■117クーペ後期に「☆☆」とのグレード名が
カーデザイン界の巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロによる美しいデザインにより「走る芸術品」と呼ばれる、いすゞ117クーペ。1968年12月に市販モデルが登場し、1981年まで約12年にわたって生産された高級スペシャルティ車である。初期モデルはボディパネルの製造など手作業の工程が多くあり、「ハンドメイド」車としても知られている。
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そんな117クーペに1978年12月、「☆☆」という個性的なグレード名を持つモデルが登場した。1949ccのG200型エンジンを搭載し、53年度排出ガス規制に適合したモデルだ。最上級グレードは「☆☆XE」で、ボディ後部に付けられているエンブレムは「☆☆117XE」である。当時のプレスリリースを見ると「スターシリーズ」と記載されており、☆☆は2つ星ながら「スター」と読むのが正解のようだ。今回は、当時を知るいすゞ関係者の方にうかがった「スターシリーズ」にまつわる秘話をご紹介したい。
1968年12月の登場時、117クーペは1600ccDOHCのG161W型エンジンを搭載していた。このG型はガソリンエンジンのイニシャルで、ベレット用に開発された小型軽量のエンジンシリーズがルーツになっている。もともとはOHVであったが、設計段階から高速化を意識しており、117クーペやベレットGTタイプRに搭載されたG161W型が生まれたのである。その後、117クーペでは1970年に1800ccのG180S型を搭載、1973年には車体のプレス金型が追加され、量産化が図られたモデルにマイナーチェンジ。それを期にG180型系ユニットに統一された。
その後、排ガス規制への対応や商品性アップの観点から排気量を拡大することになり、117クーペの53年規制への適合のタイミングに合わせて、G系ユニットの2リッター化が計画された。Gシリーズエンジンとしての生産性を考慮して、ボア(内径)サイズの拡大で排気量アップを行うことになったが、シリンダーの変形や冷却への影響からボア間寸法は6mmでギリギリ。このため、排気量は1949cc止まりになった。
■「1949cc」だと「2リッター」と呼べなかった
この「1949」という数字がネーミングや宣伝広告にも大きく影響した。米国のルールでは、1949ccでは「2リッター」と呼べなかったのである。もちろん、117クーペは国内市場専用車であったが、国際感覚豊かな開発主査の塚崎文雄氏は海外流の呼び方を尊重し、「2リッター」の代わりの表現を何にすべきか考えあぐねていた。なお、米国情報のソースは、おそらくいすゞ社内の研究センターで懇意にしていた米国事情に詳しい方だったとのことである。
結局、ネーミングについては、関係者十数人に会議が招集され、その場で当時の岡本利雄社長が「☆☆シリーズ」はどうかと提案。その後、具体的な形やバッジを工業デザイン部で検討して結論を出したようである。2つの☆は2リッターであることを暗示しているものの、2リッターであることを直接うたわないという配慮でもあった。
発売3カ月前に発行された社外秘のセールスマニュアルには『スター誕生!!』と表紙に大きく書かれ、裏表紙も『117Coupe☆☆』で統一されているが、中のページでは『2リッターではトップレベルの135PS、17.0kgm……』などと、2リッターという表記も見られる。競合車にはセリカXX 2000G、フェアレディZ Z-T 2by2 (1998cc)、スカイラインハードトップ2000GT-ESなどの2リッター車を挙げている。販売の現場では「2リッター車」であることを表に出したいという気持ちは当然あったと推察される。
■当時のカタログには修正の箇所も
しかし、この直後の1978年11月にカタログの初版が発行されているが、印刷完成後に紙を貼って修正された個所が2カ所ある。それはエンジンの説明ページで、以下のとおり。
・117クーペ待望の『○○○○』→『新エンジンです。』
・10モード燃費リッターあたり、10.5kmのすばらしさ、『○○○○』10kmを越えるずば抜けた経済性→『このクラスとして』10kmを越える~
修正された部分は、おそらく「2リッター」表現だったと思われる。セールスマニュアルは社外秘資料のため、多少の勇み足は容認されるかもしれないが、カタログは直接消費者の手に渡るため、問題視されたのではないだろうか。本来避けるはずの文言が行き違いでそのまま印刷されてしまったようであり、塚崎文雄主査が保管していた初版カタログにはそのような紙貼り修正の跡があったが、12月の発売時には正式な印刷版が間に合ったようだ。ちなみに、エンジンの型式は2リッターを意図した「G200型」のまま生産化された。
「☆☆」という個性的なグレード名が採用された裏には、このようなエピソードがあったのである。
〈文=ドライバーWeb編集部〉
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