■標準車のGT-Rにターボ高効率化技術「アブレダブルシール」を採用
日産のスポーツフラッグシップGT-Rが、さらなる進化を発表した。メーカー希望小売価格1063万1520円から、という価格さえ適正に思えてしまうメカニズムを持つGT-Rだが、2020年モデルでは各部にさらなる“深化”を遂げている。
エンジンでいえば、標準車においてもGT-R NISMOが採用してきたターボ高効率化技術「アブレダブルシール」を採用したというのがトピックスのひとつ。その効能について、GT-Rのカタログページでは次のように記されている。
『2020年モデルのGT-Rに導入されたのは、レース用ターボチャージャーに使われる「アブレダブルシール」を採用した、新開発IHI製ターボチャージャー。ターボチャージャーのコンプレッサーハウジングに樹脂材料を装着し、ハウジングとコンプレッサーブレード間のクリアランスを極小化。吸入した空気の漏れを最小限に保ち、常に最適なクリアランスを維持することで、低回転からのレスポンスをさらに高めた』
さて、この「アブレダブルシール」というアイデアは、じつはけっして新しいものではない。長年、国産スポーツカーをウォッチしてきたというクルマファンであれば1998年にマツダRX-7がマイナーチェンジで280馬力になった際、この技術を採用したことを覚えているのではないだろうか。1998年当時のマツダの発表には以下のように記されていた。
『アブレーダブルシール採用によるコンプレッサーの高効率化と、ウルトラハイフロータービンによる大流量化によって、ターボチャージャーの過給圧を従来の約1.2倍に高めた』
それぞれメーカー発表をそのまま引用しているので「―(音引き)」の有無といった表記の違いはあるが、2020年モデルのGT-Rも、RX-7(FD3S・5型)も、樹脂で作られた『abradable seal』をターボチャージャーのコンプレッサー(吸気)側に使っているのだ。なお、『abradable seal』を直訳すると「摩耗性の密封」となる。高速回転する羽根とハウジングのすき間をギリギリまでつめることで、過給性能をアップしているというわけだ。その成果を、1998年のRX-7ではパワーアップに利用し、2020年モデルのGT-Rでは主にレスポンス向上につなげている。
初代スカイラインGT-Rのレースでの連勝記録を止めたのは、マツダのロータリースポーツ「サバンナRX-3」というのは有名な話で、この2台は常にライバル視されていた。第二世代GT-RとRX-7の直接対決はモータースポーツではあまり見られなかったが、ストリートではライバルとして意識していたオーナーは少なくなかっただろう。ほかにもコンプレッサー側に「アブレダブルシール」を使ったターボチャージャーを採用したモデはあるが、GT-RとRX-7のライバル関係を考えると、20余年の間隔があるにせよ、マイナーチェンジで「アブレダブルシール」をターボチャージャーに使うということに、なにかの縁を感じてしまう。
文:山本晋也
自動車コミュニケータ・コラムニスト
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