10月2日、ホンダが2021年シーズンもって、F1世界選手権への参戦を終了することを発表した。この決定に多くの人が怒りをぶつけっている。その理由をモータージャーナリストの赤井邦彦が解説する。
なぜ人々は怒る?
社会に於ける企業の姿勢は時代と共に変わって当然だ。自動車メーカーだって同様。そんなことは誰もが理解しているはずなのに、ホンダがF1グランプリから撤退するという発表を聞いた多くの人達は12年前、28年前の撤退と同じ感覚でそれを受け止め、意味もなく残念がったり落胆したり、怒りをぶつけたりしている。怒り? なぜ私企業のホンダが活動を止めることに人々が、中には中立公正な記事を書くべきメディアの仕事をする人までもが怒りの声を発しているのだろう。私はなかなか理解出来ないでいる。
おそらく、そういう考えを持つ人は片思いが好きな人だろう。ホンダのF1活動を支えているのは自分達だと思ってきた。その想いを無視して一方的に止められては立つ瀬がない。これまでホンダのF1活動に対して注いできた愛は受け止めてもらえなかったのか? 止める前に一言相談があってもよかったのではないか、そう思っているのだろう。それが、別れた恋人に対する感謝ではなく、怒りとして発露した。愛は盲目だ。
F1 Grand Prix of Abu Dhabi - PreviewsCharles Coatesしかし、彼ら彼女らの気持ちもわからなくはない。ホンダの身勝手(?)に映る行為も、怒る人達の心情に拍車をかけている。レースはホンダのDNAだと公言し、世界最高峰のF1グランプリに挑戦するのはホンダの使命だと言いながら、都合が悪くなれば「はい、サヨウナラ」。これでは煽られ、乗せられ、期待を持たせられたファンは落胆して当然。メディアのほとんどがホンダF1のファンなのだから、きつい言葉があちこちの紙誌上に飛び交うのも仕方ない。まあ、自業自得と言うことかもしれない。
そもそもホンダはF1グランプリに参戦することに、ことさら大袈裟な理由を付ける必要はなかったのではないか。DNAだ、世界最高峰だ、なんだかんだ、と。静かに始め、静かに終えてもよかったのではないか。しかし、F1活動が技術開発と同時にブランド・マーケティング戦略のひとつであるなら、誰にも何も言わず活動することはその役目を果たすことにはならない。ブランド強化に繋がらない。それはその通り。だから少々の宣伝が必須であったことは認めるが、ちょいとやり過ぎたところがあることは認めるべきだ。派手な立ち回りをするから、活動中止のときに勿体ぶった理由を探さなければならなくなるのだ。
精神性を売る企業
ホンダは今回のF1撤退の理由を、2050年のカーボンニュートラル達成(二酸化炭素排出ゼロ)のためと説明した。つまり、地球環境破壊の阻止である。もちろん、地球環境の破壊を食い止めるために、破壊を進めた当事者である自動車メーカーがやらなければならないことは山ほどある。二酸化炭素排出をゼロに抑えるという目標は、ホンダの覚悟が伺えて気持ちがいい。ただ、それをF1活動中止の理由に持ってこられると、どうも論点をずらされているように思えて仕方がない。F1活動にかかる膨大な活動資金、携わる優秀な技術陣といったリソースを環境技術開発に回すという。では、いったいF1にはいくらの資金が掛かるのか、一度もその額を聞いたことがない。F1は金がかかるというパラダイムに捕らわれているから金がかかるのではないか? 技術開発以外はいくらでも倹約できるはずであり、それを可能にすれば環境技術開発をしながらF1活動を続けられるのではないか? 技術陣に関しては、F1を続ければ環境技術開発が出来ないと言うほど層が薄っぺらではあるまいに。
F1 Grand Prix of Japan - PreviewsMark Thompsonでは、こう理解することにしよう。社内一丸となって環境問題に取り組むために、環境技術以外の開発は極力自粛するように。その自粛対象の一番に挙げられたのがF1の技術開発……と、ちょっと極端かもしれないけれど、技術者向けのプロパガンダとしては効果的だろう。でも、F1をやりたくてホンダに入った人、入りたいという技術者の卵は少なからずいるはずで、F1のないホンダで彼らは道に迷うかもしれない。ホンダは彼らをどう処遇するのだろうか。
ところで、こういう事象に遭遇すると、企業(自動車メーカー)の使命は何か、という命題にぶち当たる。利益を上げること。当然だ。社員を幸せにすること。しかり。顧客に優れた製品を売って満足してもらう事。なるほど。しかし、売るのは製品だけではなく、精神でもあるという点を見逃してはならない。ホンダは日本の自動車メーカーの中ではマツダと共にその高い精神性を顧客が汲み取ることが出来る会社である。少なくとも私は長い間そう信じてきたし、HONDA e以外欲しい製品(クルマ)のないいまでもそう信じている。そんな会社が、自らDNAだと標榜するF1グランプリに、資金や人材の不足という理由からサヨナラするのを見るのは、何か不条理劇を観ているようだった。撤退会見で「もうホンダはF1には復帰しません」と発言した八郷隆弘社長は、もうゴドーを待つことはしないのだろうか?
F1 Grand Prix of Russia - QualifyingPoolPROFILE
赤井 邦彦(あかい・くにひこ)
1951年9月12日生まれ、自動車雑誌編集部勤務のあと渡英。ヨーロッパ中心に自動車文化、モータースポーツの取材を続ける。帰国後はフリーランスとして『週刊朝日』『週刊SPA!』の特約記者としてF1中心に取材、執筆活動。F1を初めとするモータースポーツ関連の書籍を多数出版。1990年に事務所設立、他にも国内外の自動車メーカーのPR活動、広告コピーなどを手がける。2016年からMotorsport.com日本版の編集長。現在、単行本を執筆中。お楽しみに。
文・赤井邦彦
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