9月25~26日にシリーズお馴染みのフランスはル・マン、ブガッティ・サーキットでの第6戦、実質的“ラウンド4”が開催された2021年のETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップは、シリーズ6冠を誇る“帝王”ヨッヘン・ハーン(チーム・ハーン・レーシング/イヴェコ)が土曜ポールポジションから初戦を制覇したものの、本質的な意味で選手権首位を行く好調ノルベルト・キス(レベス・レーシング/マン)を止めるまでには至らず。雨絡みのレース2から日曜予選とレース3も獲ったキスが、破竹のシーズン8勝目を記録している。
9月11~12日のベルギー・ゾルダー戦から中1週間での実施となったフランス・ラウンドは、戦前から「今季快進撃を続けるハンガリー人を誰が止めるのか」がイベントの焦点となっていた。
選手権首位キスがポール・トゥ・ウイン含む2勝。帝王ハーンや元王者ラッコも今季初優勝/ETRC第5戦
打倒キスを掲げるシリーズの実力者たちが土曜最初の予選セッションに挑むと、上空には雨雲が広がりながらも、なんとかドライ路面のまま20分間の勝負が繰り広げられ、キスがドライブする深紅のMANはライバルに対し0.5秒という大きな差を持って最速タイムを樹立する。
しかし、サッシャ・レンツ(SLトラックスポーツ30/マン)との接触により、キスに対しセッション終了後にタイムペナルティが加算され、出鼻をくじかれる4番グリッドからのスタートに。
代わってポールポジションを得たのは“帝王”ハーンで、2番手には冷却水やドリンクなど車体の保水量を極限まで減らして対抗したスペインのベテラン、アントニオ・アルバセテ(Tスポーツ・ベルナウ/マン)が並ぶフロントロウとなった。
この好機を活かした帝王は、11周のレース1で背後を脅かされることなくポール・トゥ・ウインを決め、2位アルバセテは追い縋ることができず。その最大の理由は、オープニングラップでレンツをパスし3番手に浮上してきたキスの存在で、アルバセテはレースを通じて終始、防御を強いられる展開となった。
午後17時30分開始のレース2を前に、前戦ゾルダーと同様にコース上にはついに雨粒が落ち始め、一瞬にしてフルウエットと化したコース上は、安全面の理由から3戦連続、2周の“セーフティトラック”先導で勝負が始まった。
■キスの勢い止まらず、レース2&3を連続で制す
序盤こそリバースポール発進のステファン・ファース(タンクプール24レーシング/スカニア)が先頭を守ったものの、レコードライン上が“グリーン”になるにつれ、このグッドイヤーカップ登録のドライバーはランキング上位勢の速さに対抗することが難しくなり、2017年王者のアダム・ラッコ(バギラー・レーシング/フレイトライナー)を筆頭に、キス、レンツが表彰台争いを繰り広げる。
前戦でようやく今季初勝利を手にしたチェコ共和国出身の元王者ラッコは、終盤までフレイトライナーを首位に留め続けたものの、背後に迫るキスが巧妙なラインで相手を誘うと、アウト側に膨らんだ先頭走者は背後のマンほどにトラクションが得られず。
これで首位に躍り出たキスが今季7勝目を手にし、ラッコ、レンツとチャンピオンシップのライバルたちが脇を固める表彰台となった。
連日の雨模様で始まった日曜も、朝からキスのスピードは衰えることを知らず。レンツ、ハーンを抑えてポールを獲得すると、オープニングのレース3で後続に6秒差をつける独走劇を演じて今季8勝目。2位のレンツ、3位ハーンに対してさらに選手権リードを拡大するリザルトを手にした。
わずかに日差しの戻った午後のレース4は、リバースポールのシェーン・ブレルトン(アポロタイヤ・TORトラック・レーシング/マン)に対し、背後の3番グリッドから発進したアンドレ・クルシム(ドント・タッチ・レーシング/イヴェコ)が一閃。
2番手に落ちたブレルトンが背後のラッコ、レンツ、キスらタイトルコンテンダーたちを抑えている間に、クルシムは1.4秒のマージンを稼いで今季2勝目を達成し、レース終盤まで毎周ポジションを入れ替えながらの壮絶なバトルを演じた3台は、お互いのトラックにダメージを抱えながらも、ラッコが最後のポディウムスポットを奪う結果となった。
この週末により、2勝を挙げた選手権リーダーのキスが175点までポイントを伸ばし、2位に149点のレンツ、3位に146点のラッコと続くオーダーに。同じく110点のアルバセテを挟み、107点の5位に続くハーンにとっては、タイトル防衛と前人未到7冠目が厳しい情勢となってきた。
この後、ETRC一行は休む間もなく連戦のスペインへと向かい、10月2~3日のハラマ・サーキットでシーズン最後から2番目のラウンドに挑むことになる。
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