に教えられる言葉がそういった言葉であることはよくある。その(罰則を科す)目的が自らの力を誇示することでないのなら、この問題にもっとうまく対処する方法があるはずだ」
ベン・スレイエム会長は昨年にも、F1サウジアラビアGPでアストンマーティンのフェルナンド・アロンソに科された10秒ペナルティを覆すよう介入したと告発されており、内部調査の対象となっていた。そのため、今回のメイヤーの“告発”は非常に深刻なものだと言える。
上記のレースでは、アロンソがスタート位置の違反でペナルティを受けた後、そのペナルティを消化するためにピットインした際、リヤジャッキが触れてしまったことが、レギュレーションで禁止されている“ペナルティ消化中の作業”とみなされ、さらに10秒のペナルティを受けてしまった。
告発者によると、ベン・スレイエム会長は同レースに公式な立場で訪れていたFIA中東・北アフリカ地域の競技部門副会長、シェイク・アブドゥラ・ビン・ハマド・ビン・イサ・アル・ハリーファに対し、アロンソのペナルティを取り消すべきだと意見したという。実際にアロンソのペナルティは撤回されることになったのだが、この件についてFIAは独自調査をした結果、告発を裏付ける証拠は見つからず、ベン・スレイエム会長は潔白とされた。
■テキストメッセージによる解雇
FIAで15年間働いたメイヤーだが、先日ベン・スレイエム会長の補佐によってメールで解雇を知らされたという。彼は「ボランティアに依存している団体が、長年貢献してきた人物をテキストメッセージで解雇するというのは、運営に対する評価を下げるものだ」と非難した。
またメイヤーは自身が解雇された理由について、F1アメリカGPでの観客侵入事件を受けて、ベン・スレイエム会長の気分を害したからだと考えている。
アメリカGPでは、レース後に観客が許可されていないタイミングでコースに侵入。この一件で開催サーキットのCOTA(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)に罰金が科されたが、COTA側が異議を申し立てたため、再審が行なわれた。その監督をしていたのがメイヤーだった。
メイヤーはスポーティングオーガナイザーの職務として、公式の罰則の文言からCOTA側に過失があったと示唆するような表現を取り除こうとしていた。その後メイヤーはサンパウロGPでスチュワードパネルから外され、先日解雇された。
メイヤーは次のように語る。
「公式な理由としては、私がオーガナイザーとして再審手続きを主導していたため、これがFIAとの利益相反にあたると判断された、というものになるだろう」
「しかし、それは私が解雇された理由ではない。オーガナイザーというのは、私が12年以上にわたってFIAに利益をもたらしながら果たしてきた役割だ。これは新しいことではない」
「この件が穏便かつ友好的に解決されたにもかかわらず、彼(ベン・スレイエム会長)は依然として腹を立てており、私を解雇することに決めたのだ。スチュワードとして15年間ボランティアで時間を捧げ、10年間他のスチュワードを指導し、さらに他の役割で何百時間もボランティア活動をしてきたにもかかわらず、彼の補佐官のひとりからのテキストメッセージで解雇を告げられた」
「FIAと問題を起こそうという意図はなかったし、私はアメリカで行なわれる3つのグランプリのスポーツオーガナイザーとして活動を続ける。これは些細なことであり、誰かがこのような不快感を抱くのは不可解だ」
■相次ぐFIAからの離脱
前述の通り、ここ最近FIAから離脱したのはメイヤーだけではない。F1レースディレクターのニールス・ウィティヒが解任された後、その後任となったルイ・マルケスに代わり、FIA F2レースディレクターの代理を務める予定だったジャネット・タンも、不可解な形で離脱することになった。
これによりカタールGPでは、マルケスがF1とF2を両方担当する形となるが、メイヤーはこういった動きも憂慮している。
「彼女(タン)はFIAに求められる人物像の典型で、次世代のレースディレクターの中で最高の逸材だった。状況はよく分からないが、彼女のような人物を引き留めるために全力を尽くすべきだ」
「彼らの仕事がどれほど大変かを知っている。私はルイのことも好きだが、彼にはとてつもないプレッシャーがかかるだろう」
「FIAの最高位であるプラチナレベルのレースディレクターはそう多くない。私もそのひとりだが、それを手にするだけでも非常に大変だ。仕事を正しく行なっているなら、毎日、様々な問題について考え、胃潰瘍になりそうな気分で目を覚ますだろう」
「彼ら(FIA)のしていることは自分たちの首を絞めることになっている。本当に、この仕事を任せられる人材がいなくなりつつある」
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