アウディ「A3セダン」の高性能バージョン「RS3セダン」に今尾直樹が試乗した。今や希少な5気筒エンジンの魅力とは。
洗練された上品な小型車
新型スバル・レヴォーグがさらに魅力的になった!──GQ新着カー
う~む。これがニュルブルクリンク北コース、コンパクトクラス最速だとはビックリ!
2021年の夏に本国で発表になり、翌年4月にニッポンで発売になったアウディ「RS3セダン」に今回、初試乗したのですけれど、ふつうに一般道をドライブしている限り、ニュル最速のハードコアな高性能車だとは想像もつかなかった。洗練された上品な小型車である、としか筆者には思えなかったのである。
まずはスペックをチェックしてみよう。エンジンは今回でおしまい、という噂もある2480ccの直列5気筒ターボをフロントに横置きしている。直5のメリットは直4よりスムーズで、直6よりもコンパクトなことにある。でなければ、フォルクスワーゲン「ゴルフ」の兄弟車であるA3のノーズに収まるはずもない。
いまやアウディのみが直5に固執しているのは、中興の祖フェルディナンド・ピエヒが開発した、1980年発売の元祖クワトロがそうだったから、という説もある。新興のアウディには語るべき伝統と歴史がない。だからこそ、伝統と歴史にこだわる。それが人情というものであろう。
そういえば、そのむかし、1980年以前のアウディを知る本社の広報のベテラン女性からこんな内容のお話をうかがったことがある。
「自動車専門誌が比較テストするとなると、以前はフォードとオペルとテストするから、といわれて広報車を貸し出していたんですよ。いまのウチのライバルは、誇らしいことにメルセデス・ベンツとBMWです。これもドクター・ピエヒのおかげですよ」
念のため、アウディをディスろうとしたのではないです。実力で現在の地位に駆け上がったのだ。というような話はさておき、この直5の直噴ターボと7速DCT、アウディ名「Sトロニック」は2017年に登場した先代RS3からの継承・改良型で、エンジンの最高出力は400psのままだけれど、発生回転数が5850~7000rpmから5600~7000rpmに広げられ、最大トルクは480Nmから20Nmアップの500Nmに強化されている。
ドリフトを試してみればよかった……だけど、目玉はエンジンではない。クワトロ・システムに初めてトルク・スプリッターが採用されたことである。「RSトルク・スプリッター」と名づけられたこれは、リヤ・アクスルの左右ドライブシャフトの根元に電子制御式の多板クラッチを備えたもので、コーナリング中、より接地面積の大きくなるリヤ外輪により多くのトルクを配分する。そうすることでアンダーステアを解消し、より早くアクセルを開けることができるのだ。さらにこのクラッチは巡航時には一転、両方を開放し、すなわち4WDからFWDに切り替わることで燃費を稼ぐ。
アウディ・ドライブセレクトという名称の、いわゆるドライブモードには、いつものコンフォート、オート、ダイナミック、インディヴィデュアル、エフィシェンシーに加えて、RSトルク・スプリッターの制御を変更するモードがふたつ用意されている。
そのひとつの「RSトルク・リヤ」はトルクをリヤ外輪に100%配分することでドリフトを容易にする。もうひとつの「RSパフォーマンス」はセミスリックタイヤに対応したもので、サーキット走行に適しているという。
アウディが主張するRS3セダンの動力性能は、0~100km/3.8秒、最高速は290km/hに達する。これはポルシェ「911カレラ4」(それぞれ4.2秒と291km/h)を信号グランプリでやすやすとカモれることを意味する。もちろん、そういうことを推奨しているわけではない。ちなみにカレラSは3.7秒と308km/hなので、やめておいたほうが賢明である。
動力性能に合わせて足まわりも当然、強化してあり、フロントのトレッドは先代比で約30mm拡大されている。現行のA3セダン、2021年の春から国内販売しているRS3セダンのベースとなったモデルと較べると、フロント・トレッドは45mmも広い。リアはそのまま、というのが少々不思議だけれど、もっと不思議なのはタイヤサイズである。
なんと、なんと、なんと! フロントが265/30、リアが245/35の、ともにZR19のピレリPゼロで、私は目を疑った。イナガキくんから送られてきたアウディの諸元票が間違っている、とさえ思った。だけど、自分で撮った写真をよくよく見直してみたら……、こんなの初めて。少なくとも筆者は初見である。いくら前輪駆動ベースの4WD、とはいえ、フロントのほうがよりワイドで、よりロー・プロファイルのタイヤを履いているのだ。
これぞ革新。アウディの掲げるスローガン“Vorsprung durch Technik(技術による先進)”の面目躍如。仮に前後トルク配分が50:50だとしても、RS3は前後重量配分59:41(車検証値)のフロント・ヘビー車である。おのずとフロントにトラクションがかかること大だから、より太くて扁平にしてグリップ力を上げている。リヤのタイヤをあえて細くしているのは、グリップをわざと下げて、ドリフトしやすくしている、ということであろうと推察する。
正直に申し上げますと、今回の試乗は一般道のみということあって、「RSトルク・スプリッター」のモードを変更する、どちらのモードも筆者は試していない。例によって、予習していないから、ということもある。いかんです。「RSトルク・リヤ」なる100%リヤ外輪トルクでドリフトを試してみればよかった……けれど、後の祭りである。
ふたつの顔を持つスポーツセダン筆者が普通に横浜周辺の首都高速を走りまわって得たRS3セダンの印象は、冒頭記したように、過激なドリフト野郎とは縁遠いものだった。
400psと500Nmという、コンパクトクラスとしては尋常ならざる高性能車なのに、荒々しさとは無縁。同じ意味だけれど、洗練されていて、オシャレな雰囲気で、お話すると、どっちかというとマジメすぎて、ちょっと退屈な感じの好青年だった。
乗り心地はドライブモードをオートにしていると、おおむね快適で、路面によってはちょっとばかしブヨブヨしている。19インチの30と35という超扁平であることは、よほどの凸凹路でない限り、乗員に悟らせない。可変ダンピングも、ストローク感のある、いい仕事をしている。
トルク重視でフレキシブルな2.5リッター直5は、ダイナミックモードに切り替えて4000rpm以上回すと野太い、5気筒独特のサウンドを発するけれど、オートモードだと、ふだんは1500rpmあたりでSトロニックが自動的にシフトアップするから静かにまわっている。いわゆるジキル博士とハイド氏、藤田まこと演じる中村主水の昼の顔、クラーク・ケントが公衆電話ボックスに入る前、という感じで、おっとり、おとなしいといってもいいほどなのだ。
つまるところ筆者はアウディRS3セダンのことをなにも知らないまま、返却してしまった……。
おそらくRS3のオーナーもクローズドのサーキット等でドライブモードを切り替えない限り、もうひとつの顔を知ることはないのではあるまいか。
「プロレスは底が丸見えの底なし沼」というのは「週刊ファイト」の井上義啓元編集長の名言のひとつだけれど、アウディは、「底が丸見えの底なし沼」のようなスポーツカーを、この内燃機関最後の時代につくった。これをスポーツカーと呼んでもよいものか、ためらわれるような。伊達直人の姿しか知らないのだから、それも無理はないのだった。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
選択肢ないでしょ。
そもそも、マスゴミがよく
最後の内燃機関って騒いでるけど
メーカーはそんなキャッチコピーで
販売してないからどこに信憑性が?