エレガントなビッグジャガー
1975年から1996年まで、20年以上も生産されたジャガーXJS。英国ではTVドラマのリターン・オブ・ザ・セイントやニュー・アベンジャーズに登場し、特別な高級車だというイメージを醸成することに成功していた。
【画像】エレガントな大猫 ジャガーXJS スーパーカーのXJ220 後継のXKとサルーンのXJも 全100枚
英国の路上でも見かける回数は少なく、出くわすとドラマの見どころと重ね合わせて子供は喜んだものだ。サイモン・テンプラーやマイク・ギャンビットといった、架空のヒーローが悪者を追いかける様子を思い浮かべて。
当初XJ-Sを名乗っていたXJSは、1975年に発売されると賛否両論が入り乱れた。Eタイプの後継モデルとは思えない姿で、かなりの高額だった。オーバーハングは長く、バンパーは大きく、リアデッキには三角のフライングバットレスが1対伸びていた。
物議を醸したスタイリングは、時間の経過とともに受け止められ方が変わったといえる。現在改めて眺めると、エレガントに見えるのは筆者だけではないと思う。ボディサイズに反して狭い車内に納得できれば、ぜひとも乗ってみたいジャガーの1台だ。
当初から搭載されていたエンジンは、5.3Lという大排気量のV型12気筒。最高出力は289psを発揮し、殆ど無音といえる静けさで246km/hという最高速度に到達できた。しなやかな乗り心地は、ハイドロニューマチック搭載のシトロエンにも迫った。
繰り返されたアップデート モデルライフ21年
寿命が長かっただけに、アップデートも繰り返し行われた。1981年にV12エンジンは改良を受け、ハイ・エフィシェンシーの略である5.3 HEへ。点火前に混合気をシリンダー内で対流させ出力を向上し、299psを獲得した。シャシーも手直しを受けている。
1983年には3.6L直列6気筒エンジン、AJ6型ユニットが追加。同じ年にXJ-SCというタルガトップ風のカブリオレが登場している。1988年にルーフの構造が改められ、完全なソフトトップ版のコンバーチブルへ交代した。
リフレッシュのフェイスリフトは1991年。ボディに錆びにくい亜鉛メッキ・スチールが採用され、フェンダーやサイドシル、フロアパンなどが朽ちる心配は低くなった。
改良を受けたスタイリングは上品にまとめられ、横に長いテールライトが特徴といえる。エンジンは、直列6気筒が4.0Lへ変更。V12では5.3Lに加えて、6.0Lが追加された。
モデル晩年となる1994年には、AJ6ユニットでプラグ・オン・コイルを獲得。AJ16型へ名称も改められた。さらにトム・ウォーキンショー・レーシングがチューニングを加えたXJSは、欧州ツーリングカー選手権である程度の戦績を残した。
長く生産が続けられたXJSは、1996年に遥かにモダンなジャガーXKへバトンタッチ。21年間というモデルライフを終えている。
当時最高水準といえた洗練性 信頼性は怪しい
古き良き1970年代のラグジュアリー・クーペをお考えなら、大きなジャガーXJSは好適な1台といえる。丁寧にレストアされた例であれば、当時最高水準といえた洗練性に感銘を受けることだろう。
中古車価格はお手頃で、大きな予算を準備する必要はない。しかし、経年劣化やそもそもの信頼性の怪しさを考えれば、ある程度の資金力は求められる。継続的な維持には、へこたれない精神力の強さも欲しいところではある。
新車時代のAUTOCARの評価は
ジャガーXJ-Sは素晴らしいクルマといえる。最も接近するライバルと比較しても、価格には競争力があり、洗練された走りで最高水準の充足感が得られる。
かなりの努力を費やし、ジャガーが開発したという事実を実感できる。高価とはいえ、運転はとても楽しい。購入できる立場にある人が羨ましく思えるほど。(1976年2月7日)
購入時に気をつけたいポイント
エンジン
V型12気筒エンジンでは、特に整備履歴の確認を忘れずに。ラジエータークーラントの交換は2年毎。エンジン音が大きい場合は、別の例を探したい。カムカバーガスケットと油圧センサーからのオイル漏れに注意。
冷却ファンのブレード、ラジエーターホース、ラジエーター、エアコン・コンデンサーなどの状態を確かめる。始動時の不調はタイミングチェーンの劣化、冷間時に始動してアイドリングが上下する場合は、補助エアバルブの不具合が疑われる。
直列6気筒エンジンは堅牢性に優れるものの、ヘッドガスケットは8万kmくらいで駄目になる。エンジンオイルに混ざるクーラントがないか確かめる。油圧は正常値で40-50psi程度。
