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【直前情報】ニュルブルクリンク24時間レース スバル STI 辰己総監督&沢田監督インタビュー

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【直前情報】ニュルブルクリンク24時間レース スバル STI 辰己総監督&沢田監督インタビュー

スバル STIの先端技術 決定版 vol.36

2019年6月22日(土)~23日(日)に決勝が行なわれるニュルブルクリンク24時間レースにスバルSTIはWRX STIで今年も参戦する。SP3TクラスにエントリーするWRX STIは2年連続優勝を目指し、さまざまな改良を行なって今回のレースに臨んでいる。その準備に追われるスバルSTIチームのパドックを訪ね、今回から監督になった沢田拓也氏、そして総監督の辰己英治氏にインタビューした。

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モチベーションはどこに

スバルSTIが挑戦を続けるニュルブルクリンク24時間レースは、ドライバーの変更はなく井口卓人、山内英輝、カルロ・ヴァンダム、ティム・シュリックの4名で挑戦する。完璧なドライバーラインアップであり、もはやクラス優勝は「当たり前」な印象があると思う。そうした状況で辰己総監督は何を糧にモチベーションを持ち続けて挑戦しているのだろうか。

ーー辰己
「このレースには市販車をベースにしてレースマシンを製作しています。専門家が見なければ普通のレース専用車に見えるほど、改造を加えていますが、ベースは市販車です。ですから、レースで戦うにはどんな改造、補強をしていかなければならないか、ということを繰り返してきました。その結果「足りないもの」がもの凄く良くわかり、そうしたデータや知見は市販車へフィードバックすることが可能です。STIでもコンプリートカーを造ってますから、ノウハウに活かされているわけです」

ーー編集
「そうした知見は数年に渡って参戦しているので、かなり蓄積されていると思いますが」

ーー辰己
「大切なのはサスペンションとか、ブレーキ、エンジン、ジオメトリーといったものより、ボディが最も重要だと考えていて、それもただ硬くしただけでは全くダメです。入力のいなしは必要で、そのトライ&エラーは毎年続きますね。でも、言われるようにかなりのノウハウは蓄積できているので、これをスバルの生産車に活かすような、レースと開発の現場がもっと近い環境で参戦できるといいんですけどね」

ーー編集
「それはスバルとニュルブルクリンクの距離が遠いということですか?」

ーー辰己
「やはりSTIがやっているものですから、ダイレクトに市販車へのフィードバックというようにはいかないですね。これまで研鑽を重ねたものは、間違いなく今の市販車のレベルアップには繋がりますし、そうしたクルマをお客様に届けることができれば、それにこしたことはないですよね」

辰己総監督は、もはやレースの現場を開発のフィールドとして捉え、具体的なレースは後継者へのバトンタッチを始めているということのようだ。確かに欧州のカーメーカーでワークス参戦したことのない自動車メーカーというのはあまり記憶にはない。それなりのレベルの市販車を開発しているメーカーはレースフィールドからのフィードバックを得ているのは間違いないだろう。

新しい戦略に挑戦

一方、今回から監督を任された沢田拓也監督は、これまで主にエンジンを中心に担当してニュルブブルクリンクのレースに参戦している。今回から辰己総監督からバトンを渡された沢田監督は、どんな戦略でレースを戦うのだろうか。

ーー沢田
「2019年のマシンはエンジンとトランスミッション、センターデフをひとつのECUで制御する一括制御に変更しました。そのためパドルシフトからのレスポンスや、ABSからのセンターデフへのレスポンスなど、ミリ秒単位ですが、「遅れ」が解消されています。そのため、さまざまな部分でメリットが出てきています。今回はそのメリットを活かした戦略にトライしてみるつもりです」

WRX STIはこの統合制御に変更して24時間レースの前哨戦である「QFレース」で優勝している。これまでWRX STIはテストを兼ねての参戦ということが多く、これまで優勝は一度もなかった。

ーー沢田
「これまでは本番に向けてのテスト参戦という位置付けでQFレースに参戦していましたが、オフシーズンの開発が順調だったこともあり、せっかくレースに参戦するのだから、やはり優勝を狙って参戦しようと、参戦意図を明確にしました。その結果、優勝もできましたし、いろんなデータも取れましたので、今は本番が楽しみです」

ーー編集
「その新たな戦略というのはどういうものでしょうか?」

ーー沢田
「統合制御にしたことでレスポンスが良くなりました。それが燃費にも好影響が出ています。例えばシフトダウンでは燃料カットをします。それは以前もしていたのですが、ブリッピングしないとギヤが抜けないので、そのためには多少の燃料が吹かれていました。しかし、今は燃料カットの信号が出て即座にカットされているため、残った燃料でブリッピングでき、結果的には燃費が良くなるという現象があります。直噴であれば、そうしたことになるのですが、ポート噴射で同様にできるようになったのは大きいメリットです」

ーー編集
「それはどの程度燃費改善になったのでしょうか?」

ーー沢田
「まだQFレースでのデータしかないので、あまり正確ではありませんが、5~6%は省燃費になったデータになっています。それでいくと24時間レースの時、ドライバー1人が担当する周回数が1周増やせそうなんです。全部のスティントで1周増やすのは理論上は可能ですが、必ず100%満タンに給油できることとか、100%タンク内のエア抜きができる、吹きこぼしは皆無にするなどの条件が必要で、現実にはリスクがあるので全てのスティントで周回を増やすことは考えていません。しかし、そうした改善データがあるなら、どこかで使うべきで、24時間走って1スティント少なくできれば最高!というトライを考えています」

明日から始まる公式練習、公式予選でドライバーそれぞれの燃費を取りつつ、シミュレーションをしていくということだ。もちろん、沢田監督が狙うのはクラス優勝で、来年も踏まえ3連勝を目論んでいる。さらに、ラップタイムでも自己記録を塗り替え、総合でも過去最高位を狙うのは言うまでもない。そのための作戦が着々と進行しているスバルSTIチームだった。

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