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819psの素晴らしい処女作 ルーシッド・エアでニューヨークを走る 衝撃的な速さ 後編

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819psの素晴らしい処女作 ルーシッド・エアでニューヨークを走る 衝撃的な速さ 後編

普段使いのしやすさも開発目標の1つ

ニューヨークのブルックリン橋を、ルーシッド・エアで通過する。頭上まで広がったフロントガラスで、壮観な景色を楽しめる。日差しが強くなると、少し熱気を感じる。スライド式サンバイザーが備わるものの、社外の後付け部品のようで質感を乱していた。

【画像】819psの素晴らしい処女作 ルーシッド・エア 競合クラスの電動サルーンと比較 全120枚

ダウンタウンでは、歩行者のスマートフォンがエアへ次々に向けられる。アメリカのTVドラマ、「弁護士ビリー・マクブライド(ゴリアテ)」と「メディア王(サクセッション)」に登場したことで、知名度が一気に高まったという。

混雑した中心部でも運転しやすい。乗り心地はマイルド。ステアリングホイールやペダルの操作感には適度な重さがあり、反応は正確。着座位置は低いが、周囲の視認性にも優れている。

全幅も広いとはいえ、2mを60mmほど下回るから、車線内に留めやすい。ルーシッドによれば、普段使いのしやすさも開発目標の1つだったという。

発進直後から太いトルクの存在を感じるが、市街地では確かめにくい。それ以上に、ドライブトレインの洗練された平穏さに感心する。シートに身を委ね、豊かで穏やかな時間を堪能できる。

北部を目指す前に、半島の西側、ミートパッキング地区で撮影を行う。ドライバーの乗り降りに合わせて、自動的にエアはドアをロックしたり、システムをオンにしてくれる。ちゃんとロックされたか不安だったが、終わるまで盗まれることはなかった。

ブルックリン橋を再び渡る。対向車線にドナルド・トランプ前大統領の車列が見えた。彼を追うマスコミのヘリコプターが、上空を飛行している。

ハイパーカー並みに衝撃的なほど速い

ハイウェイを1時間ほど北に走り、ベアマウンテン州立公園へ。美しい景観に包まれた道で、エアの動力性能を確かめる。生産数が限定される、ハイパーカー並みに高速なバッテリーEV(BEV)であることは間違いない。衝撃的なほど速い。

高速道路の速度域に到達しても、加速度に衰えはない。トラクションにも不安はない。電動パワートレインの本気とはどんなものなのか、その最先端を如実に体感できる。とはいえ、過剰ではある。少しふざけていると、三半規管が狂って気持ち悪くなる。

500馬力でも充分だろう。加速時には人工ノイズが響くが、なくて構わないと思う。

そして驚愕なのが、これが最も穏やかなドライブモード、スムーズでの体験だったこと。スイフトとスプリントというモードを選ぶと、最高出力819psが解き放たれ、ステアリングとダンパーが引き締められる。

スプリント・モード時は特に、快適性が低くなり、エアのキャラクターが明確に変化する。現実的な条件でエアの能力を楽しむなら、スムーズ・モードで問題ない。

多くのBEVと同様に、高速走行時には軽くない車重が身のこなしへ制限を与える。カーブを旋回させると、大きく重たいクルマだと実感する。ステアリングは正確で、挙動が予想しやすいとはいえ。

本気を出して郊外の道を攻めても、得られる充足感はそこまで大きくない。少し控えめに、連続するコーナーを滑らかに処理すると楽しさを感じる。操舵感は、テスラ・モデル3の方が優れている。

Sクラスを彷彿とさせる最高レベルの快適さ

試乗したエアが履いていたホイールは19インチ。タイヤサイズは245/45と、選択肢では肉厚な方だった。航続距離だけでなく、乗り心地にもプラスに働く。最大で21インチまで選べる。

特に路面からの入力の処理は優秀で、ベアマウンテン州立公園の傷んだアスファルトでも、明確な衝撃が伝わることはほぼナシ。ダブルウイッシュボーン式に、コイルスプリングとアダプティブダンパーというサスペンションが、良い仕事をするようだ。

郊外のハイウェイは、エアが最も得意とする区間。最高レベルの快適さに身を置き、高速で静かに移動できる。V12エンジンを搭載していた、メルセデス・ベンツSクラスを彷彿とさせる。ちなみに、エアサスペンションも開発中とのこと。

航続距離も充分に長い。渋滞したマンハッタンを走り、かなりのハイペースで州立公園も駆け抜けたが、320kmを走り終えた時点で駆動用バッテリーの残量は50%だった。BEVにとってエネルギー効率は重要な性能だが、ルーシッドの技術力は優位といえる。

リアシート側の空間はSクラス並みで、サルーンとしての実用性も高い。駆動用バッテリーが88kWhへ小さくなるエントリーグレードのエア・ピュアなら、さらにゆとりが生まれるという。ボンネットが短い、パッケージングが活きている。

荷室も大きく、リアシートを倒せば7フィート(約2133mm)のサーフボードを詰めるとか。フロント側にも収納が設けられている。

見事に報われたルーシッドの努力

日常的に乗りやすい、高級サルーンかつ高性能グランドツアラーを目指したルーシッドの努力は、報われたように思う。革新的で高効率なBEVとして、エアは素晴らしい処女作に仕上がっている。有利に戦える水準にすら達していると思う。

このクラスのモデルは、電動パワートレインとの相性に優れる。新興ブランドとして、実力の高さを数字で誇示し、注目を集める必要性があったことも理解できる。同社は、この方向性を一層磨いていくべきだろう。

惜しまれるのは、右ハンドル仕様のエアをルーシッドが計画していないこと。メカニズム的には、内燃エンジンのモデルほど難しくないはずだが。

既に欧州はBEVに対する関心が高く、多様なモデルを受け入れ態勢が整いつつある。近い将来、ロンドンのウェストミンスター橋を渡るエアを、見れる日が来るかもしれない。

撮影:マイク・カトラー(Mike Culter)

ルーシッド・エア・グランドツーリング(北米仕様)のスペック

北米価格:13万8000ドル(約1904万円)
全長:4976mm
全幅:1939mm
全高:1410mm
最高速度:270km/h
0-100km/h加速:3.0秒
航続距離:830km(EPA値)
電費:7.4km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2360kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
バッテリー:112kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:819ps
最大トルク:122.1kg-m
ギアボックス:シングルスピード・リダクション

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