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ロシア軍がアメリカの戦闘車を“謎カスタム” しかも性能ダウン!? なぜ機関砲を大きくしたのか

掲載 更新 21
ロシア軍がアメリカの戦闘車を“謎カスタム” しかも性能ダウン!? なぜ機関砲を大きくしたのか

M2ブラッドレーの武装改造は初確認

 2025年6月中旬、ロシアが鹵獲(ろかく)したM2ブラッドレー歩兵戦闘車の写真がSNS上に投稿されました。注目されたのは、オリジナルの25mm M242ブッシュマスター機関砲が、ロシア製の30mm 2A72機関砲に換装されていた点です。

【魔改造?】ロシアで姿を変えたM2ブラッドレーを見る(写真)

 M2ブラッドレーはアメリカからウクライナに供与されたもので、少なくとも12両程度がロシアに鹵獲されたとみられていますが、武装の改造が確認されたのは今回が初めてです。

 30mm 2A72機関砲は、BMP-2歩兵戦闘車などに装備されるロシアの標準的な装甲車用機関砲です。M2ブラッドレーやBMP-2のような歩兵戦闘車の主任務は、歩兵の輸送と支援であり、25~30mm機関砲が主武装とされます。対戦車ミサイルも搭載されていますが、敵戦車との交戦は自衛的なもので、積極的に戦車に挑むのは危険とされています。戦車の相手は基本的に戦車がすべきというのが常識です。

 しかし、2024年1月、ウクライナ軍のM2ブラッドレーが25mm機関砲でロシア軍のT-90M戦車を激しく射撃し、混乱状態に陥った戦車に自爆ドローンが突入して行動不能にしたとされる動画が投稿され、大きな話題となりました。

 M2の25mm機関砲で戦車を行動不能に追い込んだ事例は、これまでも報告されています。多数の命中弾があれば、装甲を貫通しなくても反応装甲が作動し、センサー類が破損、車内の機器にもダメージが及びます。そこで乗員がパニックに陥れば、車両の制御も困難になり、結果として戦闘不能に陥るのです。機関砲が対戦車戦闘においても一定の効果を持つことは、実戦で実証されています。

 では、ロシアが、鹵獲したM2ブラッドレーの機関砲をわざわざ30mmに「口径アップ」したのは、火力強化のためだったのでしょうか。

 ロシア国防省傘下の研究機関「第38研究所」がM2とBMP-2を比較したレポートによると、M2の25mm M242機関砲の方が、30mm 2A72よりも優れていると評価しています。M242の精度は2A72の2倍で、有効射程も長く、25mm APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)の装甲貫通力は、30mm AP(徹甲弾)の2倍とされています。

 ただし、APFSDSは高価です。では、なぜあえて性能の劣る30mm機関砲に換装したのでしょうか。

なぜわざわざ換装したのか?

 ロシア・ウクライナ戦争は長期の消耗戦に突入しており、両軍とも装甲車両の不足が深刻です。敵から鹵獲した車両も、使えるものは積極的に戦線投入されています。

 ロシア軍はM2ブラッドレーに鳥かごのような「コープゲージ(砲塔防護柵)」や装甲の追加といった“ウクライナ戦線仕様”への改造を施し、実戦へ投入しています。

 この運用についての評価もレポートされており、それによると、25mm機関砲は強力で精度も高いものの、弾薬の供給が限られており、需要に応えきれていないことが指摘されています。また、TOW対戦車ミサイルはそもそも入手が困難で、鹵獲兵器では当然ともいえる問題を抱えています。そのため、ロシア側の機関砲に換装する方が現場では好まれる、という事情があるようです。

 M2ブラッドレーは防御力、居住性、射撃管制装置の面では高く評価されている一方で、大型で目立ちやすく、重量があるためスタックしやすく、水上浮航能力も欠けているといった欠点も指摘されています。ウクライナの戦場では大きく重すぎて、鈍重で格好の標的になってしまい、多少防御力が高くても結果として破壊されるとの結論です。

 実際、アメリカからウクライナに約300両が供与されましたが、OSINTサイト「オリックス」によると、2025年6月中旬までに177両が失われています。

 今回、ロシアが機関砲を換装した理由は明らかではありませんが、使い慣れた30mm 2A72機関砲とM2ブラッドレーの整合性データを収集するための実戦トライアルなのか。それとも慢性化している装甲車不足を補うため、とにかく使える車体に使える武装を載せるという、ウクライナ戦線でよく見られる“魔改造”の単なる一例に過ぎない可能性もあります。

 単純なスペック比較では、M2ブラッドレーはBMP-2より火力・防御力・居住性は優れているとロシア側も認めています。しかし、実際の評価はユーザーや運用環境に左右されます。

 ロシア・ウクライナ戦争では、従来のような戦車と歩兵戦闘車が連携して戦う機甲戦はほとんど見られず、塹壕を挟んだ消耗戦の中でM2ブラッドレーの多くが失われ、持続的な戦力とはなっていません。とはいえ、貴重な実戦データをもたらしているのも事実です。

 ドローンの急速な発達に注目が集まりがちですが、ロシア側では鹵獲兵器の分析・研究といった、一見地味ながら重要な情報活動が行われています。第38研究所のレポートでは、M2を参考に将来の装甲戦闘車設計において人間工学的配慮や、30mm機関砲用APFSDS弾の開発が提案されています。

 実戦データは、何物にも代えがたい貴重な資源です。西側諸国でも、ロシア製戦車や装甲車の分析・研究は進められているのでしょうか。「ビックリ箱」みたいに砲塔が吹き飛ぶような戦車は、そもそも研究対象にすらならない――そのような“上から目線”で見てはいないことを願いたいものです。(月刊PANZER編集部)

文:乗りものニュース 月刊PANZER編集部

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みんなのコメント

21件
  • 藍流頓瀬奈
    戦国自衛隊やよくある異世界転生ものの機械にあるあるで、補給どうするんだ?がある。
    ロシアがアメリカから買うわけにいかずちまちま再装薬もやってられない。
    自前の30mm機関砲を載せて手持ちの弾薬使えるようにした方が運用上いいに決まってる。
  • suk********
    乗り物ニュースにしては珍しくまともな記事だと思ったら、PANZERの記事の転載かよ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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