クルマ界はいま『100年に一度の変革期』と言われている。昨年あたりから、各メーカーが電動化に向けて具体的に動き出していて、ビックリするほどのスピードで変貌を遂げようとしている。
日本ではカーボンニュートラルに向けて、政府が2030年代半ばまでに新型車をすべて電動化する方針を出した。
グッバイ・ディーゼル? トラックメーカー4社にディーゼルエンジンの「行く末」を聞いてみました
それに対しては賛否両論あるなか、日本の自動車メーカーの最新のパワーユニット事情、主に戦略について自動車評論家 永田恵一氏が考察する。
※本稿は2021年5月のものです
文/永田 恵一 写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2021年6月26日号
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■トヨタ/HV戦略の要 THS-IIの伸びシロと可能性
「まだある」というのが結論だ。
その代表例がヤリスハイブリッドで、ヤリスハイブリッドは実用燃費を30km/L近くまで一気に向上させた。
その要因としては新開発となる1.5L 3気筒エンジンの搭載、駆動用バッテリーのリチウムイオン化、3気筒エンジンの搭載も関係するTNGA-Bプラットフォームの採用による軽量化が目立つが、それ以外の細かい改良の積み重ねによる部分も小さくない。
ヤリスハイブリッドは各部の改良によってWLTCモード燃費は36.0km/Lで断トツトップ!
そのため最近は少なくなったが、トヨタのハイブリッドはマイナーチェンジで小幅ながら燃費が向上することもあり、そのあたりを考えるとまだ伸びシロはある。
また、コストや搭載場所の事情でできるクルマとできないクルマもあるにせよ、ハイブリッドの性能向上には駆動用バッテリーの大型化も非常に有効で、その好例が北米専売の大型ミニバンの現行シエナだ。
現行シエナはニッケル水素バッテリーの2.5Lハイブリッドながら、バッテリーの大型化により動力性能は3.5L級V6がなくてもいいくらいパワフルに、燃費も劇的に向上、商品力を高めた。
この点でもTHSの伸びシロはまだある。
北米専用モデルのシエナハイブリッドはニッケル水素バッテリーの大型化により大進化
●トヨタのハイブリッドシステム
・第1世代…THS登場(1997年)そのほかTHS-C、THS-M
・第2世代…THS-II登場(2003年)
・第3世代…3代目プリウスで大幅改良(2009年)
・第4世代…4代目プリウスで大幅改良(2015年)
■マツダ&三菱/今後クリーンディーゼルはどうなるのか?
高い巡航スピードで走るなど、ジャンルを含め負荷の大きい使い方をするクルマとディーゼルの相性は抜群だが、マツダと三菱自動車は特に海外でディーゼル車を縮小方向としている。
それも最近の流れを考えると無理のないことで、理由を挙げていくと、
●CAFE*をクリアするための存在としては、燃費はともかくディーゼルは軽油に含まれる炭素が10%多いため、CO2排出量で見るとプラスになることが少ない。
●厳しくなる排ガス規制に対しても、ディーゼルの排ガスクリーン化システムは複雑になり、部品も増えるためコストもかかるばかりで、プレミアムブランドならまだしも、庶民向けのブランドでは搭載しにくい。
といったことがある。
今後の二社の展望は、三菱自動車はPHEVや日産とのアライアンスによる見通しはある。
しかし、マツダは現状ではSKYACTIV-Xの燃費が期待ほどよくない、ラージFRもCAFEのプラスにはならない、自社でEVを開発するようだが、今あるMX-30のEVは、航続距離が256kmと短く、それを補うレンジエクステンダーを市場がどう評価するのか注目だ。
マツダは欧州でマツダ6のディーゼル搭載モデルの販売を昨年6月いっぱいで終了
CX-5のディーゼルモデルはアメリカから撤退。第2世代のSKYACTIV-D(GEN2)の登場はどうなってしまうのか?
三菱の主力モデルであるデリカD:5はビッグマイチェンを機にディーゼルに一本化
いっぽうでエクリプスクロスは2018年にディーゼルを追加したものの、昨年PHEVの登場と同時に廃止と明暗クッキリ
*CAFEは「Corporate Average Fuel Efficiency」の略で、日本語にすると「企業別平均燃費」となる。車種別ではなく1年間の販売台数を加味して算出。そのため燃費基準が達成できないクルマがあってもそのほかのクルマでカバーすることも可能。平均燃費が基準値を超えた場合はペナルティが課せられる
■日産/VCターボ+e-POWERは日本でも売るのか?