タイミングチェーンからの異音がないか、聞き耳を立てる。交換する場合は、テンショナーも一緒に済ませたい。
トランスミッション
ディファレンシャルからの異音や、フルード漏れがないか確認する。ブレーキディスクにフルードが付く場合がある。変速が滑らかか試乗で確認する。
V12エンジンのXJSには、1970年代後半に設計されたGM製の3速ATが載っている。1993年以降は4速へアップデートされた。
直6エンジンには、ゲトラグ社の5速MTかZF社の4速ATが組まれている。ATの場合は、滑らかな変速感と適切なキックダウンを確かめたい。走行中にコツコツと音がする場合は、トランスミッション・マウントの劣化。MTの場合はクラッチの滑りに注意する。
サスペンションとブレーキ
ショックアブソーバーやブッシュはへたる。ブレーキは、走行中にペダルを踏んでまっすぐ制動力が生じるか確かめる。キャリパーの固着は起こりがち。
ボディとシャシー
ジャッキアップ・ポイントやサブフレーム、クロスメンバーなどにサビがないか観察する。フロアパネルにジャッキを当てられた凹みや、ドアヒンジのガタツキもチェックポイント。
1991年以前のXJSは亜鉛メッキ加工されておらず錆びやすい。前後のフェンダーやドアの底面、トランクリッド、サイドシル、フライングバットレスやリアガラス周辺の状態を丁寧に観察したい。
インテリア
シートベルト・マウントのサビ、天井の内張りのタレ、雨水の侵入に伴うコントロール・ユニットの不調が起きやすい。ウッドパネルの劣化や剥がれ落ちも想定できる。エアコンは正常に動くか確かめる。
専門家の意見を聞いてみる
クリス・ノウルズ氏:KWE社
「XJSで最大の問題はサビですね。英国で最も人気が高いのはV型12気筒モデル。メンテナンスを怠らなければ、信頼性はそこまで低くありません。気持ち優先で選ぶならV12、思慮深く買うなら直6といえるでしょう」
「中古車の価値が高いのは6.0LのV12ですが、初期型の5.3Lも人気は高いですね。後期の方が製造品質は高く、エンジンはより静かで滑らかに回ります。状態の良いXJSは、高額で取引されています」
「1994年以降で状態の良いV12のコンバーチブルだと、英国では5万ポンド(約830万円)に迫ることも。わたしは1994年から1996年式のクルマをオススメします」
知っておくべきこと
シートベルトの固定金具付近に水が溜まりやすく、特にフェイスリフト前のクーペはそこからフロアが錆びはじめる。室内のバッテリーから液が漏れ、フロアを錆びさせることもある。
初期型のラバーバンパーの交換部品は入手が不可能。だが、表面の処理で見た目を復活できる。
XJSのアルミホイールは珍しいが、中古品が英国では流通している。腐食していても修復すれば美しさを取り戻せる。アフターマーケット品に交換されている場合も多い。
ABSは1988年式から。イグニッションをオンにしてABSの警告灯が点灯し、その後消えるか確認する。警告灯が点きっぱなしの場合は車検に通らない。
英国ではいくら払うべき?
5000ポンド(約83万円)~1万999ポンド(約181万円)
状態の余り良くないXJSが英国では流通している価格帯。これまでの整備履歴をしっかり確かめたい。
1万1000ポンド(約182万円)~1万4999ポンド(約248万円)
部分的にレストアされている、走行距離が16万km以下の悪くないXJSが出てくる。ボディのサビには注意が必要。
1万5000ポンド(約249万円)~1万9999ポンド(約331万円)
そのまま乗れるような、状態の良いXJSを英国では探せる価格帯。見た目も美しいはず。
2万ポンド(約332万円)以上
XJSの極上車を探すならこの価格帯で。多くがオリジナル状態を保ち、走行距離は短め。なかにはコンクール・コンディションの例も。
英国で掘り出し物を発見
ジャガー XJS HE V12(英国仕様) 登録:1989年 走行距離:11万4200km 価格:1万3350ポンド(約221万円)
年式としては走行距離が短め。メンテナンスが行き届いており、コンディションは素晴らしいようだ。ここまで復活させるのに約4000ポンド(約65万円)を費やしたという。車検もしばらく残っている。
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みんなのコメント
90年代まで作っていたんだね。