現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > ポルシェほどEVが似合うメーカーはないかもしれない──電動化とポルシェについて考える

ここから本文です

ポルシェほどEVが似合うメーカーはないかもしれない──電動化とポルシェについて考える

掲載 更新
ポルシェほどEVが似合うメーカーはないかもしれない──電動化とポルシェについて考える

2018年のポルシェは、“70周年”のアニバーサリーイヤーだった。1948年登場の「356」以降、販売開始70周年を記念した1年だった。70周年記念の派手な新聞広告やイベントが話題を呼んだ。

同時に多くのポルシェファンが注目したのは“電動化”についてだ。昨年おこなわれた70周年記念に関する記者会見も、話の多くが電動化についてだった。ポルシェジャパン社長の七五三木敏幸氏による冒頭の挨拶でも、ポルシェAGの現状報告に続き、ポルシェの電動化について語られたほどだ。

第5回:“誤てる端っこ”──「ポルシェ911」

EU域内で、2018年第1四半期に販売された「パナメーラ」のうち、PHV(プラグ・イン・ハイブリッド)モデルが半数以上を占めたという(パナメーラ全体の60%)。また、2015年のフランクフルトモーターショーで公開された電気自動車(EV)の「タイカン」についても、2020年の日本市場導入に向けて、準備を入念に始めていると述べた。

「911」に代表されるスポーツカーメーカーとはいえ、話題の中心が電動化だったあたり、ポルシェも大きな転換期を迎えているのをあらためて意識することになったのであった。

とはいえ、ポルシェとEVの組み合わせは、ごくごく自然である。なぜなら、フェルディナント・ポルシェ博士が最初に手掛けたクルマはEVだったのだ。つまり、ポルシェがEVに注力するのは、原点回帰ともいえる。

ポルシェ博士が開発に携わったのはローナー社(オーストリア)のEVだ。1889年の登場である。当時、すでにガソリンエンジン自動車はあったものの、洗練された動力源ではなかった。キャブレターはなく、揮発油の自然な蒸発を利用して混合気を燃焼する仕組みだったためエンジン性能は終始不安定だったうえ、排気マフラーもなく、排気音はそのまま放出されたから相当うるさかったという。

逆にEVは、スムーズな走りにくわえ静粛性も高く、上質な乗り物として認知されていた。したがって、20世紀初頭まではEVの需要が一定数あったのだ。

ブリキ職人の息子として父を手伝いつつ、電気を学んだポルシェ博士がEVを開発したのは、当時の自動車事情を考えれば自然な成り行きであった。くわえて、車輪のハブにモーターを取り付ける、今日でいう「インホイールモーター」を左右輪に採用したのも特筆すべき点だ。当時としては相当な先進技術であり、ポルシェ博士がいかに天才だったかわかる。

しかし、当時のEVは鉛バッテリーだったため、航続可能距離が非常に短かった。そこで、ポルシェ博士は問題を解決すべく、エンジンを発電機の駆動に使うシリーズ式ハイブリッドを考案・開発した。これは、現在日産が「ノート」や「セレナ」に搭載するe-POWERとおなじ技術だ。

ポルシェ博士は約120年前からEVの可能性に着眼していたのだからすごい。とはいえ、ポルシェ博士の天才的な能力をもってしてもEVの技術革新には限界があった。そのため、ガソリンエンジン自動車への開発にシフトするが、類い稀な才能を遺憾なく発揮したモデルを次々に開発した。

アウトウニオン(アウディの前身)時代のミッドシップレーシングカーや、ダイムラー・ベンツでの技術部長時代に考案したリアエンジンの小型車、フォルクスワーゲンの「タイプ1」(通称ビートル)などが代表例だ。ポルシェ博士の深遠なる探求心や、真理を追究する洞察力によって生み出されたモデルは、多くが斬新な内容で、ただただ驚くばかりである。

ポルシェの70周年を語るうえで外せない356こそ、ポルシェ博士が手掛けたモデルではないが(開発当時、戦犯として収監されていた)、彼の思想や理想を受け継いだ息子たちによって生み出されたモデルである。356も当時としては画期的なスポーツカーであった。

356の登場から70年を経て、ポルシェが電動化に注力するとは、きっとポルシェ博士も予想していなかったはずだ。とはいえ、ポルシェが電動化に力を入れること自体、彼じしんが開発したモデルを振り返ればなんら違和感はないし、必然かもしれない。

現在、ポルシェがラインナップするEVはカイエンやパナメーラのPHVモデルのみだ。しかし、単なる“エコカー”としてPHV 化したのではなく、動力性能向上のためとポルシェはうたう。このあたり、ポルシェ博士の独創性を感じられずにはいられない。ポルシェが手がけるEVは、ポルシェらしくすばらしくスポーティであり、ほかのEVとは一線を画す。驚くほど個性的なEVだ。

実は、タイカンの加速性能は、テスラ「モデルS」の高性能仕様に比べ劣る面がある。とはいえ、スポーツカーメーカーとして歩んできたポルシェは、加速タイムで劣っても、排気音がなくなっても、スポーツカーとしての乗り味は実現してくるはずだ。カイエンやパナメーラのPHVモデルのスポーティさを考えれば、大いに期待出来る。

「EVがクルマをつまらなくする」といった声は、一面的な見方であると思う。20世紀に進化を遂げた内燃機関に替わり、電気で走る21世紀のクルマがどのような魅力を発信できるのかは未知数だ。とりわけスポーツカーメーカーであるポルシェが作るEVの登場は、未来への期待を伴った楽しみ以外の何ものでもない。ポルシェはEVをもっと面白くしてくれそうだ。