現在欧米で販売されているミドルクロスオーバーのキャッシュカイは、日本でもデュアリスの車名で販売された時期があるエクストレイルとの共通部分も多いモデルだ。
新型キャッシュカイは2月に欧州で発表されており、今夏から発売されるのだが、1.3L直噴ターボ+マイルドハイブリッドモデルとe-POWERを搭載するモデルである。
特に新型キャッシュカイに搭載されるe-POWERは欧州の平均スピードが高い使い方への対応もあり、エンジンは「負荷の小さい時には圧縮比を高くして燃費を向上、全開加速時をはじめとしたパワーが必要な時には圧縮比を下げて高ブーストをかけるなどしてパワーを出す」という使い方ができるVCターボ第二弾となる1.5Lを搭載する。
昨年インフィニティQX50に2LのVCターボが搭載された。日産のVCターボは量産車としては世界初の可変圧縮比エンジンだ。それにe-POWERを組み合わせれば最強レベル
VCターボの搭載によりエンジンとモーターはそれぞれ154ps、187psと強力で、パワフルな走りを実現しているに違いない。
これで燃費がよければ文句なしなだけに、この新世代e-POWERが日本向け次期エクストレイルに搭載される可能性は非常に高く、搭載されれば日産復活への柱のひとつになるだろう。
欧州仕様のエクストレイルはVCターボ+e-POWERを搭載
■ホンダ/2040年に全新車をEV&FCVにすると大々的に宣言
ホンダは4月23日に、三部社長が、「中国を含む先進国全体でEV、FCVの販売比率を2030年に40%、2035年に80%、2040年にはグローバルで100%を目指す」と明言した。
そのロードマップを地域別に見ていく。
・北米…GMとのアライアンスにより、GMのバッテリーを使った共同開発の大型EV2車種を2024年モデルで投入。また2020年代後半にホンダ主導で開発するEVプラットフォーム採用モデル投入。
・中国…5年以内にホンダブランドで10車種のEVを投入。バッテリーの調達もCALTとの連携をさらに強化。
・日本…2024年の軽のEVの投入をはじめとした軽の電動化を推進。バッテリーの調達も日本国内での地産地消を目指す。
またバッテリーに関してはホンダも全固体電池の研究を独自に進めており、2020年代後半のモデルへの採用を目指しているという。
日本でのバッテリー調達などの興味に加え、EV、FCV化による『電動車時代のホンダらしさ』というのがどんなものになるのかも注目したい。
日本メーカーではいち早く電動化に向けた具体的な戦略を明言したホンダ
EVはまず中国を皮切りにニューモデルの積極攻勢をかける
■スバル/今後のパワーユニットの方向性とは?
スバルの今後のパワーユニット戦略の大きな柱は、「ソルテラ」という車名が発表された、トヨタとの共同開発により2022年に発売するEVである。
ソルテラはフロント、センター、リアという数種類のモジュールやユニットを組み合わせることで、さまざまなバリエーションの展開を効率的に可能にするという「e-スバルグローバルプラットホーム」を採用したCセグメントのSUVだ。
トヨタとの協業によって誕生するスバルブランドEV第1弾がソルテラとなる
それ以外の情報はトヨタ版のbZ4Xの写真が公開されているだけで、スペックは不明だが、それぞれのEV技術やスバルが得意とするAWD性能など、トヨタとの共同開発だけに価格をはじめ最初からユーザーに不便を強いない完成度の高いEVとなりそうだ。
またハイブリッドに関しても、レヴォーグに搭載された新しいCB型エンジンがサイズなどハイブリッド化も視野に入れたものに見える点など、燃費のいいハイブリッドカーの登場も期待できる。
スバルはこの2つによりCAFEがクリアできそうなため、新型BRZや次期WRXで最後となりそうな「純エンジン車のスポーツモデル」というお楽しみがある点も大きな希望。
■スズキ/ストロングHVは今後新型車ではやめるのか?
ソリオがフルモデルチェンジでストロングハイブリッド(以下S-HV)を廃止したため、現在スズキのラインナップでS-HVがあるのはスイフトだけとなっているが、そう遠くないうちにスイフトからもS-HVは姿を消すだろう。
ソリオはストロングハイブリッド廃止で絶好調
その理由はズバリ費用対効果の薄さだ。というのもスズキのS-HVは、1.2Lエンジンに13.6psの小型モーターを組み合わせ5速AGSを介するという、2代目までのインサイトなどのホンダIMAに近いタイプだ。
そのため燃費はWLTC総合モードで1.2Lガソリンの20.0km/Lに対し23.0km/Lと向上は少なく、価格もエコカー減税を加味しても25万円程度と、効果のわりに高い。
これでは発売したことは評価できても、商品としては魅力が薄く、売れているという話も聞いたことがないだけに絶版となるのもやむを得ないだろう。
スイフトもストロング比率は低い
今後スズキは電動化において、次のダイハツの軽ハイブリッドとも関係する、トヨタとの協業によるハイブリッドやEVが増えていくのではないだろうか。
■ダイハツ/ストロングHVの軽自動車は登場するのか?
