DBSスーパーレッジェーラ・コンコルド・エディション
執筆:James Attwood(ジェームス・アトウッド)
【画像】アストン マーティン Q部門が手掛けたモデルたち 最新作のヴィクターも 全83枚
撮影:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
アストン マーティンが有する3つの工場は、すべてが英国空軍の基地だった場所にある。そこでQ部門は、航空機をテーマにしたウイング・シリーズを設定。特別なモデルをラインナップしている。
最新のウイング・シリーズとなるのが、DBSスーパーレッジェーラ・コンコルド・エディション。10台の限定で、2021年の春から生産が始まっている。今回撮影できたのは、工場を最初にラインオフしたクルマだ。
コンコルドは、英仏共同で開発された超音速旅客機。ご記憶の読者も多いだろう。コンコルド・エディションはその旅客機へ敬意を表した限定車で、多くの特徴的なデザインが落とし込まれている。
「このプロジェクトに参加でき、光栄に思います」。とサイモン・レーン氏。「フィルトンの街にある、コンコルド・ミュージアムとブリティッシュ・エアウェイズ・ヘリテイジセンターを訪問。多くのアイデアを得ることができました」
コンコルドは20機が製造され、10機づつ、英国とフランスの航空機会社へ納入された。一方のコンコルド・エディションは、旧コンコルド工場の敷地内にある、アストン マーティンのブリストル・ディーラーを通じて販売された。
エアバス社とブリティッシュ・エアウェイズ社の協力を得て、10台のクルマにはフィルトン工場で作られたコンコルドの登録コードと同じものが割り振られているという。ほかにも、航空機マニアを喜ばせる作り込みが沢山ある。
実機のアルミを溶かしたシフトパドル
「シフトパドルは、ブリティッシュ・エアウェイズから提供されたアルミ材を用いています。ヒースロー空港に残る、コンコルドの実機から外したアルミ材を溶かし、シフトパドルとして成形しています。実際のコンコルドに触れながら、運転できるのです」
「カーペットも、未使用だったコンコルドの在庫品を用いています。飛行中に少し伸びる機体に合わせて伸縮する、特別設計の生地なんです。コンコルドは高速なあまり、飛行中に熱で全長が20cmほど伸びたんですよ」
さらにコンコルド・エディションには、専用のラゲッジセットが付いている。コンコルドの最終飛行で乗客へ提供されたものがベースで、ブリティッシュ・エアウェイズのカラーで仕上げられた。
インテリアでは、天井の内張りにソニックブームをモチーフとしたグラフィックがあしらわれる。サンバイザーも専用品だ。
ボディまわりで最大の特徴となるのが、フロントフェンダーに切られたエアベント。コンコルドの機体をモチーフにした造形が与えられている。「とても美しいピースです。アルミニウム・ビレットで削り出され、丁寧に手で磨かれています」
サイモン氏も特別な思い入れがあるようだ。「特に際立つ部分といえます。われわれが愛する職人技を表現するものです」
ちなみにプロジェクトの一環として、コンコルド・エディションの売上金の一部を、アストン マーティンはエアリーグ・トラストへ寄付している。恵まれない子どもたちへ飛行機会を設けたり、技術職への就職を支援する活動だ。
DB5 ゴールドフィンガー
DB5 ゴールドフィンガーは、Q部門が英国の秘密情報部、通称MI6の生み出したマシンと一致するように全力を尽くしたクルマ。ゴールドフィンガー仕様のDB5が、合計25台作られた。
ボンドカーとして最も有名なクルマの、完璧なレプリカといって良いだろう。映画で用いられているガジェット類の多くが、稼働状態で搭載されている。330万ポンド(5億160万円)というお値段が付いているが、公道は走れない。
「ワークス・テーラード部門からいるスタッフは、DB5のレプリカには慣れています」。とサイモン氏が振り返る。007シリーズで特殊効果のスーパーバイザーを務める、クリス・コーボールド氏の協力を得て完成したものだという。
