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新型 メルセデス・ベンツE300de 環境性能とパフォーマンスのバランス

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新型 メルセデス・ベンツE300de 環境性能とパフォーマンスのバランス

もくじ

どんなクルマ?
ー PHEVが抱える課題を解決
どんな感じ?
ー 一度は途絶えたディーゼルエンジンPHEV
ー EVモードでも不満のないドライバビリティ
ー 小まめな充電で46.0km/ℓを記録
ー 隠せない車重増は360kg
ー 広い荷室が希望なら、エステートという選択も
「買い」か?
ー EV過渡期の中で光るE300deの説得力
スペック
ー メルセデス・ベンツE300de EQ Power SEのスペック

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どんなクルマ?

PHEVが抱える課題を解決

もしかすると、現在市場に出ているプラグイン・ハイブリッド(PHEV)モデルが抱えている課題の、解決策になりえるかもしれない。新しいE300「de」を試乗して、そんな感想を抱いた。

そもそもPHEVという技術は、今後避けられないであろう自動車のEV化に対する、踏み台のひとつとなっていることは間違いない。加えてPHEVに与えられている大幅な税金優遇策は、社用車としても、ドライバーにとっても大きな恩恵になっている。日本でも同様だ。

しかし、ディーゼルエンジン車からガソリンエンジンをベースにしたPHEVに乗り換えるとわかるのだが、長距離を走るほどに燃費は悪化し、燃料費が膨らんでしまう。ランニングコストによって、長期的に見た場合のお得感が減少してしまうだけでなく、環境面での強みも薄まってしまうのだ。

欧州のように走行距離が多い環境の場合、現状のPHEVが抱える問題が露呈してくる。長くはないEVモードでの航続距離が尽きると、さほど効率の良いとはいえない、重たいガソリンエンジン車になってしまうという事実。われわれはそれを学んだ。

三菱アウトランダーPHEVは優れたクルマだが、実際に高速道路でバッテリーを使い果たしてしまうと、その後の燃費は10.0km/ℓといったところ。そんな課題を解決したと思えるのが、メルセデス・ベンツが発表した、E300de。ディーゼルエンジンを搭載したプラグイン・ハイブリッドとなる。早速走り出してみよう。

どんな感じ?

一度は途絶えたディーゼルエンジンPHEV

この新しいグレードは、Eセグメントだけでなく、市場全体にとってもユニークな試みだと思う。ボルボやプジョー、アウディなどは以前に英国でディーゼルエンジンのPHEVを販売していたが、ヒットすることなく、現在では姿を消してしまっている。燃費に対する思考の変化とともに一度は途絶えてしまったが、E300deは価値を見直すのに充分な内容を備えている。

ボンネットの下に搭載されるのは、2.0ℓのOM654型と呼ばれるディーゼルユニットで、4気筒から193psを発生させる。E220dでは不足のない能力を発揮しているエンジンだ。そこに組み合わされるのが、121psを発生させる電気モーター。注目すべきは、44.8kg-mという大きなトルクだろう。

システム総合としては、最高出力が306ps、最大トルクは71.2kg-mにも達する。ガソリンエンジンのハイブリッドモデル、E300eよりも14ps劣ってはいるが、最大トルクは同値となる。

13.5kWhのリチウムイオン・バッテリーを搭載し、電動で走行可能な距離は54km。内燃機関が抱える、都市部での大気汚染という課題を克服するには充分な数字といえる。バッテリーは7.2kWhの急速充電を用いれば、1時間15分程度で充電が可能で、家庭用の充電器なら5時間で満たすことができる。

EVモードでも不満のないドライバビリティ

パワーを入れると、静かに目を覚ます。デフォルトではコンフォートかハイブリッド・モードが選択される。パワートレインは極力EVとしてクルマを走らせようとするから、静寂の快適さを楽しむことができる。

スロットル操作に合わせて、EVモードのまま、まったく不満のない運転を実現させてくれる。気を揉むことなく、高速道路への合流もスムーズにこなすことができるはずだ。バッテリーに充分な電力が蓄えられている限り、よほどの急勾配やフルスロットルを与えなければ、エンジンは目をさますことはない。ただし、ガソリン車の侵入が規制されている都市部では、うかつにアクセルを踏み込んではいけない。

仮にエンジンが目を覚ましても、上質な仕上がりに感銘を受ける。ただ、このクラスでは最も存在感の薄い4気筒ディーゼルエンジンであることには間違いないが、流石にEVモードの静寂に包まれていると、気になることも事実。特に低速域で走行していると明確で、バッテリーを充電して、エンジンを止めたいと感じるかもしれない。

コンフォートモードでは、ひとつ指摘することがあった。高速道度への合流などでは、かなりのパワーを必要とするが、エンジンを始動するかどうかシステムが決めかねる場面が見られる。加速時に一瞬、クルマのためらいを感じてしまう。

小まめな充電で46.0km/ℓを記録

しかし80km/hを超えた速度域になると、ディーゼルエンジンと電気モーターとの駆動力のバトンタッチは比較的シームレスに行われるようになる。Eクラスの本領発揮といったところ。目覚めたエンジンは、クルマを進ませる力とバッテリーへ電力を蓄える力とを、とてもバランスよく振り分けて回転する。