昨年末あたりから「ダイハツが軽自動車にストロングハイブリッドを投入する」という噂が出ているが、それは信憑性がある話だ。
というのはダイハツがトヨタの子会社というのに加え、多くの軽自動車はイメージより燃費がよくないからだ。
具体的には軽自動車で主流になっているハイトワゴンやスーパーハイトワゴンの燃費は、ダイハツ車でムーヴ20.7km/L、タント21.2km/L(それぞれWLTCモード総合燃費の最良値)と、コンパクトカーと大差なく、実用燃費だとコンパクトカーのほうがいいことも珍しくない。
ダイハツ ストロングハイブリッド第1弾はタントの可能性が高い
それでも軽自動車は走行距離が少ないことも多いなど、燃費を気にするユーザーがあまりいないのもあり、大きな問題ではなかった。
しかし、現状の燃費やマイルドハイブリッドでは今後のCAFEをクリアできず、存続のためにストロングハイブリッドを投入するというのは納得できる。
その際にはトヨタ式2モーターハイブリッドを軽自動車用にコストダウンしたものが順当で、このハイブリッドはアライアンスによりスズキにも供給されるかもしれない。
次期ムーヴにはストロングハイブリッドは搭載されるのか?
■ディーゼルハイブリッドはどうなる?
今やマツダの顔となったと言えるクリーンディーゼルの「SKYACTIV-D」。
本来の開発スケジュールでは、2022年にも第2世代となるSKYACTIV(GEN2)が登場することになるが、ディーゼルに対する逆風によりその存在すらも危ぶまれている状況だ。
その第2世代ディーゼルに48Vマイルドハイブリッドを組み合わせたディーゼルハイブリッドが次期型CX-5に搭載されるという噂はかつてからあるが、現状では市販化が難しくなっている。
CAFEの規制をクリアするためには、ディーゼルの電動化は必須と思われるが、ディーゼルの存続すら危ぶまれていることが何よりも心配だ。
次期CX-5は来年、FRベースのプレミアムSUVとして登場
【番外コラム】意外なガス燃料車の今後
凄くマイナーながら昔から存在するのがガスを燃料とするパワーユニットだ。
今LPG(液化石油ガス)で有名なのはタクシーで、現在では都内を中心に増殖著しいJPNタクシーがLPGハイブリッドを採用している。
そのほかでは、CNG(圧縮天然ガス)、LNG(液化天然ガス)があるが、クルマで普及しているのはCNGだ。
天然ガス車は、ディーゼル比でNOx(60~70%低減)、CO2(20~30%低減)、硫黄酸化物&黒煙(100%低減)ということで環境対策燃料のひとつとなっている。
商用車、大型車などでは設定のあるCNG車だが、乗用車となると少数派で、かつてワゴンR(1999年)、デミオ(2000年)、パジェロ(2000年)、センチュリー(2003年)、レガシィB4(2004年)といったモデルがあったくらいで、現在はそれらのモデルもすべて消滅。
この先、各メーカーが乗用車に積極的にCNG車を設定することはないだろう。
トヨタセンチュリー(2代目)先代センチュリーは公官庁向けにCNGを設定
スバルレガシィB4(4代目)ハイブリッドを持たないスバルはCNGの設定で環境対応していた
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みんなのコメント
ただ、携帯電話、PCなどでハードで勝って、システムで負けた例は日本は結構ある。
スキージャンプ日の丸飛行隊でメダル独占、技術を極めるが、欧米は戦術で勝ち目が無いと分かるとさっさと日本人の体型に不都合なルールで戦略を変えてくる。
車は一国の経済を左右する戦略物質だから、当然そうするだろう。
ガソリン車の伸びしろなんてどうでも良いこと。
法律で禁止してしまえばよい。
携帯電話の伸びしろを追求してその結果どうなった?
REACH規制のように売りたければルールに従えってのは当然の手法。
日本は欧米中の市場を失ってもガソリン車に固執するのなら、先の大戦で大艦巨砲主義でコテンパンの二の舞だろう。
世界初の航空機動艦隊の集中運用を考案しても艦隊決戦思想を捨てきれず、着弾精度を極めてもレーダーで海の藻屑。
せっかく世界初の量産BEVを上市した日本だがこのままでは負け戦は必須。
充電時間でグズグズ言われてるけど実際に長期テストしてる車なんか見るとそんな不便じゃ無い事も分かる
FCVは何をするにも高額になるしトヨタの独占販売になる事も目に見えてる
日本市場だけを見るとトヨタ信者の数からしてFCV推してるヤツ多いけどじゃ買うのかよ?
の話になると絶対買わないだろ高からw
大体トヨタ信者は無責任なんだよw
高齢化とコロナ禍で世界一の借金国が水素ステーション建設費から補助金まで出せるかってのw