5月18~19日の週末にシドニー・モータースポーツパークで開幕を迎えるTCRオーストラリアの初年度シーズンに向け、参戦チームとドライバー体制が続々と決定。ケリー・レーシングからは2016年オーストラリア・ラリー選手権チャンピオンのモリー・テイラーがスバルWRX STI TCRを、ポルシェ・カレラカップやV8ユートなどに参戦経験を持つチェルシー・アンジェロがオペルのシートを獲得するなど、多数の女性ドライバー参戦が決まっている。
現地オーストラリア法人のファクトリーバックアップを受ける"Subaru do Motorsport team(スバル・ドゥ・モータースポートチーム)"から、ARCオーストラリア・ラリー選手権に参戦を続けるテイラーは、昨年末にイタリアに飛び、トップラン・モータースポーツの製作するスバルWRX STI TCRをテストするなど、スバルとのコネクションでTCRカーをサンプリングする機会を得ていた。
TCRオーストラリア:VASCでニッサンを走らせるケリー・レーシング、スバルとオペルで参戦へ
その後、VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーでニッサン・アルティマを走らせるケリー・レーシングが2台のスバル、2台のオペル・アストラTCRの計4台体制で、この新興ツーリングカー・シリーズに進出することを発表すると、その独自のマシンチョイスからテイラーの起用が取り沙汰される状況となっていた。
「私にとって本当にエキサイティングな機会で、サーキットレースにデビューするチャンスをくれたケリー・レーシングには心から感謝している」と、期待を語った30歳のテイラー。
「ラリーはつねに情熱の源で、そのフィールドで私はドライバーとして成長し、毎日の時間を捧げてきた。でも同時に、つねに新たな挑戦を求めてもいるの」
2019年シーズンも引き続き、WRX STIでARCにフル参戦するプログラムを発表済みのテイラーは、TCRオーストラリア初年度のカレンダーでは必然的にイベント日程のバッティングがない最初の5戦のみのエントリーとなる予定で、第6戦サンダウン、第7戦ベンドの各ラウンドでは代役のドライバーが起用されることになる。
「TCRはとても興味を持って見ていたシリーズだし、とくにこの国でもチャンピオンシップが創設され、そこにスバルのマシンが参戦するとなれば、機会を逃すわけにはいかないと思ったの」と続けたテイラー。
「昨年末、イタリアに滞在した時に初めてTCRカーを経験したけど、素晴らしいフィーリングだったわ。ラリーに特化した私のドライビングスタイルをサーキットでのレース向けにアジャストする必要があるのは理解しているし、学ぶべきことが多いことも分かっている」
「でも、ケリー・レーシングのサポートがとても大きな助けになってくれると期待しているの。だって彼らはVASCでの膨大なノウハウを持つ、ツーリングカー・レースのエキスパートだし、私の力を最大限に引き出す術を知っているはずだから」
5月上旬にはシリーズ開幕に先立ち、VASCも開催されるメルボルン近郊のウィントン・モーター・レースウェイで合同テストが実施され、多くの参戦チームとオーストラリアに上陸したTCR車両にとって初のテスト機会となった。
「ウィントンでの1日は、私にとっても非常に重要な機会になったわ。イタリアのときとは条件も大きく異なっていたしね」と、テストを振り返ったテイラー。
「周回のたびにエンジニアとともにデータを付け合わせて、改善を図っていく作業はとても新鮮だったわ。それに普段なら誰かが車内にいて私に話しかけてくれるのだけど、今回はコクピットに私ひとり。それにグラベルからターマックの変化を上回るレベルで、ドライビングに緻密さと正確性を要求される。15台のマシンがともに走りながら、タイムを縮める勝負を繰り広げるのも、本当に大きな学習体験になった」
そのテイラーのチームメイトでもあるVASC経験者のアレックス・ルーロ、アンドレ・ハイムガートナーに並んで、ケリー・レーシング最後のドライバーも女性となり、シングルシーターを経てVASC下部のSuper2などに参戦、2018年はポルシェ・ミシュランGT3カップ・チャレンジ・オーストラリアで総合5位となったチェルシー・アンジェロとの契約も発表された。
「元VASCドライバー、ポルシェ経験者、ラリー王者に多数の女性ドライバー。本当の多様性を具現化したTCRオーストラリアに参戦できるのは光栄よ」と、22歳のアンジェロ。
「私は前輪駆動のマシンでレースをしたことがないから、できる限り早く頭を切り替えたいと思っているわ。テストではスバルをドライブしたけれど、シリーズではオペルを走らせることになると思う」
「テストでは誰もがリヤタイヤの温度を上げようと必死だったのが、私にとってトリッキーな経験だった。シドニーの開幕戦までに多くの人からレクチャーを受けたいけれど、自分自身に過度な期待を課してはいないし、オープンマインドで挑めるのはとてもヘルシーよ」
さらにVASCで長年活躍を演じた大ベテラン、ジェイソン・ブライトが率いるアライアンス・ オートスポーツ・チームは、ニュージーランド出身のアレクサンドラ・ホイットリー起用をアナウンス。ブライトとともにフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRをドライブすることが決まった。
NZで自らのチームを立ち上げ、多くのカテゴリーに参戦するホイットリーは、2018年に耐久シリーズのタイトルを獲得したほか、ピックアップ・トラックを用いたNZ V8ユート・レーシング・シリーズで1勝を挙げ、ランキング6位に入っている。
「でも、シドニー・モータースポーツパークを走ったこともなけば、前輪駆動のマシンでレースしたこともないの(笑)。だからVASC経験者とドアをこすりながら走ることができたら、私はうまくやったと言えると思うわ。この機会をくれたジェイソンと(ロジスティクスを担当する)マット・ストーン・レーシングに感謝したいと思う」
その他、アルファロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCRとルノー・メガーヌR.S.TCRを投入するGRM(ギャリー・ロジャース・モータースポーツ)は、ジェームス・モファットをルノーのエースに起用。同じくVASC経験者のトニー・ダルベルトはホンダのサポートするFK8シビック・タイプR TCRをドライブ。ヒュンダイi30 N TCR、アウディRS3 LMSのエントリーも決まっている。
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