実世界でのエネルギー効率は、すこぶる優れていることがわかる。高速道路と一般道を交えて180kmほどを走行した行程では、充電ポイントで何度かバッテリーをフルにする走り方で、燃費は46.0km/ℓに達している。電気モーターが絶妙な仕事ぶりを発揮してくれたといえる。

加えてバッテリーが空の状態でも燃費は17.7km/ℓほどを記録。同じ条件で、Eクラスほどのパフォーマンスを備えたプラグイン・ハイブリッド・モデルが、同等の燃費で走行することは不可能であろう。

仮にキビキビとした走りを楽しみたいと思うなら、ドライビングモードをスポーツかスポーツ+にすれば良い。エンジンは常時燃焼を続け、モーターと協調しながらレスポンスに優れたパフォーマンスを、速度域に問わず容易に味わわせてくれる。

隠せない車重増は360kg

静止状態からのスタートダッシュも機敏。ディーゼルエンジンが最大トルクを発生する回転域に到達する前に、最大トルクが瞬時に立ち上がるモーターがしっかりアシストする。エンジン自体は6気筒ユニットほどスムーズではないものの、燃費の良さを考えれば、充分なトレードオフが成り立つと思う。

プラグイン・ハイブリッドだから、ディーゼルエンジンを活用してバッテリーを温存したり、エンジンの力や回生ブレーキを利用して、燃費効率を多少犠牲にしつつ、バッテリーを充電することもできる。また回生ブレーキ機能には、おまけともいえる機能が付いてくる。

アダプティブ・クルーズコントロールが備わらない廉価版のSEグレードであっても、回生効率を高めるために前方車両との距離を測るセンサーが付いており、先行車両が減速すると、自動的に自車の速度も落としてくれるのだ。この機能は、思いのほか便利に感じられた。

標準の内燃機関モデルからの妥協点がないわけではない。Eクラスのプラットフォームは、最新のアウディやBMWなどと異なり、プラグイン・ハイブリッド化が簡単ではなかったはず。結果として、E220dから360kgも車重が増えてしまっている。そのため、コントロール性もE220dよりも劣っており、ライバルよりダイナミックなステアリング・レスポンスを示す、とはいい難い。

広い荷室が希望なら、エステートという選択も

車重は乗り心地にも影響を及ぼしている。依然として非常に快適な部類で、長距離もまったくいとわないものの、標準のEクラスが備えている心地良いしなやかさは失われている。車重の増加に耐えうる様に、サスペンションがやや硬めに設定し直されているためだろう。

快適性ではコイルスプリングに勝るエアサスペンションが今回の試乗車には装備されていたが、基本的な乗り心地の課題解決にはつながっていないようだ。アダプティブ・ダンパーの設定はない。また回生ブレーキ機能を備えるクルマでは一般的だが、ブレーキペダルに伝わる感覚がほとんどなく、微妙な調整が難しく感じられた。

身近になりつつあるPHEVだが、実用性の面でも多少の犠牲はある。ラゲッジスペースは、通常のエンジンモデルの場合は400ℓのところ、E300deの場合は140ℓ少ない260ℓに減少している。トランクリッドを開けると、フロアが不自然に切り上がっているのがわかる。

なお、ガソリンエンジンを搭載するE300eとは異なり、ディーゼルエンジン版のE300deにはエステートも登場予定。ラゲッジスペースに余裕が欲しい向きは、こちらも検討されたし。

「買い」か?

EV過渡期の中で光るE300deの説得力

通常の内燃モデルを選択するべきか、E300deを選択するべきかは、ドライバーの環境によって変わってくる。ロンドンのコンジェスチョン・チャージ(渋滞税)や都市部でのウルトラ・ローエミッション・ゾーン料金などに対応するためだけなら、より安価で洗練性も良いE300eか、より優れたBMW530eを選んだ方が良いだろう。長距離を走行しない限り、イニシャルコストを回収することは難しいかもしれない。

クルマで通勤しており、休暇では高速道路を使って小旅行を楽しむようなドライバーには、E300deのメリットが立ってくる。バッテリーが空になっても、良好な燃費を得られる、現在では唯一のPHEVだといえるからだ。年間走行距離の多いオーナーや、社用車として管理する企業にとって、魅力的なパワートレインだといえる。


推奨を控えるほどではないにしろ、マイナスポイントもある。洗練性とダイナミクス性能では、標準のEクラスより劣るし、価格も安くはない。同クラスのプレミアム・ブランドがリリースするPHEVと比較して、割高というわけではないけれど。

だとしても、より値段が張り利便性でも劣る現状のEVと比較すると、E300deの説得力は一層強まる。走行パフォーマンスに航続距離、優れた環境性能や充電時間などを総合的に判断すれば、このクルマの優位性に気づくはずだ。

メルセデス・ベンツE300de EQ Power SEのスペック

■価格 4万7700ポンド(691万円)
■全長×全幅×全高 4923✕1852✕1468mm
■最高速度 249km/h
0-100km/h加速 5.9秒
■燃費 71.4km/ℓ(WLTP)
■CO2排出量 -
■乾燥重量 2060kg
■パワートレイン 直列4気筒1950ccターボ+電気モーター
■使用燃料 軽油
■バッテリー 13.5kWhリチウムイオン
■最高出力 306ps/1200-2800rpm(システム総合)
■最大トルク 71.2kg-m/1200-2800rpm(システム総合)
■ギアボックス 9速オートマティック

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