こんな記事も読まれています

新型3列シート電動SUV『アイオニック9』正式発表、充電中は4人が広々休憩も…ロサンゼルスモーターショー2024
新型3列シート電動SUV『アイオニック9』正式発表、充電中は4人が広々休憩も…ロサンゼルスモーターショー2024
レスポンス
全国に「警察軽トラ」配備へ なぜ? 警察庁初の取り組み、理由は? ダイハツ製61台を24年度中に導入! 各都道府県警察で運用
全国に「警察軽トラ」配備へ なぜ? 警察庁初の取り組み、理由は? ダイハツ製61台を24年度中に導入! 各都道府県警察で運用
くるまのニュース
転倒時にバイクを守る! エンジンガードは装着した方がいいのか?
転倒時にバイクを守る! エンジンガードは装着した方がいいのか?
バイクのニュース
『ランクル40 / 70』にもピッタリ! トーヨータイヤ『OPEN COUNTRY A/T III』がラインアップ拡充
『ランクル40 / 70』にもピッタリ! トーヨータイヤ『OPEN COUNTRY A/T III』がラインアップ拡充
レスポンス
寒いとバカっ速! ラスベガスで完勝ワンツーのメルセデス、懸念のグレイニングも一切出ず「不思議だね」とウルフ代表
寒いとバカっ速! ラスベガスで完勝ワンツーのメルセデス、懸念のグレイニングも一切出ず「不思議だね」とウルフ代表
motorsport.com 日本版
夢だけで終わらせたくない「マイ・バイクガレージ」 たぐちかつみ・マイガレージ回顧録 VOL.01
夢だけで終わらせたくない「マイ・バイクガレージ」 たぐちかつみ・マイガレージ回顧録 VOL.01
バイクのニュース
約99万円! トヨタ新型「“軽”セダン」発表! 全長3.4m級ボディで4人乗れる! 安全性向上&寒さ対策UPの「ピクシス エポック」どんな人が買う?
約99万円! トヨタ新型「“軽”セダン」発表! 全長3.4m級ボディで4人乗れる! 安全性向上&寒さ対策UPの「ピクシス エポック」どんな人が買う?
くるまのニュース
「(次期)セリカ、作ります!」ラリージャパン会場でトヨタ中嶋副社長が明言!! 開発開始を宣言、次期86も「出す」
「(次期)セリカ、作ります!」ラリージャパン会場でトヨタ中嶋副社長が明言!! 開発開始を宣言、次期86も「出す」
ベストカーWeb
スズキ・フロンクスが月販目標の9倍も受注! 絶好調な理由は小さくて安いのに感じられる「高級感」!!
スズキ・フロンクスが月販目標の9倍も受注! 絶好調な理由は小さくて安いのに感じられる「高級感」!!
WEB CARTOP
車載電池のノースボルト、米国で破産法を申請 事業継続にめど
車載電池のノースボルト、米国で破産法を申請 事業継続にめど
日刊自動車新聞
【初試乗!】さらにスポーティになった「メルセデスAMG GT 63 PRO」はポルシェとのGT対決に終止符を打てるか!?
【初試乗!】さらにスポーティになった「メルセデスAMG GT 63 PRO」はポルシェとのGT対決に終止符を打てるか!?
AutoBild Japan
レクサス新型「FF最大・最上級セダン」世界初公開に大反響! めちゃ“斬新グリル”&一文字ライト採用! “6年ぶり”に内外装刷新の「ES」中国に登場!
レクサス新型「FF最大・最上級セダン」世界初公開に大反響! めちゃ“斬新グリル”&一文字ライト採用! “6年ぶり”に内外装刷新の「ES」中国に登場!
くるまのニュース
20年前の個体なのに走行距離301キロ!? 555台の限定車 BMWアルピナ「ロードスターV8」がオークションに登場 極上車の気になる予想価格とは
20年前の個体なのに走行距離301キロ!? 555台の限定車 BMWアルピナ「ロードスターV8」がオークションに登場 極上車の気になる予想価格とは
VAGUE
完璧なシーズンでも届かない、王者の背中。ノリス「たとえミスがなかったとしてもタイトルを手にできたかどうか……」
完璧なシーズンでも届かない、王者の背中。ノリス「たとえミスがなかったとしてもタイトルを手にできたかどうか……」
motorsport.com 日本版
苦手な「前向き駐車」なぜコンビニで推奨されるのか? 「もちろんやってる」「出る時が怖い…」賛否あり!? バック駐車じゃない理由への反響は?
苦手な「前向き駐車」なぜコンビニで推奨されるのか? 「もちろんやってる」「出る時が怖い…」賛否あり!? バック駐車じゃない理由への反響は?
くるまのニュース
今でも現役! いろんなバイクに採用されています。「SOHC」とは?【バイク用語辞典】
今でも現役! いろんなバイクに採用されています。「SOHC」とは?【バイク用語辞典】
バイクのニュース
ダイハツ『タフト』安全性能向上で仕様変更、138万6000円から
ダイハツ『タフト』安全性能向上で仕様変更、138万6000円から
レスポンス
BMW 2シリーズクーペ【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
BMW 2シリーズクーペ【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
Webモーターマガジン

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1466.02267.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

130.01875.0万円

中古車を検索
パナメーラの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1466.02267.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

130.01875.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村