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V12との惜別は強烈に アストン マーティンV12ヴァンテージへ試乗 700psと76.5kg-m

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V12との惜別は強烈に アストン マーティンV12ヴァンテージへ試乗 700psと76.5kg-m

DBS スーパーレッジェーラ由来のV12

アストン マーティンには、V12ヴァンテージという高性能スポーツカーがブランド戦略として必要だった。近年は必要性が薄れているようにも思えるが、重要なモデルであることに変わりない。

【画像】ラストV12 アストン マーティンV12ヴァンテージ 競合する高性能モデルと比較 全129枚

初代のV8ヴァンテージは、甘美な操縦性を備えるセンセーショナルな存在だった。2005年の3代目も、素晴らしく魅力的なモデルといえた。

2008年にV8エンジンが4.3Lから4.7Lへ拡大されても、驚くほど速いわけではなかった。それでも、大切なベビー・アストンだった。パワートレイン以上に優れたシャシーを備え、熱狂的なサウンドがドライバーを喜ばせてくれた。

2009年、V型12気筒エンジンを搭載したV12ヴァンテージが登場。最高出力522psを発揮し、理想といえる内容を獲得した。近年はメルセデスAMG譲りのターボチャージドV8によって、V12以上にパワフルなV8ヴァンテージも選べるようになっている。

そして2022年、最新で最後のV12ヴァンテージが姿を表した。アストン マーティンDBS スーパーレッジェーラ由来の5.2L V型12気筒ツインターボ・エンジンをフロントに搭載し、過去のどのヴァンテージよりパワフルに仕立ててある。

このパワートレイン開発で、アストン マーティンは巧みな手法を展開した。少量生産で超高級なV12スピードスターによって、必要な予算の多くが賄われたのだ。

そのため、ツインターボ・エンジンと8速トランスアクスル・オートマティックは、ほぼ仕上がった状態にあった。そこで抑えられた予算は、価格へ反映していないようではあるけれど。

シャシーは徹底的にチューニング

V12ヴァンテージは、スーパー・スポーツカーという特別なカテゴリーで見ても、他にはない訴求力を備えている。アストン マーティンでは最小モデルのボンネットに、大排気量エンジンが押し込まれている。

GT3レーシングカーと距離も近い。技術開発の成果が、レギュレーションに縛られることなく惜しみなく投入されている。

同社の技術者は、ヴァンテージをよりシリアスなサーキットマシンへと仕立てた。同時に、ワイルドな個性をより楽しみやすくする、懐の深さも与えている。

価格を釣り上げた要因の1つが、カーボンファイバーとコンポジット素材による、ボディパネル。クラムシェルのカーボン製ボンネットには、エアアウトレットが設けられた。フロントフェンダーの大胆な造形が、ワイド感を強調する。

シャシーは入念に補強され、サスペンションも大幅に改良を受けている。フロントのトレッドは、V8ヴァンテージから40mm拡大。スプリングレートはフロントで40%、リアで50%引き締められ、リアにはヘルパースプリングも組まれている。

アンチロールバーは、フロント側がV8ヴァンテージより硬く、リアは柔らかい。スカイフックと同社が呼ぶ、アダプティブダンパーを制御するソフトウエアも書き換えられた。パワーステアリングの特性も見直されている。

ボディが軽量化されてもV型12気筒エンジンは軽くなく、車重はV8ヴァンテージより110kg重い。しかし最高出力は700psもあるため、パワーウエイトレシオは20%高いという。0-100km/h加速は3.5秒だ。

V8ヴァンテージを超えるコーナリング性能

最新V12ヴァンテージの試乗のため、アストン マーティンが用意してくれたのは、開発でも用いられた英国シルバーストーン内のストウ・サーキット。周辺の一般道も運転が許された。

サーキットを飛ばすと、適度な重さのステアリングホイールから、正確さが伝わってくる。姿勢制御は一層引き締められ、増えた車重をしっかりシャシーが受け止めている。

コーナリング性能は、既に優秀なV8ヴァンテージより上。とても鋭い。ニュートラルに近いハンドリングバランスと、驚くほどの高速安定性を備えつつ、コーナーの出口ではアクセルペダルの加減でスタンスを調整できる余裕もある。

V12ヴァンテージは、サーキットをタイトに周回したいと訴えてくる。制動力やグリップ力は極めて甚大。何周でも全開で駆け回れそうだ。公道では許されない速度で、驚くようなラップタイムを刻める。V12ヴァンテージの最高を味わえる。

それでいてV型12気筒エンジンは、シャシーの落ち着きを打ち砕けるという、崇高なオーラも漂わせている。シャシーが手に負えないような、巨大なトルクを簡単に解き放てる。

リアには、機械式のリミテッドスリップデフが組まれている。トラクション・コントロールをオフにすれば、タイトコーナーの出口で、リアタイヤから盛大な白煙を巻き上げることも容易い。

最後を締めくくる強烈なヴァンテージ

公道へ出てみると、日常的な速度域でも、驚くほどしなやかな乗り心地を得ている。しかし、轟音を放ちながらの怒涛の加速と、容赦なく引き締められた減衰力特性で、穏やかな気持でいることは難しい。

V12ヴァンテージは、気を使って運転しなければ、簡単に野蛮さが顔を出してしまう。だが、それで構わないとは思う。

数年前のヴァンテージ GT12が搭載するV型12気筒が奏でた心へ響く雄叫びは、ターボチャージャーによってかき消されている。獰猛な動力性能が生むドラマチックさでは、それには届いていないだろう。

かつてないほどパワフルな、アストン マーティンV12ヴァンテージ。サーキットでの能力は過去最高でも、パワフルで重たいエンジンが体験を若干濁らせているような印象も受ける。

過去のベビー・アストンは、少々パワー不足だった。だが最新版は、有り余るパワーを得てしまったのかもしれない。700psの最高出力を備えていて、極めて速くても、筆者個人としては1番のお気に入りとまでは感じなかった。

究極のヴァンテージと呼ぶべきかどうかは、悩ましいところだ。V型12気筒エンジンの最後を締めくくる、強烈な印象を残すための存在なのかもしれない。

さて、V12ヴァンテージの英国価格は26万5000ポンド(約4426万円)。V8ヴァンテージより、11万5000ポンド(約1920万円)お高い。生産数は333台に限定されているが、注文の受け付けが始まる前に、すべての納入先が決まってしまったという。

アストン マーティンV12ヴァンテージ(英国仕様)のスペック

英国価格:26万5000ポンド(約4426万円)
全長:4514mm
全幅:1960mm
全高:1275mm
最高速度:321km/h
0-97km/h加速:3.5秒
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1795kg
パワートレイン:V型12気筒5204ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:700ps/6500rpm
最大トルク:76.5kg-m/1800-6000rpm
ギアボックス:8速オートマティック

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