この記事をまとめると
■派手な飾りやペイントでアートアップを施したトラックのことをデコトラという
いまバブルの遺産「豪華バス」が熱い! デコトラ乗りが「マイカー」として熱視線を送る「サロンバス」とは
■デコトラオーナーには運送業だけではなくさまざまな職業の人がいる
■今回は「やはた丸」のオーナー金野さんにお話を聞いた
「やはた丸」は趣味デコトラには珍しい中型の4t車
“デコトラ”といえば、ド派手な飾りとペイントでアートアップを施したトラック、と想像できるハズだ。そんなデコトラを所有するオーナーはどんな人なのかご存じだろうか? 「イカツイ」「コワい」という先入観は間違いだとキッパリいえる。運送業だけではなく、いろいろな職業の人がデコトラのあるカーライフを楽しんでいるのも事実。3回目となる今回は、宮城県の有名デコトラオーナーの意外な事実を紹介しよう。
今回の主人公は、三重県の涌谷町でカーショップ「ゴールドウェーブ」を経営する金野秀光さん。金野さんの愛車「やはた丸」のベース車両は三菱ふそうファイター。一般的に趣味でデコトラを所有する多くのマニアは2tの小型トラックだが、金野さんのファイターは中型の4t車というから、趣味にしてはスケールが大きい。このことからもそのマニアぶりも只者ではないといえるだろう。
彼は第2次デコトラブーム当時から熱心にデコトラを追っかけ続け、その後には個人主催で300台以上が集まるデコトラミーティングを開催した、という逸話が残る、デコトラマニア界の達人だ。
現在、アラフィフ世代の金野さん。物心が付いた幼少期から乗り物が好きで、とくに飾ったトラックが大好きで気がつくとトラックの絵ばかりをたくさん書いていた子どもだったという。学校から帰っては親戚の叔父のトラックに乗せてもらったり、国道でカメラ片手に写真を撮ったりしていたそう。昔は、フィルムを現像するまでドキドキで、うまく撮れていなかったときはショックで泣きそうになった、というのは、昭和世代の“あるある”だろう。
「私のオヤジが街の電気屋をしていたこともあり、家に帰ると常に仕事帰りのダンプ屋さんたちが無線の修理や取り付けにきていて。多くの方たちが頻繁に家に集まっていましたね。子どもだった当時は、日常のことなので当たり前で気にもしませんでしたが、いま思えば夢のような光景でした! あのころに戻りたいといまだに思います(笑)。その後、自分が本気でハマり出したのが、本屋で初めて見た『カミオン』という専門誌で衝撃を受けたころからでした。そのころはもちろん、デコトラプラモ作りや収集癖は大人になっても止みませんね」という。
子ども時代はデコチャリでイベントに参加
「小学校4~5年生ぐらいから中学の終わりぐらいまでデコチャリ製作にハマりました。子どもながらにできる範囲内でお金になりそうなさまざまなアルバイトをしてお金を貯めに貯め、家の近くの自転車店からベースになる中古の自転車を1500円で譲ってもらいましてね。毎週末、オヤジにお願いしてホームセンターに連れて行ってもらい、材料を買って来てはデコチャリ製作に励んでいました。学校の勉強は一切やることなく(笑)。確かトータルで数十万ぐらいかけた記憶です」。
「いろいろと縁あって、当時、宮城県の名門アートクラブ(龍神会)の親衛隊(龍神観光連合会【龍観連】)にも所属していました。自慢のデコチャリをオヤジのクルマに積んで「龍神会」のイベント参加はもちろんのこと、「流石一家」や「QR軍団」など、東北のアートトラックイベントにたくさん参加しました。その後、最終的に龍神観光連合会の3代目会長も経験させて頂きました。デコチャリのニックは「花電車」でしたね」。
まさに生粋のマニアだ。
「クルマの免許を取得してからはシャコタンやバニングに一時的に浮気をしましたが、結局はトラックが好きな気もちは変わらず、イベントには常に参加していました。仕事はトラックと一切関係ない業種もやっていましたが、友達の紹介でトラックの運転手になることになり、それがなんと子どものころにイベントや国道で見て憧れていた(元・全国哥麿会・宮城支部の)【愛姫丸】さんが経営する会社でした。あの有名な愛姫丸を運転できるなんて、と考えたら毎日がワクワクでしたね~。そこで10年近くワッパを握りました」。
「7~8年ぐらいした頃でしたかねぇ、自営業に興味が出てきて自分で商売をやってみたいと思い始め、トラックを降りる決意をするようになったのは。もともとトラックの運転手をしながら休日にアルバイトで車検や整備や中古車販売をしていましたが、アパート暮らしから一軒家を購入したタイミングで本気で運転手を辞めて昔から夢だったクルマ屋(自営業)をやろうと決意しました。一軒家を購入する際にクルマ屋を経営する目的だったので、広い土地付きの物件を購入し、すぐに工場と事務所も新築しました。そして、ついに平成14年4月「ボディーショップ 金波 ~ゴールドウェーブ~」をオープンしました。初めは、お客さんもそう多くはおらず、貯金も底を付くような状態でとても不安でしたが、2~3年と頑張って続けているうちに、次第に近所や地元の方たちも来てくれるようになりました。いまでは地元やご近所さんのお客さんも増えてなんとか食べて行けるまでになりました」。
「少しずつ余裕も出てきて5年ぐらい経ったころですかね。やっぱりまたトラックに乗りたい、トラックが欲しいという願望が日に日に強くなり、思い切ってこのフルコンファイターの、どノーマル車を購入しました。購入してからは本業が終わってから毎日毎晩、寝ずにトラックを触る日々でした」。
「当時、『丸美グループ』の車両にハマっていた自分は、とにかく丸美さんのような飾りにしたいと写真やDVDをひたすら見て勉強していました。とくに『みやこ鮮冷』さんや『零士丸』さんの車両は衝撃でした。それからは現在進行形でいまも少しずつですが飾り続けております。終わりなきデコトラのある人生は自分の生き甲斐です。理解ある家族に感謝しながらこれからも仕事に飾りに邁進して行きます」とインタビューに答えてくれた金野さんだった。
彼の長いデコトラ人生の間には、東日本大震災の津波で大切な物が流されてしまったこともあり、波乱万丈に満ちているが、苦難を乗り越えられたのもデコトラが支えてくれたからだそうだ。
■ボディーショップ 金波 ~ゴールドウェーブ~ 宮城県遠田郡涌谷町猪岡短台新大谷地53-1 FAX:0229-45-2353
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