「課題だったのは、当時のDB5は2台としてまったく同じには作られていないことでした。多くのクルマを調達し、現代基準に照らし合わせ、標準とする技術的な標準を設定しています。チャレンジングな仕事でした」
ガジェット類の再現も簡単な内容ではなかったが、サイモン氏は楽しかったとも話す。「技術的に動きを再現するだけでも、チームにとっては素晴らしい冒険になりました」
「当時のボンドカーより安全で信頼性を持たせ、何度もオーナーが楽しめる必要がありました」。回転するナンバープレートや機関銃(弾は出ない)、防弾リフレクター、オイルスプレー、スモークスクリーンなどの機能が搭載されている。
防弾ディフレクターは実際に防弾
「例えば機関銃は、発射時の閃光を再現するため、スパークプラグを内蔵したアセチレン・ボトルを利用。発射した時の反動も再現しつつ、堅牢なシステムを作る必要がありました。弾の発射音は、MP3プレイヤーで再現しています」
「制作チームは、ガジェット類の再現に相当な力を注ぎました。防弾ディフレクターは、実際に防弾です。本当に防げるか、銃弾を打ち込んで確かめています」。しかも、DB5の見た目は損なわれていない。
すべてのガジェットを再現できたわけではない。タイヤのハブから飛び出るシュレッダーは、荷室にしまってある。必要になれば、オーナーが手で取り付けることは可能だ。
助手席の邪魔な人物を、空中に打ち出すこともできない。だが、助手席側のルーフパネルは取り外せる。
サイモン氏がお気に入りのガジェットだと話すのが、ナビゲーション。「スライドカバーを再現できました。画面の表示は、レーダーノイズが出るゴールドフィンガーとほぼ同じ。衛生ナビとしても利用できます」
「1番クールなのは、ガジェット類を車外からでも操作できるリモコンでしょうね。お客様へ喜んでもらえるように準備しました。車内のコントロールパネルに似せてあります」
「当時風のスイッチが並び、大きな赤い発射ボタンも付いています。ちょっとした話題のタネ。コレクターの方にも、納得していただけるはずです」
V8 シグネット
トヨタが以前製造していた、iQというコンパクトカーをご記憶の方も多いだろう。そのiQをベースにアストン マーティンはシグネットを生み出したが、V8 シグネットは、Q部門が制作した特別な1台だ。
小さなボディに、Q部門が4.7LのV8エンジンを押し込んでいる。ヴァンテージSにも搭載されるユニットで、436psを発揮する。「Q部門で思い浮かんだアイデアです。シグネットに、V8エンジンを搭載したら面白いだろうと」。サイモン氏が振り返る。
「バルカンとワン-77を所有するロイヤルカスタマーの一人が、実現して欲しいと話したんです。彼はサーキット走行会などを通じて、われわれの技術者と交流がありました。技術者が実現したいと考えていると、わかっていたんです」
「このクルマは、本当にワンオフ・モデルとして作りました。一種の娯楽として。ですが、驚くほど運転して楽しいシグネットになりました。ホイールベースが短いクルマに、V8エンジンを載せたのですから、想像したとおりです」
可能だと考えるのなら実現へ挑戦する
サイモン氏は、小さなボディにV8エンジンを搭載することは簡単ではないと認める。シャシーと統合したロールケージやフロント・バルクヘッド、トランスミッション・トンネルなどを新たに設計している。
「V8 シグネットには、多くのV8ヴァンテージの要素が盛り込まれています。ボディシェルはシグネットですが、プロペラシャフトはアストン マーティン製の短い特注。トランスミッションも、ヴァンテージSのものです」
「専用部品も多く、インテリアも大幅に手が加えられています。量産予定はありませんでしたが、Q部門ができることを表現する素晴らしいデモカーにはなりました」
「お客様が何かを想像し、われわれが可能だと考えるのなら、われわれQ部門は実現へ挑戦するのです」
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