運転の魅力に溢れていた205 GTi
オリジナルのミニ・クーパーを凌駕する魅力を湛えていたのが、プジョー205 GTiだ。実用的で小柄なボディに活気溢れるエンジンを搭載し、お手頃な価格で提供され、素晴らしいホットハッチの定石といえる内容だった。
【画像】歴代最高のホットハッチ プジョー205 GTi 現行の208と308 Mk8 ゴルフ GTIも 全117枚
フォルクスワーゲンは、1976年にゴルフ GTIでこのレシピを完成させていた。ホットハッチ時代の幕開けを告げるように。タイトなコーナーをまくし立てるように走る姿へ、夢中になったという読者もいらっしゃるだろう。
そんな古くからの自動車ファンへ、もう1台別のノスタルジックなホットハッチを挙げもらうとしたら、プジョー205 GTiが最も多いのではないだろうか。筆者もそうだ。
小さな205 GTiは、本当に機敏に走った。登場から40年近くが経つが、今でもワインディングの下り坂を本気で飛ばせば、追走するのが簡単ではないほど。
シャープでありながら丸みを帯びたスタイリングは、近年のゴルフ GTIよりファッショナブルだったし、チャーミングでもあった。鋭い操縦性で運転の魅力にも溢れていた。登場からほどなく、ホットハッチとして一目置かれる存在になった。
パワーステアリングは備わらず、セフルセンタリング性に不満を唱える人もいた。ステアリング・レシオは3.8回転で、もう少しクイックでも良かっただろう。小さな批判がゼロではなかったが、それを上回る楽しさが宿っていた。
意図的なリフトオフ・オーバーステア
プジョー205 GTiの登場は1984年。オールアルミ製の4気筒エンジンは1.6Lの自然吸気で、最高出力は104psしかなかった。2022年では非力に思える馬力ながら、車重は850kgと軽量で不足ない動力性能を発揮した。
だが、それ以上に称賛を集めたのが鋭い操縦性。限界領域でのサスペンションの挙動や、やや弾むような乗り心地に不満を漏らすドライバーもいた。それでも、語り継がれるような名車といえた。
2年後の1986年には、GTi 1.6の最高出力が114psへ上昇。さらに、GTi 1.9も追加されている。こちらにはその名の通り1.9Lエンジンが搭載され、129psを発揮。トルクフルで0-97km/h加速を7.8秒でこなし、最高速度は204km/hがうたわれた。
エンジンを問わず、205 GTi最大のストロングポイントは、絶妙なチューニングが施されたシャシーによるバランスに優れたコーナリングだ。ただし、注意も必要だった。
敏捷さと味わい深さを求めて、意図的にリフトオフ・オーバーステアの特性が与えられていた。コーナーの途中で急にアクセルペダルを緩めると、フロントノーズが勢い良く内側に絞られていくのでご注意を。
205 GTiのファンの間では1.6Lと1.9Lでどちらがより楽しいか、意見がわかれていた。1.6Lのピーキーなパワー感が好きだという人もいれば、1.9Lの太いトルク感を支持する人もいる。
今選ぶなら、どちらでも構わないと筆者は思う。近年はすっかりタマ数が減ったが、プジョー205 GTiが同社最高のホットハッチだという事実に、変わることはないのだから。
新車時代のAUTOCARの評価は
小さなプジョーは、このクラスのホットハッチとして新しい水準を打ち立てた。適度に張りのある乗り心地はそのままに、優れた動力性能と操縦性が組み合わされている。
車内空間はゴルフ GTIやアストラ GTEと比べて若干狭いものの、ひと回り小さいだけに機敏に走る。運転の楽しさを求めたハッチバックとして、車内空間のゆとりなど大きな問題にはならないはず。205 GTiは、大傑作といっていい。(1984年4月18日)
購入時に気をつけたいポイント
エンジン
エグゾースト・マニフォールドに亀裂が入る場合がある。アイドリングが安定しないなら、エアフローメーターの不具合が疑われる。ビッグエンド・ベアリングからの異音や、ガスケットの状態も確かめたいところ。
カラカラと乾いた音は、タイミングベルト・テンショナーの寿命が原因かもしれない。ベルトとウォーターポンプの交換は、4年毎が指定されている。1.9Lエンジンが始動時に安定しにくいのは、いつものことだ。
エンジンマウントが劣化すると、振動だけでなくドライブシャフトの不具合も招く。
油圧
