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ザ・グランドツアラー ベントレー・コンチネンタルGT フェラーリ612 スカリエッティ アストン マーティンDB9 3台比較 前編

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ザ・グランドツアラー ベントレー・コンチネンタルGT フェラーリ612 スカリエッティ アストン マーティンDB9 3台比較 前編

救世主となった初代コンチネンタルGT

1990年代初頭、ベントレーは次の世紀を迎える準備にあえいでいた。グレートブリテン島の中西部、クルーに構えた工場ではアルナージとアズール、コンチネンタルRといったモデルが、年間1000台にも満たないペースで生産されていた。

【画像】ザ・グランドツアラー コンチネンタルGT 612 スカリエッティ DB9 現行モデルも 全145枚

得られる収益は、工場の維持で精一杯。それぞれのモデルが特化しており、工数が必要で、職人による手作業も多かった。1台の製造コストは、車両価格に迫る20万ポンドに達したとか。しかも、購入したいと考えたのは富裕層のごく一部に限られた。

しかし、1998年にフォルクスワーゲン・グループが助けの手を差し伸ばす。BMWとの協議の結果、同じヴィッカース社傘下にあったロールス・ロイスはグッドウッド郊外の新工場へ拠点が移され、別の道を歩み始めた。

そしてベントレーは、新たな計画を実行へ移した。まったく新しい、グランドツアラー・クーペの開発が始まった。

ローコストに生産でき、従来より広範囲の人へ訴求できつつ、英国伝統ブランドのイメージを維持することが目指された。かくして救世主となる、初代コンチネンタルGTが導かれた。

今回ご登場願ったネイビーに塗られたコンチネンタルGTは、少なからず残存する例のなかでも特別。新車時から広報車両としてメディアによる試乗へ登用され、当時の紙面を飾ってきた。ラグジュアリーなマリナー仕様が、その過去を物語っている。

フェートンとプラットフォームを共有

新時代を迎えたベントレーと同時期に誕生した、12気筒エンジンのグランドツアラー・クーペが2台ある。どちらもコンチネンタルGTが発売された翌年、2004年にやや異なる市場へ向けてリリースされ、それぞれ特長が高く評価されている。

その1台、フェラーリ612 スカリエッティの新車価格は、約17万ポンド。コンチネンタルGTより約6万ポンドも高価ではあったが、最高出力は同等で、実用性や動的能力という点で大きな違いはなかった。

他方、20年前に11万ポンドの予算を手にしていた英国人なら、10万3000ポンドで購入できた、新しいアストン マーティンDB9と天秤にかけたことだろう。同社はスポーツカーという位置づけで発売したものの、内容では肉薄していた。

初代ヴァンキッシュのために17万ポンドを準備できなくても、アストン マーティン・オーナーになることを可能としていた。イアン・カラム氏による、グラマラスなボディが手に入った。

そんな2台より先に登場したコンチネンタルGTは、基礎骨格となるプラットフォームとW型12気筒エンジンを、フォルクスワーゲンの最上級サルーン、フェートンと共有。ダーク・ヴァン・ブレッケル氏による高貴なボディが、その事実を巧みに包み隠した。

インテリアも見事な仕上がりにあった。往年のベントレーと遜色ない豪奢さといえた。

2基の狭角V型6気筒エンジンを合体

チーフエンジニアを務めたのは、ウルリッヒ・アイヒホルン氏。フェートンの開発を率いた人物でもあり、ベントレーは初めてだったとしても、コンチネンタルというモデルが担う重要性は不足なく理解していた。

発表当時、アイヒホルンはAUTOCARへ次のように説明している。「真のグランドツアラーを作ることで、ブランドを創業したWO.ベントレー氏の価値観を継承したいと考えました」

「クーペというフォルムが、ベントレーの新しいスタイルを最も端的に表現できると信じています。往年のブルートレインやコンチネンタルRなど、偉大なモデルとのつながりも備わっています」

実際には、2003年のベントレーがハードウエアの多くをフォルクスワーゲンと共有するという事実から、逃れることはできていなかった。しかし、その手法を選ばなければ、現実的なコストでラグジュアリー・グランドツアラーを作ることは不可能でもあった。

全長はフェートンより250mm短く、全高は60mm低いが、車重は同等の2385kgと軽くなかった。それでも、スタイリッシュな2+2のクーペは大きな反響を集め、約4000台もの先行注文が寄せられた。

ボンネット内には、フォルクスワーゲン・グループが誇るW12エンジンが収まった。1つのクランクケースの上に、VR6型という狭角V型6気筒エンジンのシリンダーブロックを2基並べた構成で、排気量は5998cc。実際、シリンダーはW型に配置されていた。

アウディA8譲りの四輪駆動システム

吸気は2基のターボチャージャーで圧縮され、空対空インタークーラーで冷却。最高出力560ps/6100rpm、最大トルク66.1kg-m/1600rpmという、豊満な動力性能を発揮した。

当時のAUTOCARが試乗で計測した記録では、0-97km/h加速に要した時間は4.9秒。最高速度は315.4km/hに届いている。

前後長が比較的コンパクトなW12エンジンのおかげで、アウディA8譲りの四輪駆動システムを組み込むことも可能だった。フロント側のデフは、6速ATに内蔵。サスペンションは、コイルスプリングより軽量だとうたわれた、エアスプリングが採用された。

フロント・ブレーキディスクの直径は、405mmと巨大。当時の量産車としては、最大径だと主張された。

一方、その頃のフェラーリは2+2のグランドツアラーとして456GTを提供していたが、初期型の登場は1992年と時間が経過していた。ユーザーが多様化するなかで、より実用性の高いモデルが必要にもなっていた。

そこで開発されたのが、612 スカリエッティ。スタイリングを手掛けたのは日本人デザイナーの奥山清行氏で、456GTより139mm長く、37mm広く、44mm背の高い、2ドアボディが描き出された。

荷室は25%拡大され、ゴルフクラブのフルセットを2つ運べた。北米市場では、重視される機能の1つだった。

この続きは中編にて。

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