メルセデス・ベンツの新型EV(電気自動車)の「EQB」に、渡辺敏史がドイツで試乗した。
GLBとおなじく3列シート・7人乗りも用意
完成度の高いSUV風コンパクト・ハッチバック──新型ニッサン・ノート・オーテック・クロスオーバー試乗記
メルセデスのパワーユニット電動化戦略を象徴する“EQ”は従来、MHEV(マイルド・ハイブリッド)やPHEV(プラグ・イン・ハイブリッド)などのハイブリッド勢に用いられていたが、本格的な電気自動車=BEVへのシフトに伴い、それを示すサブブランドとして用いられている。
現在、ドイツ本国で販売されるメルセデスのEQ銘柄は5つ。SUVの「EQA」と「EQC」、セダンの「EQS」と「EQE」、ミニバンタイプのEQVがある。気づけばそれほどにラインナップが広がっていたかというのが偽らざる印象だ。BEVの環境貢献度については諸説飛び交う現状だが、左様に欧州の熱量が具体的なかたちになっているという事実は冷静に認識しておくべきだろう。
と、そこに新たにくわわることになった6番目のBEVがEQBだ。もとになるのは日本でも人気の高い「GLBクラス」で寸法関係もほぼ準拠している。トヨタ「RAV4」級の車格は日本でも取り回しにストレスを感じないギリギリの辺りということになるだろうか。
日本でのGLB人気の理由のひとつは、そういったサイズのSUVにして、3列シートを備えた7人乗りのパッケージを実現しているからだ。それが床下一面をバッテリー搭載スペースとするBEV化によって空間が圧迫され、3列シートが成立しないのでは? という懸念があった。
が、実際にEQBの空間構成はほとんど犠牲にすることなく、3列シートもオプションで選べる。
日本仕様の装備詳細は不明であるが、GLBと同様、標準になるかもしれない。
0~100km/h、6.2 秒!
EQBのグレードは「EQB300」と「EQB350」のふたつで、共に前後軸にモーターを配する4マティック、つまり四駆となる。後には前輪駆動やバッテリー搭載量を増やしたモデルなどの展開も検討されているらしいが、日本仕様は当面、トップグレードのEQB350のみの展開になるそうだ。
システム総合出力はEQB300が168kW/390Nm、EQB350は215kW/520Nm。敢えて内燃機になぞらえれば、EQB350はひと昔前の5.0リッターV型8気筒ガソリン・エンジンを積んだクルマくらいのパフォーマンスを備えているということになるだろうか。しかもそのトルクは、発進時から100%発せられるというモーターならではの特性の利もある。
ちなみにEQB350の0~100km/hの加速タイムは6.2秒と、フォルクスワーゲン「ゴルフGTI」辺りのホットハッチに比肩する俊敏さだ。ただし最高速度は160km/hリミット。欧州勢の目論見通りにBEVが普及していけば、いずれアウトバーンの速度無制限区間は意味をなさないものになってしまうかもしれない。
インテリアのデザインもGLBを踏襲しているため、目慣れた人には新鮮味は感じられないだろう。それでもグレードによっては空調のエア・アウトレットなどにモーターのコアにつかわれる銅線をイメージしただろう、ローズゴールドのアクセントがくわえられていたりはする。
居住性についてはバッテリーが床下に敷き詰められることもあって2~3列目シートの床面の高さが、若干上がっているのは気になったものの、GLBも3列目についてはそもそもオケージョナル・ユースを前提としていることもあり、その差異は無視できるレベルとみていいだろう。
搭載するバッテリーはリチウムイオン式で、容量は66.5kWh。MFA2プラットフォームを共有するEQAとおなじキャパシティだ。が、EQBはEQAよりホイールベースが長い分、床面のバッテリー搭載量を若干増やせる余地があり、実際、より多くのバッテリーを搭載したロングレンジモデルのリリースも検討されているという。急速充電環境は100kWまでの急速充電に対応、日本で近年普及し始めたCHAdeMOの90kWチャージャーでも相応のパフォーマンスが期待できる。
4WDならではの魅力
試乗は日本に導入されるEQB350が中心であったが、EQB300も試乗した。その走り出しから感じられるのは、初手から数百Nm級のトルクが立ち上がるモーターの特性を綺麗になまして、じんわりとひと桁単位の速度コントロールを容易にしているパワーユニットの洗練ぶりだ。
どこぞのメーカーのように気絶しそうな加速性能でBEVの個性をいびつにエンハンスすることもなく、人肌に優しく万人に扱いやすい滑らかさをきちんと押し出している。
それでもアクセルをどんと踏み込めば従来とは異質の強烈な加速はしっかり引き出せるわけで、車内に微かに響くヒーンというーノイズと共に、これぞBEVであることはありありと伝わってくる。
すでに日本でも販売されているEQAは1モーターの前輪駆動ということもあって、BEVならではの初手から全力という出力特性を完全に吸収しきれていない感もあった。具体的には交差点を曲がるくらいから向こうの大舵角時、アクセル操作によってはいわゆるトルク・ステア的にクルマの挙動ががさつになる状況も散見された。
EQBは現状、全グレードが4WDというのもあって、こういった偏りは影を潜めている。前後駆動配分は内燃機のメカニカルな四駆とは異なり、完全にデジタライズされているがゆえにバリアブルに調整されるが、後軸がタイムラグなしに応答することで前輪駆動の癖が抹消されるという利は品の良い挙動で汲み取れる。
個人的にはトルクレスポンスの激しいBEVこそ後輪の駆動力が大事になってくると思っているが、EQBに乗るとやはり後ろ掻きは質感に響くなぁという気がする。
半導体はじめ諸々の市場環境が整わないがゆえ、変更も考えられなくはないが、EQBの日本発売は2022年上半期を予定しているという。同時期には日産やトヨタ&スバルも同級のBEV投入を予定しており、いよいよ内外のプロダクトが等しく値踏みされる環境が整いそうだ。
販売力やアフターケアも含め、BEVがいよいよ選択の俎上に現れるその時を、楽しみに見守りたい。
文・渡辺敏史
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