エンジンオイル不足から深刻な問題を引き起こすため、油圧計の針の動きには目を配りたい。社外品のオイルフィルターや、古いガスケットでエンジンオイルの流れが滞っている場合もある。内部構造の劣化で、潤滑不良になることも。
オイルサンプの後ろ側から、エンジンオイルが漏れていないか確認する。始動時に排気ガスと一緒に白煙が出るなら、バルブステムシールの磨耗が原因かもしれない。
トランスミッション
1速と2速のシンクロメッシュは傷みやすい。3速までヘタっている場合は、かなり攻め込んで運転されてきた証拠だろう。
樹脂製のリンケージ部品は劣化しやすく、シフトフィールに影響が出る。冷えた状態では変速フィールが硬くなる。クイックシフターを組むことも可能。
クラッチケーブルは、劣化し固着気味になることも。クラッチペダルが重くなり、扱いにくくなる。
サスペンションとブレーキ
リア・サスペンションのビームは、シールの不具合でベアリングが駄目になることがある。ドロップリンクは、ウイッシュボーン・リンクと同様にヘタりやすい。アッパーマウント側のベアリングが古くなると、サスペンションから異音が出ることも。
205 GTiではリアのブレーキディスクが腐食しやすい。ディスク面の状態が悪いなら、キャリパーも一緒に交換したいところ。交換用部品は今でも比較的安価に購入でき、作業も難しくはない。
ボディ
ドアの下側やサイドシル、ヘッドライト周辺、荷室のフロアが錆びやすい。事前によく観察したい。
サンルーフが装備されている場合は、水密性を保つシール部分の状態を確かめる。シール内に空気が入ると破損し、雨漏りしてしまう。レバーを解除して、スムーズにサンルーフが開閉できるかも確認する。
オーナーの意見を聞いてみる
マーク・フランシス氏
「1.6か1.9か、というかつての意見を気にする必要はないでしょう。予算の範囲内で、ベストなコンディションの205 GTiを選べば良いのです。現代水準で見ても運転の楽しい、有能なホットハッチを我がモノにできるはずです」
「後期モデルにはパワーステアリングが装備されており、こちらを発見できればベター。アシストなしの場合、低速域ではステアリングホイールが重く、扱いにくく感じるかもしれません。年式によって乗り心地も変わります。これも後期型の方が優れています」
「ボディは小さく軽く、安全性は現代モデルと同水準ではありません。そこはお忘れなく」
知っておくべきこと
小さな205の見た目とは裏腹に、車内空間は驚くほど広い。ガラスエリアが大きく開放的で、大人でもリアシートへ快適に座れる。ひと回り大きいモデルや、現代の同クラスのハッチバックと比べても遜色ないほど。
英国ではいくら払うべき?
6000ポンド(約100万円)~9999ポンド(約165万円)
英国には掘り出し物といえるプジョー205 GTiがまれに出てくる。じっくり状態を調べ、比較して検討したい。コンバーチブルのCTisが売られていることも。
1万ポンド(約166万円)~1万4999ポンド(約248万円)
状態の良い205 GTiが含まれてくる。ある程度レストア済みのものも少なくない。
1万5000ポンド(約249万円)~1万9999ポンド(約331万円)
年式を問わず、すぐに運転を楽しめる良好なコンディションを英国では狙える。整備記録なども一式残っている例が多い。
2万ポンド(約332万円)以上
現在の市場では最高の、コンクール・コンディションの205 GTiを探せる。完全にレストア済みのものも含まれる。
英国で掘り出し物を発見
プジョー205 GTi 1.9(英国仕様) 登録:1989年 走行距離:16万4100km 価格:1万6995ポンド(約326万円)
かなり状態は良さそうだ。2オーナー車で整備記録がすべて残っており、近年にメカニズムのオーバーホールを受けている。売り手によればオリジナル状態だという。しかも、ほぼすべての期間を屋根付きの車庫で維持されてきた。
レッドいボディには艶があり、車検はまだ残っている。直近の車検は、目立った不具合もなく通過したらしい。
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みんなのコメント
ずっと乗ろうと思っていたのに若気の至りで四駆ブームの6年後に二束三文で手放してしまいました
その後106を乗ったりもしましたが、トルク感 軽さ ハンドリング 全て205が良かったです
レストア車買うと当時の新車と同じですね…
懐かしい もう一度、一度でいいのでドライブしたいですね